解体工事中に起こってしまった事故の事例と回避する方法

工事中の事故は残念ながら近年においてもたびたび発生しています。
事故とひとくくりに言っても、その内容は建物の破損から軽度の怪我、人命に関わるものまで様々です。
解体工事中に発生する事故は、解体業者がコスト削減などを理由に安全対策を怠ってしまうことで発生リスクが高まります。リスクを抑えるためには安全対策を徹底して行っている業者さんを選ぶことが大切です。
まずは複数の業者さんの見積もりを比較し、「安すぎる」見積もりを出す業者さんには注意するようにしましょう。
今回の記事では過去に起きてしまった事故の事例とともに、事故の原因や、依頼主は事故を回避するために何ができるか、詳しくご紹介します。
解体工事をお考えの方はぜひ参考にしてください。

この記事の内容を5分でまとめた動画がこちらです

建物や壁の崩壊、近隣住宅の破損

2010年10月、岐阜県で解体途中の壁が崩壊し通行人の高校生が下敷きになって死亡する事件がありました。
解体業者は危険性を認識していたのにも関わらず、ワイヤで固定しながら作業するなど適切な工事を行わなかった事が原因です。

また、建物自体が倒壊した事例もあります。
2015年4月に、東京都中野区で工事中の建物が倒れ、隣接した住宅に寄り掛かる事件がありました。近隣の方々も不安になりますし、もしも支える建物が無く、さらに人がいるところに倒れていたら大事故に発展していた事でしょう。
寄りかかられた家の住民の方々もとても怖い思いをしますし、家も傷んでしまいます。

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このように近隣住宅の破損事故も多く見られます。

優良な業者さんであれば、事前の現地調査で実際の建物やその立地を見て、安全に工事を進めるにはどのような対策が必要か詳しく確認します。

また、工事の際に振動が大きくなると事前に分かっている場合には、工事前・工事後に近隣住宅の状態を撮影します。そうして写真に残しておくことにより、もしも工事後に近隣住人が自宅の外壁等にできた傷を指摘してきた際、その傷が果たして取り壊し工事によるものなのかどうか、責任の所在を明らかにできます。

解体工事の際に出てしまう破片に関しても、近隣に飛散しないようしっかりとした養生シートで囲い、対策をとります。養生シートに穴が空いていたり破れていたりすれば破片の飛散を完全には防げませんし、誰かの足が引っかかって事故に繋がるケースも考えられます。

安全な工事をしてくれる業者さんを見極めるには、

  • 現地調査を入念に行ない、隣家までの距離がどれくらいなのか、重機は安全に使用できるのか等を含め、しっかりと確認をとる業者さんであるか
  • 手入れされた養生シートを使用する業者さんであるか

をポイントに検討してみてください。

重機や車両の横転、衝突

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大きく重量のあるクレーン車やブルドーザーは工事現場では欠かせない重機ですが、
これらがもし倒れてきたら、ひとたまりもないことでしょう。

2015年5月に起こった重機横転事故では、下敷きになった作業員が命を落としました。
作業現場は数々の廃材が重なり地面に廃材の山が転々と出来てしまっています。
そんな足場の悪い所を、かなり重量のある機材を運んでいた重機が通ろうとして足元をすくわれた事と、現場で正確な指揮が取れていなかった事が原因と言われています。

さらに、工事中のトラックが通行人や自転車、一般車両と衝突する事故もあります。

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工事の際一般道に重機やトラックが止めてあり、事故が起こらないように警備員が一般車両や通行人の誘導をしているのを皆さんもよく目にすると思います。

しかし、監視役が持ち場を離れてしまったり、業者によってはコスト削減のため監視役を雇わなかったりしたために事故が起こってしまった例があります。2015年10月に、引退間近の盲導犬とパートナーの男性がダンプカーに轢かれ亡くなりました。

ダンプカーが方向転換のため資材置き場にバックで入ろうとした際、運転手から死角になっていて被害者の姿を確認できなかった事が原因のようです。さらに、運転手が「バックします」とバックを知らせる警報音声のスイッチを切ってしまっていた事も判明しました。

運転手が後方を確認したつもりでも、トラックやダンプカーといった車体の大きい車両は死角が多いため、見える範囲が限られます。

足場が悪く、見通しも悪い工事現場では、的確な指示や計画的な動きがとても大切です。運転手が気をつけているつもりでも大型車の視界には限界があります。依頼主は、現場の監視役や交通誘導員を雇い、安全のために十分な対策をとってくれるかどうか、業者に確認するようにしましょう。

アスベストの飛散、ガス爆発

アスベストとは?

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よく耳にするアスベスト。断熱材や絶縁材などに優れ、コストも安く抑えられるため、昔は非常に重宝されていた鉱物です。その反面発がんなど人体への健康被害をもたらす危険性を伴います。人体に害があるということは有名ですが、具体的にどういうモノなのかわかっていないという人も多いと思います。
実はこのアスベストにはレベル1,2,3がありレベルによって危険性が異なります。

レベル1:発じん性が著しく高い

危険度100%です。レベル1のアスベストは石綿含有吹き付け材です。主に耐火建築物の梁や柱に使われていて、セメントと共に吹きつけられており、形状は固まって綿のようになっていて、昭和30年後半~昭和60年前半の建物に多く使われています。

アスベストの濃度が非常に高く大量の粉末が飛散するので、撤去の際には防じんマスクや保護衣を着用し量に合わせた厳重な対策が必要不可欠です。

レベル2:発じん性が高い

こちらは配管や空調ダクトなどの保温に使われているものです。シート状に巻きつけられているため、レベル1ほど飛び散る事はありませんがアスベストの含有率は高くとても危険であります。処理としては配管ごと取り外す事が出来、飛散も少なく済むのでレベル1とは異なった処理方法になります。しかし密度が低いため一旦崩してしまうとかなり飛散してしまいます。やはりレベル1に準じた対策が必要です。

レベル3:発じん性は比較的低い

レベル1,2とは大きく異なるレベル3は、板状や硬く形成された形のため破損するなどして中身を飛散させない限り発じん性は比較的低いと言えます。それでもアスベストが含まれていることに変わりはないので防じんマスクなどの対策が必要です。

アスベストの処理方法は法律で定められている

こういった、レベルに応じた処置が必要となるアスベストの撤去作業ですが、過去にはコスト削減のために危険レベルの高いアスベストが含まれていることを把握していたのにも関わらず法律で定められた対策をせずに工事を行い近隣に飛散させ、多くの人々がアスベストに暴露する事件が起こってしまいました。

アスベストの有無は工事に取り掛かる前に必ず調査をし、その結果を工事現場に提示する事になっています。また、解体工事の業者は施主に対し調査結果等を書面で説明しなければなりません。
依頼主は、解体業者から受けた説明の段階でアスベストの危険度が高い事が判明したら、どういった対策のもと工事をし、その対策によって飛散が防げるのかを確認し、分からない点があれば徹底的に説明してもらいましょう。

参考 解体等工事を始める前に解体等工事を始める前に 参考 環境省_石綿(アスベスト)問題への取組環境省_石綿(アスベスト)問題への取組

ガス爆発はなぜ起こるのか

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工事中、ガスは様々な原因で爆発を引き起こす可能性があり、非常に危険です。工事前に電話、電気、ガスなどのライフラインは停止の連絡をしますが、その中で引火する恐れをはらんでいるのはガスだけです。

2002年、大阪の中座の解体工事中に爆発事故が起こりました。この事故は図面の記載ミスが発生し作業に手違いが生じ、誤ったバルブを開けてしまい機械室にガスが充満、異変を感じた作業員がバルブを閉めたが、ライターを着火させた事により爆発にいたりました。
記載ミスにより作業を誤った事が一番の原因ですが、担当者が図面のミスに気づいていたにも関わらず報告もせず放置した事と、その後異変に気づいた作業員が他の作業員にガス漏れの可能性を報告するも聞き入れてもらえず、作業を続行してしまった事にも問題があると言えるでしょう。
危険性のある事実を把握している人間が報告をし、それに対して適切な指示を出し、厳重な対策を行っていればこのような事故は防げたのではないでしょうか。

依頼主としてガスによる事故のリスクを減らすためにやるべきなのは、ガスを止めてもらう事です。その際、「建物解体のため」と説明をしないと、ガスの供給停止しかしてもらえないので注意が必要です。必ず解体工事をする旨を伝え、ガスの供給停止とガス設備の撤去をお願いしてください。

事故のリスクを減らすために依頼主ができること

記事内で紹介した解体工事中の事故は全て、人為的なミスによって発生しています。コスト削減を重視して足場や養生といった設備の手を抜いたり、監視役をつけなかったり、また情報の伝達が正確にされていない場合や計画的な動きができていない場合に起こる事故がほとんどです。

業者のミスは施主にはどうしようも出来ない問題です。
依頼主ができることとしては、業者選びを間違えないことです。
複数の業者から見積もりをとり、あまりにも見積もり額の安い業者には注意しましょう。見積書の内訳をよく見て、安全のために必要な項目を省いていないか確認するようにしてください。
詳しいことが分からなければ、条件を伝えた上で、信頼できる一括見積もりサイトに依頼するのがオススメです。

無理な値下げ交渉や十分な余裕のない期間で工事を強要するなど、安全で計画的な工事ができなくなるような要求はしないことが大切です。
事前に入念な打ち合わせをし、安全性の高い設備で工事をしてくれる業者を選びましょう。

解体工事中の事故事例と回避する方法についてのまとめ

解体費用は決して安くないため、なるべくコストを削減したいお気持ちは分かります。ただし、値段だけで選んでしまうとトラブルに巻き込まれるリスクは高まります。
そうならないために、安全を第一に考えて工事を行う、信頼できる業者さんに依頼するようにしましょう。

もしも、業者の選び方が分からない場合は、一括見積もりに判断を委ねるのがオススメです。

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