事務所、店舗、倉庫、教室etc…色々な用途に使用される借しテナント。これらはほとんどの場合、退去時には全てまっさらな元の状態に戻して返却しなければなりません。
このための解体、撤去工事を現状復帰…別名原状回復といいます。
賃貸オフィス、店舗は退却時の処理が住宅とは大きく異なります。物件によっても規定やルールが違ってきたりと、様々な契約の形があるため現状復帰においてのトラブルは近年でも後を絶ちません。
そんな面倒事を起こさずスムーズに返却するための方法と気をつける点を紹介します。
内装解体、スケルトン工事、現状復帰、違いは?
まず、「現状復帰って具体的にどんな工事をするんだろう?」と思い検索をしてみると必ず出てくるこの3つ。内装解体、スケルトン工事、現状復帰。それぞれ何が違うのかわからない、全部同じじゃないの?と思う方も多いですよね。
実はこの3つ、ちょっと違うんです。
内装解体
借主が設置したデスク、カウンターや増設した仕切り、ドア、厨房機器などの入居後に取り付けた物を解体、撤去することです。
特にデザインを重視した事務所であったり、雰囲気を大切にしたオシャレな店舗として使用していた場合は設置物も多いですしクロスや壁、天井も改装してある場合が多いので全て元の状態に戻します。
スケルトン工事
建物構造体の柱や梁、外壁、屋根のみを残し全て解体し床、壁、天井、配線、給排水管などの設備を全て入居時の状態に戻す工事の事です。基本的にひどく傷んだ柱や梁は撤去し、耐震性耐久性を強くしたものと新しく交換することが多いです。建て替え工事よりも期間やコストを抑えられることがメリットとなります。
鉄筋コンクリート造りの場合はコンクリート打設のみにすることがほとんどです。
現状復帰
まず上記の内装解体と同じく借主が設置した造作や設備機器を解体、撤去します。
その後さらに床の張替え、塗装、室内クリーニングなど解体や撤去だけでなく修繕作業まで行う工事のことを意味します。
電気やガス、水道周りの設備、修繕工事も含まれます。
簡単にまとめると、内装解体はその名の通り内装に取り付けた設備を撤去すること
スケルトン工事は建物構造体以外全て撤去しコンクリートの打ちっぱなしにすること、現状復帰は内装解体後、内装や設備の修繕を行う事です。
現状復帰工事はどうやって進めるの?
1 . お問い合わせ
貸主や不動産から業者を指定されていなければ、借主がご自身で業者を探しメールや電話でお問い合わせをします。
この時点でテナントの内装状況からおおよその見積もりを出してもらう事も可能です。
2 . 現場調査
実際に借主と業者で現場を見て状況を確認します。
ビルテナントの場合は管理人含め適切な養生や作業時間の相談をし、現状復帰工事が始まってから問題が起こらないように対策を練ります。
例えば現状復帰を行う物件がビルテナントの2階だとして、上の階が喫茶店、下の階がエステサロンだったとします。この双方のお店に来るお客様は静けさの中で本を読みながら美味しいコーヒーを啜りたい…癒やしの空間で身体をケアして疲れを和らげたい…といった方々が多いと思います。
何の相談もなく工事が始まり騒音や振動がひどいとこの双方のお店に多大な迷惑をかけてしまうことになります。そしてクレームにも繋がり、工事の延期やそれにより明け渡し期間が守れずに貸主との間でも問題が発生する恐れがあります。
これらのトラブルを避けるためにも作業時間の相談は必要不可欠なのです。
3 . 見積もり
現場調査を元に業者が見積書を作成。値段や作業内容を確認します。
複数の業者から見積りを取り、作業内容や値段、業者の対応や雰囲気等を比較をします。
4 . 工事契約
ご自身が一番納得のいった業者に依頼をして工事の契約を行います。
その際に工事代金の支払い期日や工事内容の範囲も明確になるので、よく確認しておきましょう。確認を怠ると後々のトラブルに繋がる事もあるので注意しましょう。
5 . 施工開始
周囲への影響が出ないように養生の設置をします。
現場調査で行った時間帯の相談を元に決められた時間内で現状復帰を進めていきます。近隣への挨拶もしっかりと行いましょう。
しかし、挨拶周りは義務では無いのでしない業者もいます。現場調査の際にこういった作業もしてくれるのか確認しておくといいかもしれません。
ここまでの準備が整ったらようやく施工開始です。内装物の解体、撤去、室内クリーニングや修繕作業を行っていきます。
6 . 施工完了~引き渡し
工事終了後借主が隅々までチェックし、問題が無ければ現状復帰は終了となります。
坪数や内装状況にもよりますが現状復帰の平均的な工事期間は2周間~3週間と言われ、大型のビルになると1ヶ月~2ヶ月にまで及びます。明け渡し期間までに余裕を持って問い合わせをするのが好ましいですね。
現状復帰で気をつけるべきポイント
先程内装解体、スケルトン、現状復帰の違いについて説明しましたが場合によっては「現状復帰」という言葉で「スケルトン」「内装解体」の作業の事を指す場合もあります。
問い合わせや現場調査といった初期の段階で借主から求められている工事内容を業者と確認しておくと安心です。
また、テナント契約は住宅とは異なりほとんどが契約期間終了までに現状復帰を終わらせて返却しなければならないので注意が必要です。よくあるトラブルとして、契約書には特に記載は無いのに工事中の賃料まで請求されてしまうという事例があります。
基本的に契約書に何の記載も無い場合は、契約期間内に現状復帰を行う際の工事期間の賃料を払う必要はありません。
しかし、後々請求されて揉めるケースも少なくは無いので、契約の段階で何も記載がなければ「現状復帰期間の賃料を請求される事はありますか?」と確認しておきましょう。
更に不安であれば書面でもらい保管しておくと更に安心です。
そしてもっとも注意すべき点は退去時にどの程度の汚損や破損の責任を借主が取らなければいけないのかという点です。
例えば入居後、オフィスとしてテナントを利用する際、クロスやタイルが元から綺麗だったのでそのまま契約終了まで使っていたとします。その場合ほとんど汚れておらず貸主が「ほとんど汚れてないからそのままで大丈夫だよ」と許容してくれればクロス、タイルの工事の必要は無くなります。
一般的な定義としては国土交通省が定めた「通常の生活において行われる範囲での破損は通常の損耗と考えられる」となります。
要するに日焼けや電化製品の背面の電気やけといった自然現象による劣化は許容範囲というわけですが、状況や契約内容によっても変わってくるので一概には言えません。
結局は借主や不動産屋の判断になってきますので普段からの借主とのコミュニケーションが大切になってきます。
現状復帰工事についてのまとめ
一番大切なのは賃貸契約時の契約書な内容をよく確認しておくことですね。契約終了間近の忙しい時期の揉めるのは大変労力を使うので不明な事があったら早めに貸主に相談してみましょう。
明け渡しに関してはどういった工事が必要なのか、いつまでに現状復帰を終えて明け渡さなければいけないのか、そして施工期間の賃料はかかるのか、自身で把握し余裕をもった工事を行いましょう。
なんといっても結局は人と人との契約なので借主や不動産屋とのコミニュケーションを普段から大切にし、いざというときスムーズに事が運ぶようにしておくのが一番大切な事といえるのではないでしょうか。
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