老朽化した建物は危険!後回しにしがちな理由と解決策

解体や建て替えするタイミングを逃しどんどん老朽化してしまった建物。そこに人が住み続けていても空き家になっていても、老朽化した建物には危険が潜んでいます。

すぐに解体したいけれど、様々な問題や面倒事によって踏み出せないのも現実です。

老朽化した建物にはどのような危険性があるのか、そして解体・建て替えへの障害と解決策を、今回は詳しく見ていきましょう。

老朽化した建物が孕んでいる危険性

老朽化した建物を解体せず、そのまま放置しておくとどのような危険があるのでしょう。
その建物を今も使用している・していないに関わらず、老朽化した建物はそのままにしておくと大変なことになってしまうかもしれません。

老朽化した空き家の危険性

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老朽化した建物に現在人が住んでいなかった場合、適切な管理がされておらず、更に人目につきにくいために様々なトラブルを引き起こしかねません。

家屋内に不審者が出入りするようになってしまう

管理のされていない空き家は、施錠されていたとしても容易に侵入することができてしまいます。侵入が容易い空き家は、未成年の溜まり場になってしまったり、浮浪者が棲みつくようになってしまったりと、不法侵入の多い建物になってしまいます。
ほかにも、空き家に侵入され、所有者とは無関係に家屋内で犯罪が起きてしまったという事例も実際にあります。放置された空き家は、犯罪の温床になってしまうのです。

放火犯に狙われやすく、近隣に燃え広がりやすい

空き家は人目につきにくく侵入も容易いため、放火犯に狙われることが非常に多く、放火事件の被害は空き家に多いです。
更に、老朽化した家屋の木材は燃えやすく、一件の空き家の火事から近隣まで燃え広がり、大規模な火災に発展してしまうことも少なくありません。

地域一帯の景観を悪くしてしまう

管理されていない空き家は草木が伸びっぱなしになっていたり、老朽化している影響で家屋自体が腐ったりして、その外観から地域の景観を損なうことになります。
せっかく自治体で地域の美化運動を図っていたとしても、老朽化した空き家の外観が不衛生であればそれだけで台無しになってしまいます。

災害により家屋が倒壊・破損する可能性がある

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老朽化した空き家は適切な管理がなされていない影響で家屋の基礎が劣化していたり、そもそもの建設当初の強度が現在の基準を満たしておらず、災害による倒壊の危険性が非常に高くなってしまいます。
例えば、強風により家屋の一部が飛んでしまったり、豪雪により家屋自体が潰れてしまったり、地震の影響で倒壊してしまったり…。
空き家の倒壊や破損は、その空き家だけではなく近隣の家屋にまで影響を及ぼす可能性があり、最悪の場合けが人や死人を出してしまうおそれすらあります。

老朽化した建物に人が住んでいた場合の危険性

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老朽化した建物は空き家だけでなく、人が住み続けていた場合にも危険性はあります。
老朽化した家屋を建て替えることなく住み続けてしまうと、住人の日常生活に支障を来すばかりでなく、住人や近隣に住む人々の命に危険を及ぼしてしまう可能性もあります。

木材の腐敗により家屋が破損し、住民に被害が

建物の老朽化により木材が腐敗してしまい、例えば床が抜けてしまい下階へ転落してしまったり、天井や壁が崩れてきてしまったり…。その家屋の中で人が生活していれば多大な影響を受けてしまいますし、運が悪ければ怪我をしてしまうということもあります。
また災害による倒壊や破損が起こった場合も、家屋内部に人がいた場合被害は更に大きくなってしまうことが予測されます。

木材が湿り害虫が発生してしまう

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シロアリ等の害虫は、腐敗した木材などを餌にする為老朽化した家屋に多く発生します。
シロアリが基礎を食べ進めてしまうと建築材はますます劣化し、最終的に倒壊・破損の可能性にもつながってしまいます。

配管の老朽化による水漏れ発生のおそれ

老朽化してしまうのは、建物の木材だけではありません。壁や天井の中の配管が劣化してしまい、水漏れを起こす可能性もあります。
配管の老朽化による水漏れは、家屋の内部にまでも影響を及ぼしてしまいます。例えば、壁や天井を伝って部屋を濡らしてしまったり、家具までも腐らせてしまったり…。
カビの発生にも繋がるため、衛生的にもよくありません。

なぜ解体工事を後回しにしてしまうのか?

既に老朽化してしまい様々な危険性を持つ建物を、なぜ所有者は解体しないのでしょう。
実は、その理由の中には簡単に解決できることもあるかもしれません。

老朽化した空き家を解体する際の問題

老朽化した空き家を本当はすぐにでも解体してしまいたいけれど、様々な問題や心配事があり実行できない方は多いでしょう。近年空き家が増加している原因もそこにあります。

解体工事の費用がかかる

空き家を解体する際には当然費用がかかり、空き家の所有者が負担することになります。
家屋の状況や構造、場所など様々な条件によって費用は変わってきますが、解体工事にかかる費用の額は決して小さいものではありません。解体費用を捻出することができないという理由で解体工事へ踏み出せず放置してしまっているという方も少なくないでしょう。

解体費用には補助金が出ることもある

地域によって解体の費用に対し補助金を出してくれる自治体が存在することがあります。
この補助金にはいくつかの種類があるのですが、倒壊のおそれがある家屋に対しては、解体工事の費用の一部が助成される場合があるのです。ただし、補助金・助成金はどのような場合においても適応されるわけではなく、各自治体に制定されているいくつかの条件によって審査され、決定します。まずは家屋のある土地の自治体に相談し、補助金の有無や、所有している家屋が助成の対象になるかどうかを確認し、活用してみましょう。

業者の手配に時間と労力がかかる

解体を依頼する業者選びに失敗し、高額な金額を支払うことになってしまったり、何かトラブルに巻き込まれたくはないと考えているのは皆さん同じですが、慎重に考えてしまうために業者選びに時間と労力がかかってしまい、面倒に感じる方も多いでしょう。
特に遠方に住んでいる方などは時間を作るのが難しいということもあるかもしれません。

空家を放置し続けると行政代執行されてしまうかも

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例えば遠方の空家だったとしても、いちいち行くのが面倒だからと放置し続けてしまうと、その土地の自治体により強制的に解体工事が行われてしまうこともあります。

この場合、家屋の解体工事自体は自治体によって手配・施工されますが、かかった費用のすべては土地の所有者に請求され、強制的に徴収されてしまいます。
自治体が施工した解体費用が安価であれば良いのですが、実際にはそうとも限りません。ご自身で依頼した際には業者と都合に合わせてじっくりと相談することができますが、自治体には所有者の都合はわからないため、高額な費用を請求される可能性は高いです。
「もしも自分で依頼していたら、もっと費用を抑えて解体することができたかもしれない…」そうならないためには、督促された際・もしくはその前の段階で、ご自身で手配したほうが良いでしょう。

どうしても現地を訪れるのが難しいような場合には、立ち会いの代行をしてもらえる身内の方を探したり、細かく電話で相談・話し合いのできる業者に依頼すると良いでしょう。

固定資産税・都市計画税が上がってしまう

固定資産税とは、土地や家屋の所有者が市町村に納める税金です。家屋を解体して更地にすると、この税金が家屋の建っていたときよりも高くなってしまうことがあります。
家屋が建っている土地は固定資産税が軽減されるという特例があり、解体することで受けられなくなってしまうため、更地にすることで固定資産税が上がってしまうのです。

地域によっては固定資産税のほかに都市計画税の納税が求められる場所もあり、都市計画税もまた、固定資産税のように更地にすることで高くなってしまうことがあります。

空家特措法で放置していても税金が上がってしまう

空家等対策特別措置法により特定空家に指定された家屋は、固定資産税の住宅用地の特例を受けられなくなることがあります。つまり、家屋が建っているからといって固定資産税が安くなることはなくなってしまう、ということです。

建物が老朽化し倒壊の危険性が高かったり、衛生上の問題があると判断された家屋は特定空家に指定され、固定資産税はその時点で高くなってしまい、更地にすることによる税制上のデメリットがなくなってしまいます。
宅地・更地でかかってくる固定資産税が変わらなくなってしまったとき、新たにその土地を活用することで節税対策になります。例えば、その土地に新たに新築の家屋を建て再び宅地にしたり、農地に転用したりすると、土地の地目が変わり税額が安くなります。

老朽化した建物が貸家だった時の問題

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解体したい家屋に所有者自身が住んでいた場合には、自分たちの都合で解体工事を行ってしまえばよいのですが、それが貸家だった場合にはそういうわけにはいきません。

立退きに応じてもらえない

所有者側が解体工事を行いたくても、そこに住んでいる借主側は家屋に何の不満もなく、今後も住み続けたいと考えているかもしれません。
長く住んでいきたいと思っている慣れた家を、解体工事を行うので出て行ってほしいと言われても、簡単に了承できない借主もいるでしょう。
借主が立退きに応じない場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。

正当事由の証明

立ち退きを申し入れる際は正当な理由を提示し、納得してもらわなければなりません。
借地借家法第28条には、建物の現況によっては立ち退きが正当な事由として認められるということが記されています。要するに、建物の老朽がこれに該当するレベルだということを借主に理解してもらい、立退きをお願いする必要があるのです。
多少の修理を施せば生活できる状況であれば正当事由として認められにくいですが、建物の倒壊の危険性がある場合や衛生状況などの問題がある場合には、正当事由が認められるケースもあります。

しかし、立ち退きに応じてくれない借主が、この建物に住んでいることで人命に危険を及ぼすことはないという証明をしてきた場合、借家法により立ち退きを押し通すことはできませんので、双方で納得のできる話し合いをする必要があります。

6ヶ月以上前に申し入れ

立ち退きの申し入れは原則として6ヶ月以上前に借主に申し入れなければなりません。
借地借家法第27条には、正当な事由がある場合には6ヶ月以上前に契約解除の旨を伝えれば、その6ヶ月後に効力が発揮されるということが記されています。
つまり、例えば1月に「7月に解体をするから、それまでに必ず立ち退いてほしい」という申し入れをすれば、住民は立退きに応じる必要があるのです。

立退き料の発生

立退き料の支払いは、正当事由が不十分として認められなかった場合や、借主が立ち退きに応じなかった場合に提示するものとして存在します。前述のように、借主が家屋について人命への危険性を否定できた場合などに必要となることがあります。
一般的には現在の貸家と同程度で、家屋を借りる際に必要な費用(敷金礼金、仲介手数料等)や引っ越しの費用などが含まれますが、借主との話し合いによって変動すると思われます。この話し合いのもつれにより、裁判にまで発展したケースも少なくありません。

立退き料の支払いは強制ではない

立退き料は一般的に話し合いのもつれからやむなく発生することが多いですが、法律上立退き料を支払うことは強制されていることではありません。
つまり借主との話し合いが円滑に進めば、立退き料を支払う必要はないということです。

話し合いだけでは話がまとまらず、裁判にまで発展してしまうと、金銭的な問題だけでなくかなりな時間も要することになりますので、結果として解体・建て替えの予定がどんどん延びることになってしまいます。
立ち退きの理由についてしっかりと理解をしてもらえた上で、立退き料の額も双方の納得のいく金額で決定できることが、最も望ましいです。

直接の話し合いで解決するためには、普段の生活から住人とコミュニケーションをとっておくのも大切なことですよ。

所有者責任って?

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所有している家屋でなにか事件やトラブルが起こってしまった時、所有者であるあなたが直接的に関わっていなかったとしても、最終的にはすべての責任を所有者が負わなければならないという義務があり、これは所有者責任と呼ばれています。

第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

引用:Wikibooks

所有者責任は無過失責任であり、過失の有無に関わらず損害賠償の責任を負わなければいけなくなってしまいます。
例えば、老朽化した建物の外壁がはがれ、近隣の方にけがをさせてしまった場合。
家屋内にネズミが棲みつき、配管をかじったために火事が起きてしまった場合。
所有者が直接的に危害を加えたわけではなかったとしても、同等の責任を負わなくてはいけなくなるかもしれないのです。

まとめ

老朽化した建物は人が住み続けていても、また空き家であっても様々な危険性を孕んでおり、問題が起きた場合には所有者が最終的な責任をすべて負うことになってしまいます。
重大なトラブルに発展してしまう前に、解体工事へ踏み出すことがとても大切です!

解体や建て替えで発生し得るトラブルやデメリットを懸念している場合には、所有している建物が法律上壊したほうが良いものなのか否かを調べた上で解体するとよいでしょう。
区役所などで相談を受けてもらうこともできますので、一度ご自身の所有している建物の状況を伝え、解体工事の必要性をじっくりと考えてみるのもいいかもしれません。

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