両親が施設に移り住んだり、亡くなった際に実家を相続される方は多いのではないでしょうか。
しかし相続をしても、今住んでいる家から離れられず多くが「空き家」になっているのが現状です。
空き家は、一見誰も住んでいないのだから費用がかからないように思えますが、実は家を所有し維持するだけでも高額な費用がかかります。
一体何にそれだけの費用がかかるのか。空き家維持費用の内容を見ていきましょう。
空き家の維持費用、何にいくらかかる?
空き家の維持にかかる費用は、税金とその他の費用に分けられます。
まずは税金から見ていきましょう。
固定資産税
不動産を所有していると支払わなければならないのが「固定資産税」です。
固定資産税は市区町村から課せられる税金で、定められた不動産の評価額に一定の税率をかけて計算します。
税率は自治体により異なる場合がありますが、一般的には「1.4%」です。
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)現在の土地、家屋及び償却資産(これらを「固定資産」といいます。)の所有者に対し、その固定資産の価格をもとに算定される税額をその固定資産の所在する市町村が課税する税金です。
1納税義務者
毎年1月1日(賦課期日)現在の土地、家屋又は償却資産の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている方です。
2税率
1.4/100
引用元:東京都主税局 | 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
例えば、固定資産税評価額が1,000万円の建物を所有していた場合、計算式は以下の通りです。
年に14万円の固定資産税がかかっていますね。
固定資産税は維持をするだけで発生します。
何もしなくても高額の費用がかかるのは痛いですね。
ちなみに建物の評価額とは、総務大臣の定めた評価基準よって設備や資材、築年数などを評価した額です。
不動産の購入金額や建築費用の事ではありません。
例えば上記の評価額が1000万円の建物の場合、14万円の1/6で2.3万円まで下がります。
都市計画税
都市計画税とは、道路や公園の建設や地下水道の整備などの「都市計画事業」に充てる税金です。
都市計画税が課せられるのは「市街化区域」内に土地や建物を所有している方です。
市街化区域の一覧は市街化区域の一覧は国土交通省 2都市計画区域、市街化区域、地域地区の決定状況 (二)都市別一覧にて確認ができます。
都市計画税の税率は一般的には0.3%です。
評価額が1000万円の建物であれば以下のとおりです。
計算方法は固定資産税と同じですね。
都市計画税も維持をするだけで発生する費用です。
評価額が1000万の建物の場合、3万の1/3で1万円になります。
その他の費用
支払わなければならない税金の他にも、空き家を維持する為にかかる費用はたくさんあります。
火災保険
人が住んでいないからと言って火事にならないとは限りません。
むしろ管理が行き届いていない為に、放火犯に狙われやすいとも言えます。
火事が起きた場合、死者が出る事は考えにくいですが、家はもう使い物になりません。
燃え残った物の処分費や解体費用がかかる上、もしご近所に被害が出てしまった場合は損害賠償が発生します。
年間で最低でも数万円ほどかかりますが、常に自分の目が届く訳ではないので、火災保険に入っておいた方が安心です。
水道光熱費
「誰も住んでいないのに光熱費?」と思うかもしれませんが、電気や水道の契約をそのままにしておく方も多いです。
なぜなら、訪問の際に困るからです。
空き家の管理する為には定期的に家のメンテナンスをする必要があるのですが、水道も電気も使えない状態ではまともに掃除も出来ません。
また、水道管は定期的に水を通さないと錆びてしまうので、やはり水道光熱費も支払うべき費用です。
光熱費を支払い続ける場合は一切使わなくても基本料金が発生するので、月2000円~4000円程度、年間で数万円の費用がかかります。
修繕費用
残された家の状態によっても費用がかかります。
設備や屋根瓦、壁が老朽化していた場合は修繕費が発生します。
屋根が強風で飛ばされたり、設備が壊れてガス漏れや漏電を起こす恐れがある為ですね。
場合によっては100万円以上の費用がかかる事もあるので、高額の費用を払って修繕し、維持をする必要があるのか良く考えなくてはなりません。
2空き家維持以外の選択肢
さて、大まかな費用の内容についてお話ししました。
無人の家を維持するだけでも、様々な費用が発生すると分かったと思います。
では、この先はどうしましょう?
維持費用を払って家を守り続けるか。
空き家を活用して選択肢を広げるか。
費用がかかっても家を残したいという方は3それでも空き家を維持したい!で、維持をする際の注意点などをお話します。
空き家を少しでも活用したいと考えた方には、今から他の空き家の活用方法をお伝えします。
建物を売却
オーソドックスな方法は建物の売却です。
具体的な金額は近くの不動産仲介会社に聞いてみるか、インターネットの物件検索サイトで調べるのが良いでしょう。
しかし、建築から20年以上経っている古い建物の場合、建物の価値は低く買い手もなかなか付かないのが現状です。
土地を売却
不動産の価値を上げて買い手を付けたいのであれば、土地の売却がおすすめです。
しかし、更地にするためには「解体工事」が必要です。
解体工事にはかなりの費用がかかりますが、不動産の選択肢を増やせるというメリットがあるので、家の状態を考えて検討してください。
更地を活用
更地にすると売却以外の活用も出来ます。
投資費用を比較的抑えて始められるのが駐車場。道路交通法が改正されてから、違法駐車対策が強化されたので需要は年々高まっています。
他には自動販売機を設置したり、トランクルームを設置したりと活用法の選択肢は広いです。

賃貸として運用
「売る」以外にも「貸す」方法があります。
賃貸として貸した時の収益は、近くの不動産仲介会社で聞けば目安の金額は分かります。
しかし、手続きに手間がかかったり、家の状態によっては借り手が付きにくいなど難しい部分もあります。

空き家バンクを活用
建物をの売却、賃貸を希望する場合は空き家バンクも利用出来ます。
空き家バンクとは、空き家の売却、賃貸を希望する空き家の所有者と、空き家の利用希望者を繋げるサービスです。
空き家バンクは全国で750以上の自治団体が進めており、住民交流の拡大や地域の活性化を目的としています。
ただし、空き家バンクに登録すると、通常の売却価格よりは安くなります。
その代わり買い手が付きやすいので、売却額よりも次の人に使ってほしい方にはおすすめです。

3それでも空き家を維持したい!
人によって家への思い入れは様々です。
多少維持費用が掛かっても、家を壊したくない、手放したくないと思う方はいると思います。
空き家を維持したい方に向けて、費用以外に気をつけるポイントと、空き家を維持するメリットをご紹介します。
空き家を維持する時の注意点
空き家を維持するにあたり、重要なのは「メンテナンス」です。
空き家は数ヶ月放っておくと、設備の劣化や害虫被害などに蝕まれ、衛生環境が劇的に悪化します。
そのため、定期的に空き家に訪れ、掃除や設備の確認をしなければなりません。
定期的に換気や湿度室温調整が行われない為、夏場はカビやシロアリが発生しやすいので、さらに注意しましょう。
メンテナンスの際、誰が訪問するかを関係者内でちゃんと話し合う事も重要です。
一番近い人にお願いするのも良いですが、後で不満が出ないように分担するのも長い間メンテナンスを続ける秘訣です。
もしメンテナンスを自分で行うのが難しければ「空き家管理サービス」にお願いする方法もあります。
空き家管理サービスとは自分の代わりに業者が空き家を定期的にチェックしてくれるサービスです。
定期的に人が巡回してくれるだけでも、放火や不法侵入のリスクは下げられます。
代表的な空き家管理サービスのひとつにNPO法人が運営しているサービスがあります。
簡単な管理は100円から請け負っており、オプションも充実しているので、家の状態に応じて注文が出来ます。
どうしても空き家に訪問出来ない場合は利用するのも良いでしょう。
維持をした方がいい場合
空き家の維持には維費用がかかる上にやることも多いため、空き家の維持は否定的に見られますが、維持をしておいた方がいい場合もあります。
心情的な面ではありますが、やはり「所有権を失いたくない」と思うのであれば無理に売る必要はありません。
思い出の詰まった実家を誰かに売ったり取り壊したりするのは忍びない、耐えられないと思う方も当然います。
他にも「後になって利用する可能性がある」「将来的に需要が拡大する可能性がある」場合は安易に売ってしまうのは早計です。
家にはそれぞれの思い入れがあるので、空き家の処遇については親族でよく話し合う事が重要です。
まとめ
空き家は維持をするにしろ、解体をするにしろ多くの費用が発生しますが、それぞれにメリットが存在します。
そして今は空き家でも、自分にとって大切な人が長い間守り続けていた事は確かで、それぞれに思い入れがあると思います。
だからこそ親族や関係者の間でしっかりと話し合いましょう。
この記事が、あなたにとって最善の選択が出来る手助けになれれば幸いです。