誰も住まなくなった実家を取り壊そうと考えた時、初めてのことでご不安なことばかりかと思います。実家は思い入れの強い場所であるため決断するのも辛く、且つ金銭的な負担もかかるので、実家の取り壊しは多くの方が悩まれる問題です。
取り壊しを決断したとき、せめてトラブルや後から知って困るようなことなく工事を終えたいものです。
今回は実家の取り壊しを決めたとき、安心して工事を終わらせるために事前に知っておきたい費用・補助金・トラブルに関してご紹介します。
解体工事に関連する費用
ご実家の取り壊しには一定の費用がかかるため、どのような費用がかかるか予め知っておきたいところです。解体費用は建物の構造・立地・地中埋設物・アスベストの有無・処分品等によって大きく異なるため、一律で幾らとは言えません。
そのため、解体費用がどのように決まるのか・また解体工事以外にどのような費用を想定しておく必要があるか見ていきましょう。
解体工事の費用
取り壊し工事は条件によって金額が異なりますが、東京の木造家屋の平均坪単価は30,000円~35,000円です。但し、坪単価で概算を計算しても、実際に見積もりを取ると予想を上回るケースもあります。
解体業者の中には「格安!解体工事の坪単価○万円」と謳っておいて、後から不正に高額な工事費用を請求する悪徳業者も少なからず存在します。被害に遭わないためにも、なぜ一律に費用を計算できないのか・解体工事にどのような項目があるのかを知っておきましょう。
大きさだけで費用が計算できない理由
解体工事は条件によって費用が変わるため、実際に現場を見て見積もりを取らないと幾らという計算ができません。
上記のような住宅の条件によって工事費用は変わります。例えば、ご実家と隣家の隙間がとても狭く重機を使えない場合、一部を手壊しで行うため通常より工事期間が長く人手も必要になるため、工事費用が上がってしまいます。
そのため、業者がご実家を実際に見たり詳しい状況を聞かないと、工事費用の判断が付かないのです。
不当な請求を後からされないよう、一律で○万円という業者ではなく、詳しくご実家の状況を把握した上でしっかりとした見積もりを出してくれる業者を選びましょう。
解体費用の項目
解体工事の費用は、主に次の項目の合計で計算します。
・付帯工事(ブロック塀・倉庫・樹木など撤去費用)
・処分費用(廃材と室内外の不用品の処分・運搬費用)
・諸経費(道路使用許可・リサイクル法の届出など書類に関連する費用)
・追加費用(地中埋設物などが発見された場合の費用)
必ずこの項目で計算すると決まった形式はないため、主に上記の項目を業者ごとの書式で記入して見積もりを取ります。一番注意したいのが、追加費用の項目です。解体工事は建物を壊した後に基礎の撤去を行いますが、そのとき地中に井戸・過去の基礎・浄化槽が発見されるケースがあります。
発見された物や大きさによっては、数十万の撤去費用がかかることもあります。建物を壊してからでないと在るかどうかの判断がつかないため、追加費用が掛かってしまうのです。但し、追加費用を悪用する業者も存在するため、地中埋設物があった場合の処置について予め業者に確認しておきましょう。
固定資産税
解体費用以外に大きな出費となるのが固定資産税です。実家が建っている状態でも固定資産税は課かっていますが、撤去して更地にすると固定資産税の額が変わります。
固定資産税とは、土地や建物を所有している人が納める義務のある税金です。更地にすると建物にかかる固定資産税は下がり、土地にかかる固定資産税は最大6倍に上がります。
状況によって金額は異なるので、固定資産税の簡単な仕組みと、損をしないために注意したい時期について見ていきましょう。
知っておきたい固定資産税の仕組み
土地にかかる固定資産税は、土地の固定資産評価額に1,4%をかけて求められます。しかし、固定資産税は土地の種類(畑・学校・宅地など)によって評価額が異なります。住宅用の建物が建っている土地では、課税標準の特例によって土地の評価額の1/6もしくは1/3が軽減されています。
住宅を撤去して更地になった場合、特例の減税措置から外れるため、固定資産税が上がる可能性があるのです。「更地にすると固定資産税が6倍になる」と聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、全て6倍になるのではなく、条件によって評価額が変わる仕組みとお考え下さい。
解体の時期に注意
固定資産税は1月1日時点の土地の状況によって納税額が決まります。そのため、1月1日の賦課期日に建物が存在するかによって、年度の総税額が異なります。特に売却や建て替えをご検討の場合は、解体工事の時期に注意が必要です。
工事後すぐに新しい住宅を建てたとしても、1月1日時点で建物が滅失していると判断された場合、1年間は更地の条件での上がった固定資産税を払うことになります。全ての土地で更地にすると固定資産税が上がるわけではありませんが、条件によっては撤去したことで固定資産税が上がるため、まずはご実家の現状を把握しましょう。
実家の解決方法を決断する
こんなに払うのか…と考えると、解体を止めたくなるかもしれません。解体以外にも一定期間維持する・賃貸といった方法も一つの手段です。
ただ、賃貸にしても維持するにしても費用と手間が掛かるのは変わりません。一番リスクがあるのは、空き家となった実家を長期間放置してしまうことです。
実家が遠方にある・忙しい・思い出の場所をそのままにしておきたい…様々なご事情はありますが、人が住まなくなった家は急速に老朽化が進み、犯罪の被害や倒壊のリスクを抱えています。
何かが起こってしまう前に、取り壊す・売却する・賃貸するといった、実家をどうするかの早期の判断をすることが重要です。
解体工事の補助金
空き家の増加や空き家が及ぼす被害を防止すること等を背景に、地域によっては空き家の取り壊しに補助・助成金を出している場所もあります。国から個人へ補助が出る訳ではないため、自治体や建物の条件によって、補助金の有無や対象になるかも異なります。
もし補助金があり建物や工事内容が対象であった場合、解体費用の負担を減らすことが出来ます。取り壊し工事をした後では手続きが難しいため、まずはご実家に該当する自治体に補助金があるか・対象に当てはまるかを調べてみましょう。
補助金・助成金の調べ方
ご実家を管轄している地域に助成金・補助金があるかどうかは、インターネットや役所で調べることが出来ます。一番確実な調べ方は、管轄の自治体に直接問い合わせてみることです。
直接役所に出向くか総合受付などの番号に、「空き家の撤去に助成制度があるかお聞きしたいのですが」等と問い合わせてみましょう。
役所が開いている時間内に忙しくて問い合わせ出来ない場合は、インターネットで調べる手段もあります。
例えば、「愛知県 一宮市 解体 補助金」で検索すると、次の検索結果が出ました。
一番上に役所のホームページがあったのでクリックすると、解体工事の助成金についての内容が書かれています。
ただし、一宮市のように補助制度があり、ホームページが分かりやすい自治体ばかりではありません。事情があり自治体によってはホームページが整っていない場合もあるため、調べて出てこない場合は直接問い合わせをしてみましょう。
補助制度の内容
解体工事に関しては、上限内で解体費用の一部が補助されるのが主な補助形式です。地域によって補助の内容は大きく異なり、解体費用以外にも補助が出るケースがあります。解体費用以外にどのような補助があるのか、一部を見ていきましょう。
耐震診断の補助
大きな出費となる耐震診断に補助がある、又は市が負担した無料耐震診断が出来ることもあります。解体の補助対象かどうかの判断で耐震診断があった場合、すぐに業者に依頼するのではなく、まずは耐震診断の補助があるかを調べてみましょう。
固定資産税の減税措置
建物の要件によっても減税や控除を受けられるかが変わるので、ホームページ等に載されている要件を確認の上、申請と審査が必要になります。
アスベスト除去の補助
そのためアスベストには、専門の診断と除去が義務づけられています。アスベストの調査には数万以上、アスベストの除去にも数万~数十万、状態によっては100万単位の費用が必要になります。
自治体や対象によっては、診断や除去費用を上限を設けて補助が出るケースがあります。アスベストは発見されるとレベルや範囲によっては高額な費用がかかり、かつ適切に除去しないと人体への危険性があるため、補助の有無にかかわらず信頼できる業者に安全な除去を依頼することが求められます。
他にも解体ではなく、建物の改修工事に補助が出ることもあります。補助内容の一例をご紹介しましたが、管轄の自治体によって異なるので役所まで事前にご確認をお願いします。
補助金制度は地域によって有無や内容が異なり、また予算に限りがあるため一定数を超えた場合、補助が受けられなくなります。調べた時に補助があったとしても、時間が経つと受けられない可能性もあるため、出来る限り早めに相談をすることをお勧めします。
トラブル回避の方法
解体工事は適切な作業をしても、一定以上の騒音・振動・粉塵が発生してしまうため、近隣の方へストレスを与えてしまう可能性があります。そのため残念ながら周辺住民の方とのトラブルが起こり、最悪の場合は裁判に発展する・工事が中断になるケースもあります。
もちろん細心の注意を払ってもトラブルが起こってしまうこともあります。ただ、防げたはずのトラブルを起こさないよう解体工事におけるトラブルの内容と、安心して工事を依頼するポイントを知っておきましょう。
ご近所トラブル
解体工事で一番起こりやすいのが、近隣住民とのトラブルです。
・事前に工事の説明がなかった
・振動や粉塵で隣の家が壊れてしまった
・作業員のマナーが悪いことからクレームがきた
様々なトラブルが起こり和解が出来なかった場合、裁判に発展して大きな出費がかかってしまう最悪のケースも実際に起こっています。トラブルを避けるためには、解体工事前の関係や挨拶・何かあった場合の対応が重要です。
トラブルの防ぎ方
解体工事に関わらず、ご近所との関係性によって何かあった時の対応は変わるものです。どうしても一定の騒音や振動は防げず迷惑をかけてしまうので、ある程度の理解を得るためには普段からのご近所との良好な関係性が求められます。
しかし、現在は近隣の方と疎遠なケースも多いのが実情です。その為、解体工事を行う前に丁寧な挨拶をすることが重要となります。近隣挨拶は施主と業者が一緒に回り、工事の概要をお伝えして予め理解を得られるようにしましょう。
挨拶状や手土産があった方が、相手により丁寧な印象を与えることができます。穏便にご実家の撤去を終えるためにも、近隣の方々への挨拶回りや何かあった場合の対応をスムーズに進めることが重要です。
信頼出来る解体業者を選ぶ
トラブルを防ぐためには、信頼できる解体業者を選ぶことが大切です。近隣の方へにかかる迷惑を軽減するためには、工事内容と人への配慮が出来る業者を選びましょう。
工事の作業内容で発生してしまう騒音や粉塵・振動は、注意をすることで軽減が出来ます。水撒きやしっかりした養生シートを張るなど、経験があり近隣への配慮が出来る業者とそうでない業者では近所へかかるストレスが大幅に変わります。
また、事前の近隣挨拶だけではなく、工事中の対応や何か聞かれた場合の話し方などによって、ご近所へのイメージに違いが出てしまいます。実際の工事で配慮が出来る業者か否かは、お客様であるご自身への対応を見て判断しましょう。
信頼できる解体業者の選び方については、こちらの記事も参考にして下さい。
実家の解体についてのまとめ
取り壊し工事を考えたとき、予め知っておきたい工事費用・補助金・トラブルの防ぎ方に関してご紹介しました。初めてのことでご不安が大きく、且つ愛着のあるご実家を撤去するので、安心して工事を終えられるよう、事前に知識をつけておきましょう。
大きな費用が掛かるので、損をすることのないよう補助金の制度や固定資産税についても注意が必要とご説明しました。補助金は事前申請が基本ですし、固定資産税についても予め自治体の制度を知り現状の把握を先にする必要があります。
大変な実家の取り壊しをせめて問題なく終えるためにも、事前に知識をつけること、そして信頼出来る工事業者を選びましょう。
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