解体工事の見積もりを取ってみると「思っていたより高い!」「追加費用の項目が多い」と想定外の金額にびっくりされる方が多いです。
さらに、解体工事では追加費用に伴う金銭トラブルが絶えません。
解体工事の見積もりを出す際は、想定外に発生しうる費用も把握して、できるだけ正確な見積もりを出してもらうのが重要です。
この記事では、建物の解体で金銭トラブルを避けるために必要ないくつかのポイントについて紹介します。
もくじ
見積もりの時点であなたがやるべきこと
建物を解体するにはまず、解体業者さんに現地に来てもらって見積もりをお願いする必要があります。
でも、解体工事の見積書は少しだけ複雑です。いきなり見積書を見ても、正しい見積もりかどうかを判断するのは難しいでしょう。なので、見積もりを依頼する前にまず、解体工事の見積もりの見方について触れておきます。
いわゆる「坪単価」が全てではない!
建物の解体についてネットで調べてみると、いろんなサイトで解体工事の坪単価を紹介しています。
しかし、実際のところ解体費用の見積もりで坪単価は全くあてになりません。
なぜなら、解体工事では坪単価に含まれない費用項目がたくさんあり、ほとんどの場合、追加費用が発生してしまうからです。
坪単価の内訳
では、坪単価にはどこまでの費用が含まれているのでしょうか?
実は、坪単価に含まれている費用は建物の解体作業に必要な職人さんの人件費と廃材の処分費だけです。
頻繁に処分費用の単価を上げている産廃処理場もあり、今後更に高くなる見込みが強いです。
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見積書の例では、「木造家屋重機解体処分」の項目が坪単価に当たる費用です。
1坪当たりの坪単価は38,000円です。
ただ、見積書の書き方には決まったルールがありません。そのため、項目の名前や数は解体業者さんによって変わります。
実際に見積書を取ってみると「家屋解体費」や「建物解体費」などさまざまな項目名が使われているのが分かります。
さらに、解体業者さんによっては人件費と廃材の処分費を分けて記載するところもあります。
廃材の処分費を分けて記載された見積書の例
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写真の例は、全く同じ建物で別の解体業者さんが出した見積書です。「木造建物解体3F解体(増築)」の項目が作業費にあたります。坪当たりの単価は12,000円です。
さらに、すぐ下に記載されている3つの項目が廃材の処分費にあたります。各項目は「同上廃材運搬処分」坪当たり12,000円、「同上基礎解体」坪当たり9,000円、「同上ガラ材運搬処分」坪当たり8,000円です。なお、作業費と処分費用の単価を合わせると坪単価は40,000円になります。
解体業者さんの測量で分かる追加費用
建物の解体では坪単価に含まれない付帯工事が発生する場合があります。
なお、付帯工事が必要かどうかは解体業者さんに測量をしてもらえばすぐに分かります。
ちなみに、簡単な測量で分かる付帯工事の項目は以下の2つです。
- 仮設養生
- 手壊し解体
騒音やホコリを抑える仮設養生
建物の周囲を囲む仮設養生
例えば、住宅街であれば仮設養生をして解体工事で出るホコリや騒音を未然に防ぐ必要があります。
何も対策をしていないと不当な金銭を要求されたり、やむちゃな言いがかりをつけられてしまいます。近隣にも建物がある場合、仮設養生は必須です。
周辺の道幅が狭い場合は手壊し解体
また、解体する建物周辺の道幅が狭く、解体工事に必要な重機や廃材を運搬するトラックが入れない場合は手作業で解体工事をしなければなりません。
手壊しで建物を解体する場合、重機で解体するのに比べて工期は長くなり人件費も高くなります。
また、隣家との隙間がほとんど無く、重機で解体工事をすると隣の壁や塀を傷つけてしまいそうな場合も同様に手壊しで対応します。
解体工事の見積もりを出す際は、現地の道幅や状況をしっかり確認してもらい、できるだけ正確な見積もりを出してもらうようにしたいですね。
事前の測量では判断が難しい付帯工事
付帯工事の中には現地で簡単な測量をしただけでは判断ができず、見積書に具体的な金額が記載されないものがあります。
測量の時点で把握が難しい追加費用は後に金銭トラブルに発展しやすいです。
いくつか代表的な付帯工事を紹介します。
地中埋設物
地中に埋まっていたコンクリート片
予測が難しい付帯工事の中で、最も頻繁に発生するのが地中埋設物の撤去です。
以前は、壊した建物の瓦礫をそのまま地面に埋めてしまうミンチ解体が黙認されていました。そのため、建物の土台部分を撤去する時に前の建物の瓦礫(がれき)が見つかる場合があります。
そのため、基礎を全て撤去する時に多少地面を掘り起こす必要があります。
地中埋設物には建物の瓦礫(がれき)の他に以下のようなものがあります。。
- 建物の瓦礫
- 浄化槽
- ゴミ
- 井戸
ベタ基礎
建物の土台部分は「基礎」と呼ばれ、主に「布基礎」か「ベタ基礎」のどちらかになっています。(杭基礎など稀に特殊な場合がある)
ただし、基礎の構造がベタ基礎だった場合は追加の付帯工事が必要です。
ベタ基礎とは一面にコンクリートを敷き詰めて作られた建物の土台です。そのため、硬いコンクリートを砕くには特殊なハツリ工事が必要になり、追加作業が発生します。さらに、ベタ基礎は布基礎に比べて使用される建材が多く、コンクリートの廃材が大量に発生するため処分費も余分に掛かかります。
しかも、基礎の構造は解体工事を進めてみないと分からないケースが多く、予測が難しい付帯工事のひとつになっています。
アスベスト除去工事
解体中の建物から人体に有害な建材が見つかった場合も特殊な付帯工事が必要になります。
中でも、よく見つかるのはアスベストです。
石綿は、極めて細い繊維で、熱、摩擦、酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持っていることから、建材(吹き付け材、保温・断熱材、スレート材など)、摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)、シール断熱材(石綿紡織品、ガスケットなど)といった様々な工業製品に使用されてきました。
しかし、石綿は肺がんや中皮腫を発症する発がん性が問題となり、現在では、原則として製造・使用等が禁止されています。
最近ではアスベストが有害な物質だと判明しましたが、以前は建物の屋根や壁面の裏など、さまざまな場所で建材の一部として使用されていました。
そのため、昔の建物からはよく解体中にアスベストが見つかるケースがあります。
なお、アスベストの撤去作業は専門の資格を持っている業者さんでなければ対応できない場合があり、依頼する解体業者さんによってはそもそも撤去作業ができません。
ただ、見積もりの際に建物の一部を剥がしたり、使用されている建材を見ただけでアスベストの有無が分かる解体業者さんもいます。
可能であれば積極的に見積もりに参加してより正確な見積もりを出してもらって下さい。
家財道具はだれが処分するの?
付帯工事ではないですが、家に残った家財道具や不用品を処分する費用も追加費用の対象です。
家財道具や不用品は残置物といって解体工事で出る廃材と区別されます
そして、残置物は一般廃棄物に、解体工事で発生する廃材は産業廃棄物に分類されます。
もし、一般廃棄物を解体業者さんに処分してもらう場合は、家庭ごみとしてではなく産業廃棄物の処分場に持ち込んで処分するため費用は圧倒的に高額になります。
そのため、残置物の処分は事前にご自身でやっておくのがおすすめです。
不測の事態に備えて抑えるべきポイント
建物の解体は常に危険を伴う工事です。そのため、予期せぬ事態に思わぬ金銭トラブルが発生してしまう恐れがあります。
でも大丈夫です。事前にポイントさえしっかり抑えておけばリスクは十分回避できます。
損害保険を忘れずに!
言うまでもなく、建物の解体では損害賠償保険に加入するのが当然です。
本来、倒れないように作ってある建物を壊すので、解体工事には危険な作業が伴います。また、突然崩れた建物一部が周辺の家屋を傷つけてしまう恐れもあります。
もし、解体工事中に隣家の一部を壊して補修工事が発生すれば想定外の費用が発生してしまいます。
でも、解体工事に関わる保険にあなた自身が加入する必要はありません。
きちんと認可を受けて営業を行っている、優良な解体業者さんであれば必ず損害賠償保険に入っています。
なお、当協会で運営している解体無料見積もりガイドに登録されている解体業者さんは全て解体工事を対象にした保険に加入しています。
見積もりを依頼する際は、解体業者さんが保険に加入しているかどうかも確認できると安心ですね。
マニュフェストは要確認
見積もりの際、解体業者さんに必ず確認してほしいのがマニュフェストの写しを発行してもらえるかどうかです。
産業廃棄物管理票(マニフェスト)とは、廃棄物の処理が適正に実施されたかどうか確認するために作成する書類です。排出事業者には、マニフェストを作成して「委託した産業廃棄物が適正に処理されたか否か」を確認する義務が課せられています。
マニュフェストは解体業者さんが正しく廃材を処分したかどうかを確認するための書類です。廃材を運搬した運搬業者、処分業者など廃材の処分に関わった全ての業者さんが記載されます。
そのため、マニュフェストの提示を拒む解体業者さんには注意して下さい。もしかすると、不法投棄をしているかもしれません。

不法投棄の例
最近ではかなり減っていますが、今でもなお不法投棄は行われています。
参考 不法投棄の疑い 早川町・雨畑川 コンクリート廃棄物か | UTYテレビ山梨UTYテレビ山梨もし、不法投棄が発覚すると重い罰則があり、不法投棄を行った業者さんだけでなく、解体工事を依頼した依頼主にも責任が問われる場合があります。
五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
引用:e-Gov|廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第25条より
依頼する解体業者さんには慎重に選びたいですね。不法投棄だけは絶対にかかわらないように気をつけて下さい。
近隣挨拶はいい加減に済ませてはいけない
建物の解体で最も多いトラブルはホコリや騒音を理由にした苦情です。
しかも、苦情やクレームは最悪の場合、訴訟にまで発展してしまいます。
過去には、建物の解体で発生した粉塵被害を訴えて50万円以上の高額な慰謝料が認められた裁判もあります。

どれほど頑丈な仮設養生を立てても、解体工事で発生するホコリや騒音を完全に防ぐのは不可能です。そのため、トラブルを未然に防ぐための挨拶回りが欠かせません。
もちろん、解体業者さんが事前に挨拶回りをするのは常識です。むしろ挨拶回りをやらずに解体工事に着工する業者さんは大問題です。
しかし、ただ挨拶回りに行けば良い訳ではありません。
挨拶回りでは簡単な粗品を添えて案内状を配るのが一般的です。

見積もりに立ち合う際は、どの程度の範囲まで挨拶回りをしてくれるのかも確認してみましょう。
金額だけで解体業者を選んではいけない理由
建物の解体にかかる費用はできるだけ抑えたい。でも、金額だけで解体業者さんを選ぶのは不安ですね。
そこで、最後に解体業者さんの正しい選び方についても紹介します。
解体工事の質は仕上がりで決まる
「結局は更地になるんだから解体工事の質に関して言えばどこに頼んでも差はないだろう」と考える方もいます。
確かに建物を壊して撤去するだけならそれほど差はないかもしれません。
でも、実際は依頼する解体業者さんによって大きな差が生じる工程があります。
それが、整地です。

整地とは建物を撤去し終わった後に、更地をキレイにならす作業です。
なのでもし、建物のガラが大量に残っていると、追加で撤去作業が発生してしまう恐れがあります。
キレイに整地がほどこされた更地
特に、コンクリートの破片や塊が残っているにも関わらず、粗悪な整地をしてしまうと次の建設工事に着工できません。
なお、建て替えや新築を控えているなら建設工事の業者さんに整地の仕上がりを確認してもらうえると確実です。
新築を建てるにしても、更地を売却するにしてもせっかく建物を解体するなら整地の仕上がりがしっかりしている業者さんがおすすめです。
しかし、ネットで調べただけでは解体業者さんがどのような仕事をしているのかまでは分かりません。
ましてや、金額が高い業者さんなら安心できるとも限らないのです。
解体業者選びは相見積もりが必須!
解体業者さんを選ぶ際に意識して欲しいのは適正価格で見積もりを出しているかどうかです。
そこで、当協会がおすすめしているのは相見積もりです。
建物の解体費用は高額です。坪単価の他にも付帯工事はたくさんありますし、苦情やトラブルに備えるための費用も欠かせません。
なので、できるだけ費用は抑えたいです。
でも、将来的なリスクもしっかり視野にいれて、正しい見積もりが出せていなければ思わぬ金銭トラブルを招いてしまいます。
相見積もりでわかるのは金額だけではない
既にお話したように、解体工事の見積もりは現地で立会いをして行うのが一般的です。
なので、見積もりの際は是非、ここまで紹介してきたチェックポイントを直接ご自身で聞いて確認してみて下さい。
- 付帯工事が必要かどうか?
- 損賠賠償保険の加入には入っているのか?
- マニュフェストは提示してもらえるのか?
- 挨拶回りの範囲はどこまでか?
さらに、お見積りは複数の解体業者さんから出してもらって納得いくまで比較して決めるのがポイントです。
「見積もりを出すだけなんて申し訳ない…」とお考えの方も多いですが、解体業界は相見積もりが当たり前です。
もし、解体業者さんにいちいち問い合わせて現地立会の日程を調整したり、断りの連絡を入れるのが面倒な方は、当協会が運営する解体無料見積もりガイドをご利用下さい。
まとめ
建物の解体で金銭トラブルを回避するために最も重要なのは、必要な費用の項目を正しく理解して、出来るだけ正確な見積もりを取ることです。
依頼する解体業者さんや、近隣の方、解体工事後に関わる人ともトラブルを起こさず円滑に解体工事を進められるよう事前準備を怠らないようにご注意下さい。
なお、解体無料見積もりガイドには全国約14,000社の解体業者さんの中から、厳しい審査を通過した870社の優良な解体業者さんが登録されています。
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