「不動産取得税」の仕組みを教えて!相続でかからず「贈与」でかかる訳

相続で不動産を取得すると、いろいろな税金がかかるのはご存じのとおりです。

そして、不動産相続に関する税金のことを考える中でよくあるケースは「不動産を相続して取得したから、不動産取得税がかかるのでは?」という疑問です。

今回は不動産取得税を焦点に当てて、不動産取得税が課税されるケースや軽減措置などのことを学んでみましょう。

これってお得な制度?存在相続時は不動産取得税がかからない理由

不動産取得税という名称から「不動産を取得したら不動産取得税がかかる」と思い込んで方が大勢います。

これは大きな間違いで、相続に関してある程度は予見できていたとしても、相続人にしてみれば突然起こる出来事です。

突然、不動産を取得したとからといって、いきなり課税されるのはいささか唐突だとは思いませんか?実は相続において不動産は課税対象に含まれておらず、不動産取得税は不動産の購入や贈与を受けた場合などに発生する税金だということです。

不動産取得税が課税されるケースとは?

①売買
②新築
③増改築
④贈与
④交換

以上の5点が挙げられます。しつこいようですが、相続は非課税です。ここで特に抑えておかなければいけないのは「贈与」のケースです。

不動産の持ち主が、存命中に第三者に不動産を譲渡することを『生前贈与』と呼び、生前贈与には不動産所得税が課税されます。

ところが、遺言に「長男の太郎に、〇〇市の土地建物を遺贈する」と財産を特定して遺言書を作成しておけば、遺言を執行した相続とみなされるので不動産取得税は課税されません

これを「特定遺贈」と呼び、特定遺贈は法定相続人が受遺者であれば不動産取得税が課税されません。負債を相続する必要もなくなるので、不動産を明確にすれば不動産のみを遺贈することができます。

なお、法定相続人以外に遺贈する場合は、相続とみなされないので不動産取得税が課税されます。

不動産取得税の軽減措置とは?

不動産取得税の基本税率は、土地・建物ともに以下の算定によって決定します。

「固定資産税評価額×4%」

平成30年3月31日までは特例によって

・土地および住宅は3%
・住宅以外の家屋は4%

に軽減されています。

また、平成30年3月31日までは…

・新築住宅の場合…建物は1,200万円の特別控除、土地は固定資産税評価額が1/2
・中古住宅の場合…建物は築年数に応じて100万円から最大1,200万円の特別控除、土地は固定資産税評価額が1/2

それぞれ軽減措置がとられています。

軽減措置を利用すれば、通常は10万円以上の課税を受けるケースが数万円程度に軽減できる、最大では非課税になるケースもあるので、軽減措置が利用できることを覚えておいたほうがよいでしょう。

不動産取得税は課税されないが、別の税金が課税される


これまでの内容から、「なんだ、相続に関係あれば税金は取られないのか!」と楽観視している方もいらっしゃるでしょう。

しかし、税務署がそんなお得な措置ばかり適用してくれるほど甘くはありません。土地を生前贈与する際には、別のカテゴリーで税金や諸経費が絡んでくるのです。

特に生前贈与をした後から課税されるものなので「こんなはずじゃなかった」と、あとで後悔しても手遅れです。生前贈与をする前に、よく税金や諸経費について理解をしましょう。

生前贈与に伴う名義変更で「登録免許税」と「不動産取得税」がかかる

生前贈与によって、不動産である土地の名義変更を行うことで、「登録免許税」と「不動産所得税」の2つの税金が必ずかかります。

あれ?「不動産所得税」は遺産相続ではかからないのでは…と思った方!ここがポイントなのです。確かに「遺産」としては相続人に税金はかかりません。しかし、生前贈与の箇所で述べたように「贈与」に対しては課税されるのです。この線引きが相続問題でややこしくなる原因なのです。

登録免許税は固定資産税評価額の2%
登録免許税は、生前贈与を行った土地の固定資産税評価額の2%がかかってきます。
例えば、5,000万円の土地を生前贈与した場合には、5,000万円×2%=100万円の登録免許税がかかります。
不動産取得税は固定資産税評価額の1.5%
不動産取得税は、生前贈与を行った土地の固定資産税評価額の1.5%がかかってきます。
例えば、5,000万円の土地を生前贈与した場合には、5,000万円×1.5%=75万円の登録免許税がかかります。

なお、1.5%は宅地を贈与した場合で、かつ平成30年3月31日までの軽減措置となっています。

土地の価格が110万円を超えれば「贈与税」がかかる

生前贈与をした土地の価格が110万円を超えると「贈与税」と呼ばれる税金がかかります。
この価格は、相続税評価額で路線価をベースに計算する必要があります。一般の方が自分で正確に求めるのは困難なため、生前贈与しようとしている土地の価格がいくらになるかは、専門家である「税理士」などに相談しましょう。

贈与税の税率は非常に高く、例えば生前贈与する土地の価格が5,000万円を超えるとその税率は55%となり、半分以上が税金でとられる計算になってしまいます。
ですので、通常は土地を生前贈与する際にはこの贈与税がかからないようにうまく節税対策を行うことが必要となります。

専門家に依頼する場合の手数料

土地の生前贈与に関する一連の手続きを専門家に依頼する場合には、司法書士と税理士に依頼する必要があります。土地の名義変更登記に関する手続きの代行は司法書士に、贈与税の申告手続きは税理士にしか行うことができないためです。

費用は司法書士に払う報酬は、約5万円程度、税理士に払う報酬は贈与する土地の金額にもよりますが、5万円~10万円程度かかります。

不動産取得税が非課税になる5つの非課税枠と軽減措置の考え方

不動産取得税は、下記の項目に該当した場合は非課税となります。

(1)相続による不動産の取得
(2)法人の合併又は一定の分割による不動産の取得
(3)学校法人、宗教法人などが本来の事業に用いる不動産の取得
(4)土地改良事業、土地区画整理事業の施行に伴う換地の取得
(5)公共の用に供する道路などの用地の取得

不動産取得税の軽減措置と控除

不動産取得税には「軽減措置」があります。この軽減措置には、主に3つのポイントがあります。

(1)平成30年3月31日まで税率が軽減される(4%⇒3%)
(2)宅地の課税標準額が固定資産税評価額の1/2
※固定資産税評価額は家を購入する際に、おおよそどの程度の固定資産税になりそうか売り手に確認することで把握できます。
(3)建物・土地ともに控除額が設定されており、固定資産税評価額を下げることができる。

まとめ

不動産取得税は、あまりなじみのない税金なうえ、地方税のため都道府県により取扱いも異なります。

また、不動産取得税はご自身が申告して納税する税金ではなく、納付書が届いてから支払うものです。相続で取得した不動産をはじめとした非課税枠、特例を活用した「納税額ゼロ」に該当する方が多いことから、実際に支払った経験のある方も少ないとはずです。

不動産取得税については、購入する際にぜひ購入する相手に確認してみてください。もし、贈与を受ける場合については、ご自身で計算して資金を準備しておきましょう。