住まいの老朽化が激しい、両親の家を建て替えて二世帯住宅にして一緒に住みたい…。様々な理由から建て替えを考えている方は沢山いると思います。
しかし土地が借地の場合、勝手に建て替え工事を行って良いのかと躊躇してしまう方も多いのではないでしょうか。
借地権とは、建物の所有を目的に他人(地主)の土地を借りることのできる権利のことです。旧法と新法で異なったり、個々で借地条件が違ったりと少し複雑な権利です。
そんな借地上の家屋を建て替える時の手順や注意点をご説明していきます。
この記事の内容を3分でまとめた動画がこちらです
借地でも建て替え工事はできるの?
借地上の家屋であっても、地主の承諾があれば建て替え工事を行う事は可能です。
土地の所有者である地主さんに「今ある家屋をこういった理由で建て替えたい」という旨を伝えて承諾してもらいましょう。
建て替え承諾料を払う
地主から承諾を貰ったら承諾料を払う必要があります。
借地の建て替工事には2つの種類があり、それぞれの掛率は異なります。
契約書に定められた借地条件を変更しない建て替え工事
解約書には木造(非堅固建物)を建てる借地条件になっていて、その条件に合った建物に建て替える
用途や規模がほぼ同じ
例:木造(非堅固建物)→木造(非堅固建物)
誓約書に定められた借地条件を変更する建て替え工事
契約書には木造(非堅固建物)を建てる契約条件になっているが、コンクリート造(堅固建物)に建て替える場合や建物の用途の変更を伴う建て替え。
例:木造(非堅固建物)→コンクリート造(堅固建物)
住居→業務用
自宅→賃貸住宅
条件変更の有無 | 承諾料 |
①無し | 更地価格の2%~5% |
②無し | 更地価格の10%~15% |
絶対ではありませんが、承諾料の算出方法は上記のような場合が多いです。
更地価格が3000万の場合
①3000✕5%(仮)=150万
②3000✕13%(仮)=450万 となります。
堅固建物=石造・土造・レンガ造・コンクリート造・ブロック造など
無断で建て替え工事を行ってしまったら
①の場合、借地契約書に増改築を制限する記載が無ければ地主の承諾は必要ありません。よって、承諾料も払う必要はありません。
しかし増改築を制限する記載がある場合は地主の承諾無しに工事を行う事は出来ません。
無断で建て替え工事を行うと、契約違反となり借地契約を解除される恐れがあります。
②の場合はそもそも借地契約とは異なる建物を建てることになるので地主の承諾を得なくてはいけません。
無断で建て替え工事を行うと、契約違反となり借地契約を解除される恐れがあります。
当初設定した金額が貨幣価値、物価上昇と合わなくなるので、家が古くなり建て替える時に補填の意味も含めて地主にまとまった金額を収めるという風習が昔からあります。
地主的にも、承諾に応じる条件として承諾料を要求します。
要求額があまりにも高い等の場合以外は承諾料を払うのは仕方ない事と言えます。
建て替え工事ができない例
中には地主の承諾を得ていても法的に建て替え工事が許可されない物件があります。
再建築不可物件と呼ばれる物件で、現在家が建っている分には問題が無くとも、解体して更地にしてしまうと新たに家を建てられない土地の事です。
既存不適格建築物
建築当時は法的に問題は無かったが、その後の法改定によって不適格となった建物です。
高さ制限、日陰規制、耐震強度等の建築基準法の基準値を守っていない物件の事を指します。建て替えや増築工事は可能ですが、現在の法に適合させる必要があります。
接道義務を果たしていない物件
接道義務とは、幅4メートル以上の道路に敷地が2メートル以上接していなければいけないという建築基準法の規定です。
緊急時に消防車や救急車等の緊急車両が通れる事、災害時に避難経路が確保できる事を考えた法です。
これを果たしていない土地は、原則として建物の建て替え工事を行う事は出来ません。
ただし、敷地周辺に広い空き地があって、交通や安全・防火・衛生上に支障が無いと認められれば例外となり工事が出来るケースもあります。
また、都市計画区域内または準都市計画区域内でしか適用されない規定のため、市の行政担当部署で自分の土地が適用区なのか確認してみましょう。
地主が承諾してくれない
法的には問題無くとも、地主が承諾してくれず建て替え工事が出来ない事があります。
承諾しないにも何か理由はあるはずです。まずは自分に原因が無いか確認してみましょう。地代を滞納した事や更新料未払いがあるかもしれません。
特に原因も無く、立ち退き狙いや嫌がらせで拒否してくる場合は【借地非訟】という方法があります。裁判所から地主の承諾に代わる許可をとる事ができるのです。
しかし、非訟を起こすには費用がかかりますし1年以上かかる事もあります。そして何よりも地主との関係が悪くなってしまいます。
地主も、訴訟を起こせばほとんどの場合許可を取れる事を知っているはずなので、多少時間はかかってもじっくり話し合って納得してもらう事が望ましいです。
借地権の疑問
借地じゃローンが組めない?
借地だと住宅ローンが組めないと金融機関に言われてしまったというケースが多いですが、機関によって審査基準は違うので一概には言えません。地主の融資承諾書があれば住宅ローンの申し込みが可能な場合もあります。
しかし、地主が融資承諾を拒否するケースが多く見られます。融資承諾の中には【抵当権】といって「施工者(借地人)がローン返済不能になったら地主の土地を競売する」というような条約があります。
地主からすれば「他人の借金のために、自らの土地を担保にする」ようなものなので、嫌がるのも納得です。
ここで注意したい事は「建て替えの承諾」と「融資の承諾」は全く別物という事です。
地主は、既に建て替え工事を承諾していて承諾料受け取っていても、融資の承諾を拒否する権利があるのです。
承諾料の返済も法的に困難で、もう自力で資金を調達するしか無くなります。
住宅ローンでの建て替えを考えている方は、建て替えの承諾を貰った段階で地主に融資承諾書の捺印を貰ってから承諾料を収めるという形をとりましょう。
小さな改修でも地主の許可は必要なの?
建て替え工事などの大規模な工事とは違って雨漏りを治す、軽微な内装の修繕程度の小規模な改修工事は地主の許可は必要としません。
長年住む事によって家は劣化してしまうので、必要な修繕を加える事は建物の所有者としては当然の権利です。したがって、建物の維持保存のための補修について制限する特約があっても無効となります。
よって借地契約において「小規模な改修工事も地主の許可が必要」等の記載があっても無効なので許可はいりませんし、承諾料を払う必要もありません。
更地にした瞬間解約が終わってしまうって本当?
借地上の建物を建て替えのために解体し、更地にしてしまうと契約が終わってしまうんじゃないかと心配する方もいらっしゃいます。
更地に柱などを立てておかなければ権利が剥奪されるという噂もありますが、地主に承諾を貰った時点で契約は「新たに建設する建物を保有するため」の法になります。
よって、建て替え工事の途中で一旦更地にしても契約満了にはなりませんので安心して解体工事を行って下さい。
まとめ
地主の承諾があれば、借地上の家屋であっても建て替え工事を行う事はは可能です。
しかし、法的な規定をクリアしている事や住宅ローンの申し込み審査など気をつけなければいけない点が存在します。また、借地契約も個々で特約が違うため確認が必要です。
後々トラブルに発展しないように順序をよく考えて進めていきましょう。
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