解体費用を負担してでも…土地売却における更地渡しのメリットとは

不動産を売るなら、「更地渡し」が基本!!

土地を売却したいとき、ポイントとなるのが建物の取り扱いです。

築年数が20年以上経過している家屋や、老朽化が進行してリフォームを施さないと住めない空き家などは、不動産の買い手にとってあまり魅力がありません。

そのため、物件売却の広告では「解体更地渡し可」とするのがオススメです。

そこで、今回は更地渡しのメリットについて、更地渡しにかかる解体費用や売買契約を結ぶ際の注意点と併せて説明します。

どこまでが売主負担? 更地渡しの解体費用をチェック

建物などが建っていない土地の状態を更地といいます。

つまり、更地渡しとは建物を解体撤去してから土地を売却する方法を指します。

ただし、建物の解体撤去にはお金がかかるので、まずは解体費用について確認しましょう。

注意
更地渡しといっても、家屋を解体撤去するタイミングは売却先が決定したあとです。
売却先が見つかる前に更地にしてしまうと、本記事で紹介するメリットが受けられないので注意してください。

解体費用の目安はどのくらい?

解体費用は、「建物の延べ床面積(坪)×坪単価」で算出します。

建物の延べ床面積とは?
建物内部における、各階の床面積を合計した広さを指します。
なお、1坪は約3.306㎡です。

坪単価は1坪当たりの解体費用を指しますが、建物の種類や地域によって差があります。

建物の種類で分類すると、坪単価は以下の通りです。

建物の種類 坪単価の目安
木造 25,000~40,000円
軽量鉄骨造 25,000~45,000円
鉄骨造 25,000~45,000円
鉄筋コンクリート 30,000~60,000円

さらに、以下のような坪単価に含まれない費用も存在します。

  • 外構・樹木・庭石等の撤去費
  • 養生シート・足場の設置費
  • 警備・交通整理費
  • 重機回送費
  • 官公庁届出費
  • 地中埋設物の撤去費
  • 整地費

このように、解体費用は「建物の延べ床面積×坪単価」に、その他費用を加算して算出します。

解体費用に関する詳細な説明は、以下の記事で紹介しています。
ぜひ、ご覧ください。

解体費用は売主負担とすべき
一般的に、売却価格は国が公開している公示価格(土地の価格)を参考にして設定します。
ですから、解体費用を上乗せすると相場より高額になるので、売れにくくなってしまいます。
したがって、更地渡しの場合は、解体費用を売主負担とするのがオススメです。

解体後の費用はどこまで負担すべき?

解体跡地の整備については、当然ながら新築工事にも密接に関係します。

そのため、解体後の費用をどこまで売主が負担するのか線引きが必要です。

整地は売主の負担で行うべき

一般的には、整地や地盤改良は売主側が責任をもって完了させます。

整地・地盤改良とは?
整地とは、新築工事などを見据えて、建物の解体跡地をキレイに整える作業です。
転がっているコンクリート片や大きな石を撤去し、重機で地面を押し固める転圧を施します。
また、地盤改良とは、土地の地盤が弱くて不安定な場合に行う地盤強化工事を指します。
セメントを使用して地表を固めたり、強い地盤に届くまで杭を打ったりします。

ただし、新築計画に合わせて地形を変える土地造成工事に関しては、買主負担とするのが普通です。

参考 スマ研地盤改良工事とは?工法別のメリット・デメリットと費用 参考 不動産一括査定サイトのおすすめは?これを読めば「造成とは何なのか」全てわかる

建物滅失登記の費用も売主側で負担する?

また、建物を解体撤去した場合には、建物滅失登記を法務局に申請しなければなりません。

建物滅失登記は売主が行います。

建物滅失登記とは?
法務局にある建物の登記簿に、建物が解体撤去された旨を登記する手続きを指します。
なお、建物滅失登記を行っても、30年間は情報が閲覧できます。

なお、建物滅失登記の申請は、法律により解体業者さんなどが代行できません。

唯一、土地家屋調査士に依頼すれば代行可能ですが、大体4~5万円かかります。

そのため、ご自分で登記して費用を節約するのがオススメです。
手続きも意外なほど簡単です。

以下の記事では、建物滅失登記のやり方を解説しています。
どうぞご覧ください。

土地の売却時に更地渡しがもたらす3つのメリットとは?

更地渡しで発生する解体費用の多くは、売主側が負担します。

しかし、それでも更地渡しには売主側にとっても3つの大きなメリットがあります。

【メリット1】「解体更地渡し可」とうたう物件は売れやすくなる

不動産を広告に出す際には、以下のように物件の状態や売買の条件を設定します。

  • 現況渡し
  • 古屋付き建物
  • 古屋付き建物、解体更地渡し可

売却価格から解体費用の見積金額分をあらかじめ差し引いて、現在の状態のまま不動産を売りに出す現況渡しを選択する方法もありますが、あまりお勧めできません。

なぜなら、解体工事で追加費用が発生すると買い手にとって損なので、現況渡しは敬遠されやすいからです。

実は、解体工事では追加費用が必要となるケースが珍しくありません。

例えば、解体工事を進めると、解体現場から地中埋設物が見つかる場合があります。

地中埋設物とは?
解体現場の地下に埋まっている不要物を指します。
ゴミや大きなガレキのほか、井戸や浄化槽(下水の処理設備)が発見されるケースもあります。

地中埋設物が見つかると追加で撤去費が生じるため、見積金額より解体費用が高くなります。

ですから、一般的に買い手は不要な建物が建っている土地をあまり好みません。

ところが、先に建物を解体撤去してしまうと、今度は建物付きで土地を購入したい方が売却対象から漏れてしまいます。

そこで、建物を解体せずに「古屋付き土地、解体更地渡し可」として物件を広告します。

すると、建物の要不要にかかわらず、幅広い買い手に訴求できるので、物件が売れやすくなります。

【メリット2】更地渡しでも経済的メリットがある

更地渡しでは、売主側の金銭的な負担が、ある程度軽減されます。

解体費用を経費に計上できる

土地・建物を売却をすると、譲渡所得が発生します。

譲渡所得とは?
不動産などを売却した際に生じる、売主の純収入を指します。
参考 国税庁No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

譲渡所得は、所得税と住民税の納税額を計算する際のベースとなります。

所得税・住民税の納税額=譲渡所得×20.315%※
※所得税と住民税を合算したパーセンテージ。
不動産の所有期間が5年以下の場合は、39.63%に上がります。

つまり、譲渡所得が増加に伴い、納税額もアップするわけです。

ちなみに、譲渡所得の計算式は次の通りです。

譲渡所得=収入金額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除額
収入金額:不動産等の売却金額
取得費:不動産等の取得などにかかった費用
譲渡費用:不動産等の売却手続きなどにかかった費用
特別控除額:特例措置によって特別に減じられる額

上記の計算式より、譲渡費用がアップすると譲渡所得はダウンするので、納税額も下がります。

解体費用は譲渡費用として計上可能なので、例えば解体費用が200万円だとすると「200万円×20.315%=40万6300円」の節税効果があります。

ただし、解体費用が譲渡費用として認められるのは、解体工事が終わってすぐに土地を売却した場合に限られます。

よって、先に更地すると上記の節税ができないため、ギリギリまで建物を解体しないで「解体更地渡し可」と広告しておくのがオススメなのです。

注意
土地や建物の売却では、「居住用財産売却の3000万円特別控除」といった特例がいくつか存在します。
譲渡所得のマイナスはゼロと見なされるため、特別控除が適用されると解体費用を計上しても上記メリットが発生しない場合があります。

固定資産税等が高額にならずに済む

所有する不動産に対しては、固定資産税と都市計画税が課税されます。(都市計画税は、都市計画法に基づく市街化地域内のみ)

固定資産税等は、不動産の価値を表す固定資産税評価額を課税標準額として用いて算出します。

固定資産税=課税標準額×1.4%程度※
都市計画税=課税標準額×0.3%以内※
※実際のパーセンテージは、上記の数字を基準に自治体ごとに定めます。

上記が基本式ですが、建物が建っている土地には特例が適用され、以下のように課税額が抑えられます。

〇固定資産税の課税額
200㎡以下の部分:課税標準額×1/6×1.4%程度
200㎡超の部分:課税標準額×1/3×1.4%程度
〇都市計画税の課税額
200㎡以下の部分:課税標準額×1/3×0.3%以内
200㎡超の部分:課税標準額×2/3×0.3%以内

ところが、建物を解体すると赤字の部分が消滅するので、固定資産税等が実質4倍以上になってしまいます。

ですから、更地渡しがオススメです。

売却が決まってから解体すれば、節税効果をギリギリまで受けられます。

【メリット3】土地や建物に関する責任について、引き渡し前に軽減できる

土地や建物の売却においては、瑕疵(かし)担保責任が発生します。

瑕疵担保責任とは?
売却したあとで土地・建物の問題が見つかった場合に、売主側に生じる責任を指します。
多くの場合は損害賠償が発生します。
〇瑕疵の例
土地:地中埋設物の発見、軟弱な地盤で地盤改良が必要等
建物:屋根の雨漏り、柱・床・壁等の建物主要部分の腐食・シロアリ被害等

個人間での売買では、瑕疵担保責任を負わないとする特約を付けた契約も可能です。

しかし、現実には売却不動産に問題が見つかると、特約があったとしてもトラブルに発展しかねません。

そこで、瑕疵担保責任の回避についても譲渡渡しが有効です。

建物を解体し、土地に問題がないかチェックしたうえで買主側に不動産を引き渡すので、瑕疵担保責任を問われる危険がほとんど無くなります。

このように、更地渡しは、解体費用を負担する代わりに多くのメリットを受けられます。

契約は慎重に…注意しながら更地渡しを進めよう!!

更地渡しはメリットが多い一方、契約内容などには十分注意を払う必要があります。

そこで、更地渡しを行うにあたって注意すべき点をご紹介します。

解約金に関してローン特約を設けるか?

買主がローンを組む場合、解体工事を始めるタイミングに要注意です。

売買契約の流れとローン特約

更地渡しの場合、以下の流れで売買を進めます。

売買契約・手付金の支払い

ローンの審査

解体工事

土地引き渡し・代金支払い

買主は多額の資金を投じて新築工事を行うため、通常はローンを組みます。

なので、もしローンの審査を通らなかった場合は、ほとんどの買主は新築を諦めて売買契約の解除を考えるはずです。

ただ、契約を解除するにも何百万円といった手付金を放棄しなければならないため、買主が過酷な状況に置かれかねません。

そこで、通常は売買契約にローン特約を付けます。

ローン特約とは?
ローンの審査が通らなかった場合に、手付金の放棄などといったペナルティなしに売買契約を解除できる特約です。

ローン特約は買主のリスクを軽減できるので、売買契約を促進する効果を生み出します。

ローン審査が通るまでは解体に着手してはならない

ですが、裏を返せば売主が契約の履行に着手していたとしても、金銭が一切受け取れないリスクがあるともいえます。

そのため、買主がローンの審査を通るまでは、解体工事を始めてはなりません。

再び「解体更地渡し可」として広告するのも不可能になってしまいます。

したがって、売買契約にローン特約を付けた場合は、解体工事のタイミングに十分注意しましょう。

売却した年の固定資産税は誰が払うのか?

固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日に納税額とともに納税者も決定します。

つまり、年の途中で不動産を売却しても、固定資産税等は全額を売主(1月1日時点での所有者)が負担しなければなりません。

そこで、固定資産税等の納税額を日割り計算して、一部を買主から売主へ支払ってもらう方法があります。

例えば、1年の固定資産税が20万円、1年を365日、買主の所持日数を100日とすると、買主の負担額は以下の通りです。

買主の固定資産税負担額
=20万円×100/365
=約5万4800円

固定資産税等の負担割合は当事者同士で決められるため、上記はあくまで一例です。

ですが、一般的には日割り計算が使用されているので、買主・売主双方が納得しやすい方法といえます。

工事範囲に関して売主・買主双方の合意ができているか?

更地渡しでは解体工事を売買契約後に行うため、引き渡す時点で土地がどのような状態になるのか分かりません。

そのため、必ず工事範囲を明確に書面で取り決めておく必要があります。

具体的には、ブロック塀や境界線、樹木・庭石など撤去範囲、整地を施す程度といった内容を確定させます。

また、万が一工事でトラブルが発生した場合に、誰が責任を負うのか事前に取り決めておくのも重要です。

土地の引き渡し日までに解体工事は終わるのか?

更地渡しでは、解体跡地を引き渡された直後に新築工事を開始しようと考える買主さんもいらっしゃいます。

ですから、解体業者さんには、必ず解体工事を予定通りに終えてもらわなければなりません。

ところが、解体工事は屋外で行われるため、台風や大雨によって工期が遅れる可能性があります。
また、振動や騒音、ホコリ等が原因で、近隣住民との間にトラブルが発生した場合も工期遅延の原因となります。

万が一解体工事が遅れた場合は、違約金や損害賠償の支払いが生じる危険もあるため要注意です。

したがって、ある程度は工事が遅れても問題ないように、余裕をもって工事計画を立ててもらう必要があります。

そこで、解体業者を選ぶ際はあんしん解体業者認定協会にお任せください。

当協会では、「解体業者13の登録審査基準」をクリアした業者さんのみご紹介しています。

「解体業者13の登録審査基準」には、「工事前に書面で契約書を交わし、代金の支払いや工事日程についても明記する」という項目があり、解体業者さんには現実的な工事日程を組んでいただいています。

さらに、紹介する業者さんも1社ではなく複数社なので、解体費用を無理なく抑えられます。
ぜひ、ご連絡ください。


解体無料見積ガイド

まとめ

今回は、更地渡しを選択すべき理由について、解体費用や契約等の注意点と併せて解説しました。

更地渡しでの解体費用は、基本的に売主が負担します。
しかし、売主にとっても売却が容易になる、経済メリットがある、後々トラブルが起きにくくなるといったメリットがあるので、更地渡しはオススメです。

ただし、契約内容には要注意です。
契約内容に漏れがあったり、工期がギリギリだったりすると、解体費用以外の負担が発生する危険があるので注意しましょう。

なお、解体業者さんを選ぶときは、あんしん解体業者認定協会にぜひご連絡ください。

複数の業者さんを比較して解体費用を抑えたうえで、確実な計画に基づいて解体工事を進められます。


解体無料見積ガイド

建物が建っている土地を売却したい場合、更地渡しがオススメです。

ただ、解体費用は売主負担なので、優良な解体業者さんを見つけて金銭負担を減らしましょう!!

業者をお探しの方必見!解体工事の品質管理ポイントを押さえよう 届出5つ+1つ解体工事に必要な届出とは?