解体工事で発生する産業廃棄物は、業者に処分を依頼します。
しかし悪質な業者の中には、処分費を抑えるために廃棄物を不法投棄する業者も存在するため、利用には注意が必要です。
この記事では、悪質業者による不法投棄の被害に遭わないためのマニフェスト制度について解説していきます。ぜひマニフェストを活用し、トラブルのないクリーンな工事を進めましょう。
マニフェストとは?
悪質な業者による産業廃棄物の不法投棄を防止するため、1997年に廃棄物処理法が改正され、廃棄物が適正に処理されたかどうかを確認できる「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」の発行が義務付けられました。
マニフェストとは、解体工事などで排出される産業廃棄物がきちんと処理されているか、処理の流れを確認するために作成される書類のことです。
産業廃棄物管理票(マニフェスト)とは、廃棄物の処理が適正に実施されたかどうか確認するために作成する書類です。排出事業者には、マニフェストを作成して「委託した産業廃棄物が適正に処理されたか否か」を確認する義務が課せられています。 排出事業者の交付するマニフェストには、誰がどのような産業廃棄物をどのように取り扱うかということが記載されています。処理業者は、このマニフェストに対して委託された業務を何時完了したかという情報を記載して返送することになっています。マニフェストの様式は、廃棄物処理法施行規則第8条にて定められています。
引用:マニフェスト|公益社団法人全国産業資源循環連合会
なお、マニフェストには複写式の紙伝票を利用する「紙マニフェスト」と、情報処理センターにパソコンを使って情報登録する「電子マニフェスト」がありますが、どちらも同じように利用できます。
具体的にどのように確認しているのか?
具体的なマニフェストの運用方法を確認していきましょう。
マニフェスト制度では、産業廃棄物を処分する際に、処分の流れを把握し適正な処分が行われているかを確認するために管理票を使用しています。
管理票には、交付年月日・担当者名・排出事業者・廃棄物の種類・数量・運搬業者名・処分業者名などを記入して、基本的に排出事業者・中間処理業者・最終処分場の間で受け渡しが行われます。
引用:マニフェストとは産業廃棄物の処理委託の際に必要な伝票” site=”産廃マニフェスト販売のプラスワンコミュニケーションズ”
マニフェスト票の記載項目
紙マニフェストは「A票」「B1票」「B2票」「C1票」「C2票」「D表」「E票」からなる7枚複写で、7枚それぞれに別の役割があります。
A票 | 排出事業者の控えとして使用します。 |
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B1票 | 処分業者への運搬終了後、運搬業者の控えとして使用します。 |
B2票 | 処分業者への運搬終了後、運搬業者から排出事業者に返送され、排出事業者が運搬終了を確認するために使用します。 |
C1票 | 処分終了後、処分業者の控えとして使用します。 |
C2票 | 処分終了後、処分業者から運搬業者に返送され、運搬業者が処分終了を確認するために使用します。 |
D票 | 処分終了後、処分業者から排出事業者に返送され、排出事業者が処分終了を確認するために使用します。 |
E票 | 最終処分終了後、処分業者から排出事業者に返送され、排出事業者が最終処分終了を確認するために使用します。 |
最終的には、排出事業者の手元にはA票、B2票、D票、E票が戻ってきます。
また収集運搬業者はB1票とC2票を、中間処理業者はC1票を保管します。
さらに、最終処分場で処分するものがある場合は、中間処理業者が排出業者となって、新たにマニフェストを交付します。
このようにマニフェスト制度は、それぞれの場所で全ての処分作業が適正に進められていることを、互いに確認していける仕組みになっているのです。
マニフェストの返送期限と確認義務
マニフェストは廃棄物の種類・運搬車・運搬先ごとに作成され、処分後には排出事業者宛ての返送が義務付けられています。
それぞれのマニフェストの返送期限は以下の通りです。
交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物の場合は60日)に返送される
交付日から180日以内に返送される
期限内に返送されない場合、排出事業者は処理業者に問い合わせて処理の状況を把握します。また、生活環境の保全上の支障の除去または発生の防止のために必要な措置を講じ、30日以内にその講じた措置等を都道府県知事に報告することが義務付けられています。
またマニフェストの交付・回付・送付を行った業者は、それぞれの伝票の送付を受けた日もしくは送付した日から5年間の保存義務も定められています。
マニフェスト制度の活用方法
繰り返しになりますが、産業廃棄物を処分する際はマニフェスト伝票を発行することが義務付けられています。言い換えると、廃棄物を適正に処分している業者は必ずマニフェストを発行しているのです。
マニフェストの義務に違反した場合
もし廃棄物処理業者がマニフェストを発行しないなどの義務違反を犯した場合は、以下の罰則の適用を受けます。また委託業者が不適正処理を行った場合は、排出事業者も委託業者とともに現状復帰など措置命令の対象になります。
- 委託基準違反:5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科
- マニフェスト不交付:6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金
- マニフェスト未記載:6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金
- マニフェスト虚偽記載:6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金
- マニフェスト保存義務違反:6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金
悪徳業者から身を守るためのマニフェストの活用法
廃棄物処理業者に産業廃棄物の処分を依頼するときは、前もってマニフェスト伝票の記載・交付ができるかを確認してください。
もしマニフェストの提示を断られたら、マニフェスト義務に違反している業者の可能性があるため、工事は依頼しないほうがいいでしょう。
しかし、中には以下のようにマニフェストの内容を改ざんする悪徳業者も存在するため、マニフェストが提示された場合でも十分に注意が必要です。
処分予定の廃棄物の半分を正規に処分して、残りを不法投棄し、そこで発生した差額を自分の懐に入れる業者 |
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工事依頼前の見積内容とマニフェストの内容に相違がないかを見比べることで防止できる |
あらかじめ多めの量で見積りを出して、実際はそれよりも少ない量を処分することで発生した差額を懐に入れる業者 |
処分場にどのくらいの量の廃棄物を処分したか確認することで防止できる |
解体工事の産業廃棄物についてのまとめ
解体工事に関わる産業廃棄物のマニフェスト制度とその活用について説明してきました。
産業廃棄物の悪徳業者にかかると適切な処理が行われない、余分な費用を取られる可能性が高くなります。そのような状況を招かないためにも、解体工事の依頼前にマニフェストを提示できるかの確認を行いましょう。
また、解体工事後には実際に提示してもらったマニフェストを確認し、処分料や数量を見積書と照らし合わせて、間違いがないかを確認してください。処分業者にも連絡して、どのくらいの量を処分したのかも確かめると、その業者が信頼できるかがわかります。無駄な費用を請求されるなどのトラブルを防ぐことが出来ます。
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