【終活】遠距離に住んでいる親の介護施設の入所を考える

Aさんは50代後半で80代半ばの母親がいます。父親はすでに他界、男2人兄弟ですが、それぞれ独立、結婚し、別居していました。兄弟の関係は悪く、ほとんど交流はありません。Aさん自身も30代後半から独立し、その後結婚、母親とは長い間離れて暮らしていました。

母親の施設への入所を考え始めたのは、脳梗塞を患った母親の介護が必要になったからです。しばらくは病院で過ごしていましたが、とても一人では母親が暮らせないと判断したこと、またAさん自身が母親と遠距離の場所に住んでおり、介護できる人もいなかったことからいつまでも病院にいることもできず、施設を探し始めました。

施設を探すことも大変なことの1つでしたが、それ以上に大変だったのは母親に介護施設の入所を説得することの難しさでした。

親は「介護で迷惑をかけたくない」と言っていたが・・・

介護現場をよく知るケアマネージャーによると、介護が必要になったら、子どもたちや家族には迷惑をかけたくないから、施設の世話になると言っていた人でも、実際に介護が必要になったときに自分からすすんで施設に入る人はほとんどいないそうです。

施設入所の話が出ると、9割以上の人は自宅で暮らすことを希望するそうです。介護される立場になっても親本人にとって一番安心できる場所は自宅ですし、時代が変化してきたとはいえ、家の主体は親である自分であり、子は面倒を見るものという意識もあるようです。そのため子どもに「施設に入ってほしい」と言われるのは、親である自分たちよりも子どもたち自身の生活を優先していたり、自分たちが見捨てられるという被害者意識に陥ってしまうようです。

みんな悩んでいる、施設への入所を親にどう切り出し、納得してもらうか

親が施設にはいるのを嫌がる理由のひとつに、施設がどんなところで、どのような扱いを受けるのかわからない不安があるようです。これを取り除くためには、施設での介護を体験し、慣れてもらうことが大切です。

そのためいきなり施設にはいるのではなく、デイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)を利用する機会を作り、その利用体験から施設に対する抵抗感を少なくしていくことがひとつの方法として考えられます。

しかし、実際にはデイサービスにも行きたくないと拒絶する人は少なくありません。強引に入所させることをしなくてもよいように、また強引に入れたことでこちらも精神的に負い目をずっと抱え込まないようにするためにも、時間をかけて粘り強く話をして、介護施設というところを受け入れてもらうことが大切になってきます。

ちなみに認知症になっても施設へ入所することの拒否はあるようです。認知症によってわけのわからない言動をしたり、会話が成立しなくなっても、家から離れることになることはわかりますし、むしろ敏感に反応し、泣き叫んだり暴れたりということもあるようです。

大切なのは気持ちに寄り添うこと

施設に行くとき、入所するときに大切なのは、家族サイドからの都合を語らないことです。

例えば、「仕事があって面倒を見れないから、デイサービスに行ってください」とか、「疲れているので、たまにはショートステイに行って休ませてほしい」といった言い方は、介護される親にとっては、自分が家族に迷惑をかけている厄介者であると感じたり、プライドが傷つけられてしまいます。時には、ますます意固地になって拒絶してしまうこともあります。

それではどのように伝えればよいのでしょうか。

それは、主体があくまで要介護者である親であることを心がけて話すことです。「仕事の関係で、どうしてもこの日はそばにいられない。自分がいない時に、不自由な思いや寂しい思いをさせたくない」などです。親のためを思って、という話の方向性と低姿勢を見せることで、本人の気持ちを和らげやすくなります。

また、行った施設で嫌なことがあったなら、どんなところが嫌だったのかを聞き、そのような施設には行かせないことや、ケアマネとも相談しようなど、気持ちに寄り添うようにします。このような語りかけを根気よく続けることで、施設に対する抵抗感を少しずつなくして行っていくことが大切です。

施設よりもハードルがさがる老健(介護老人保健施設)の入所

いきなりの介護施設への入所は、親としても自分がはいることに拒否感も大きいですが、老健(介護老人保健施設)は病院と介護施設の中間的施設で医師や看護師もいて医療処置が充実しているため、入所することに心理的なハードルがさがるようです。

老健(介護老人保健施設)は、リハビリなどを行い体の不調を改善して、自宅に戻ることを目的とした施設のため、基本的に長期入所は難しい施設ですが、体を良くして自宅で暮らすという前向きな目標を持ちやすくもなります。

要介護であれば、何らかしらの体調などの不調はあるものですし、施設と違って病院なら入ることに抵抗感は少なくなります。「元気になって戻ってきてほしい」と説明すれば入所を納得してもらえる可能性も高くなると思われます。

老健(介護老人保健施設)の入所対象者は原則として65歳以上で要介護1以上(40~64歳でも特定疾病に認定された場合は入所可能)です。老健(介護老人保健施設)も入所待ちはありますが、特別養護老人ホームと比べれば待機者は少なくなります。「医療の必要性」を強調することによって、施設入所の拒絶感を取り除くことにつながることもあります。

在宅介護に限界が来てから、切羽詰った状態で施設への入所を考えるのは本人にも家族にとっても辛い思いをすることが多くなります。難しいことではあるもののが、親が要介護になった時点で施設入所を視野に入れ、本人との相談も含めて、環境づくりをしておくとよいでしょう。

Aさんも施設入所を考えましたが、親の意向もあり、なかなか進展が難しい状況でした。しかし、一人暮らしをさせるわけにもいかず、最終的には老健(介護老人保健施設)への入所を決めました。

とりあえず老健(介護老人保健施設)に入所することが決まり、日々の生活ができているか、ご飯は食べているか、倒れていないかなどの日常生活の心配をしなくてもホッとできるようにはなりましたが、空き家となった実家の手入れはどうするかは、まだ大きな悩みとなっています。

まとめ

遠距離に住んでいる親の介護施設の入所を検討すると、お金のこと、家のことなどいろいろな心配事や悩みが山積みになってしまいます。しかし、一番の悩みは親が嫌がっているにもかかわらず、施設に入れざるを得ないことです。そして、施設に入れることで罪悪感を感じてしまう人は少なくありません。

それぞれのご家族の状況もあり、選択肢が施設の入所しかない場合もあると思いますが、施設への入所を親にどう切り出し、納得してもらうかを事前に考えておき、いざというときに参考にしてください。

補足
Aさんの親が施設に入所して7年ほど経過し、Aさんは実家を処分することに決めました。もともと実家で商売をしていたことや、捨てることが苦手だったAさんの母親が実家にため込んだ荷物を整理するのに、業者5人が3日間かかってようやく整理できたそうです。そして、すっかり家をきれいにし、解体工事を終え、その土地は新しい人のものになりました。

確かにAさんが生まれ育ったその土地は、他の人のものになりましたが、今でもAさんの思い出の中には、実家の思い出がしっかり残っています。そして、家をきれいにしてから、約1年後に母親は旅立っていきました。Aさんは、家を整理するときにずいぶん悩んだようですが、あとになってあのときに決断していて本当に良かったと語っていました。

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