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農地の相続に納税の猶予があるって本当?詳しく知りたい制度の概要!

相続税・贈与税において、農地の「納税猶予」という特例があるのをご存知でしょうか?

この制度を用いると、相続税・贈与税の納付が一定条件の下で猶予されます。農地等の贈与・相続には多くの税金を支払う必要がありますが、この制度を上手く利用することができれば、納税額を大きく減らすことができます。

今回はこの納税猶予制度について、今後の動向も含めてご紹介したいと思います。

贈与税の納税猶予の要件

相続税の申告が必要かどうかの判定は、相続税の基礎控除額以上の財産があるかどうかの判定をします。被相続人の財産が、基礎控除額3,000万円+(600万円×法定相続人数)を超える場合には相続税の申告が必要になります。実際に相続する財産の金額が、基礎控除額を上回っている場合には相続税の申告が必要となる事を頭に入れておきましょう。

農業を引き継ぐ推定相続人に贈与した場合、贈与を受けた農地等について納税猶予がなされる要件は、以上の3つの要件があります。

①贈与者の要件
②受贈者の要件
③特例農地等

贈与者の要件

贈与の日まで3年以上引き続いて農業を営んでいた個人で、次のA~Cに該当しないことが条件となります。

A:贈与をした日の属する年の前年以前において、推定相続人に対し相続時精算課税を適用する農地等の贈与をしている場合。
B:対象年において、今回の贈与以外に農地等の贈与をしている場合。
C:過去に農地等の贈与税の納税猶予の特例に係る一括贈与をしている場合。

※Aの相続時精算課税とは、生前贈与をした場合、贈与財産には贈与税がかかりませんが、その代わりに相続のときには、生前に贈与された財産と相続された財産を足した額に相続税がかかるという制度です。

A~Cの条件がありますが、原則として贈与の日まで3年以上農業を営んでいる個人であると贈与者として認められます。

受贈者の要件

贈与者の推定相続人のうちの1人で、次のⅠ~Ⅳの全てに該当するものとして農業委員会が証明した個人であることが必要です。

(Ⅰ) 贈与を受けた日において、年齢が18歳以上であること。
(Ⅱ) 贈与を受けた日まで引き続き3年以上農業に従事していたこと。
(Ⅲ) 贈与を受けた後、速やかにその農地及び採草放牧地によって農業経営を行うこと。
(Ⅳ) 農業委員会の証明の時において認定農業者等であること。

上記の(Ⅳ)については、平成28年度の税制改正により追加された要件ですので注意が必要です。ここでいう認定農業者とは、効率的かつ安定的な農業経営の基準として農林水産大臣が定めるもので、農業経営基盤強化促進法の規定による以下の条件を満たしているケースです。

①農業経営改善計画の認定を受けていること
②青年等就農計画の認定を受けていること
③市町村が定めた基本構想の指標を充たしていること

以上の3つの基準の内のいずれかを満たす必要があります。

特例農地等の要件

贈与者の農業の用に供している農地等のうち、以下の条件について一括して贈与を受けることが必要になります。

㋐「農地の全部」
㋑「採草放牧地の2/3以上の面積のもの」
㋒「準農地の2/3以上の面積のもの」

ここで注目すべきことは、㋐の農地には生産緑地も含まれていることです。以前は、生産緑地に指定するための要件として当該土地の面積が500㎡以上あることが定められていましたが、平成29年の改正でこの面積要件を緩和し(生産緑地法3条2項)され、市町村が一定の基準(300㎡)のもと面積要件を条例で変更できるようになりました。

この改正により、東京23区を含めた都市圏でより多くの農地が特例農地等に含まれ得ることになります。

贈与税の納税猶予の手続き

この特例の適用を受けるためには、贈与税の申告書に一定の書類を添付して、提出期間内(原則、受贈者が、贈与された年の翌年の2月1日から3月15日まで)に提出するとともに、農地等納税猶予税額及び利子の税額に見合う担保を提供する必要があります。

この特例の適用を受けた人は、納税猶予の期限が確定するまで又は納税が免除されるまでの間、贈与税の申告期限から3年ごとに、継続届出書を提出しなければなりません。

贈与税の納税猶予の打切り事由

納税猶予を受けたのちに、次のア~キに該当した場合は、その贈与税額の全部又は一部を納付しなければなりません。

(ア)贈与を受けた農地等について、譲渡等があった場合。

(イ)贈与を受けた農地等に係る農業経営を廃止した場合。

(ウ)受贈者が贈与者の推定相続人に該当しないこととなった場合。

(エ)継続届出書の提出がなかった場合。

(オ)担保価値が減少したことなどにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、その求めに応じなかった場合。

(カ)都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があった場合や、都市計画の変更等により特例農地等が特定市街化区域農地等に該当する場合。

(キ)準農地について、この特例の適用を受けた場合で、申告期限後10年を経過する日までに、農地に利用されていない「準農地」がある場合。

相続税の納税猶予の要件

農地等の相続税についても納税猶予制度があり、贈与税の場合と同様です。

①贈与者の要件
②受贈者の要件
③特例農地等の要件

以上の3つがあります。

簡単には適用されない?被相続人の要件

被相続人は以下の要項に該当する人であることが必要です。

◇死亡の日まで農業を営んでいた人

◇農地等の生前一括贈与をした人

◇死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人又は農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをして、税務署長に届出をした人

◇死亡の日まで特定貸付けを行っていた人

農業相続人の要件

相続人は被相続人の相続人であり、かつ次の(1)~(4)に該当する必要があります。

(1) 相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行うと認められる人

(2) 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、特例付加年金又は経営移譲年金の支給を受けるためその推定相続人の1人に対し農地等について使用貸借による権利を設定して、農業経営を移譲し、税務署長に届出をした人(贈与者の死亡の日後も引き続いてその推定相続人が農業経営を行うものに限ります。)

(3) 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした人(贈与者の死亡後も引き続いて賃借権等の設定による貸付けを行うものに限ります。)

(4) 相続税の申告期限までに特定貸付けを行った人(農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者である場合には、相続税の申告期限において特定貸付けを行っている人)

特例農地等の要件

次のa~eのいずれかに該当するものであり、相続税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨が記載されたものであることが必要です。

a: 被相続人が農業の用に供していた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの

b: 被相続人が特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの

c: 被相続人が営農困難時貸付けを行っていた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの

d: 被相続人から生前一括贈与により取得した農地等で被相続人の死亡の時まで贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例の適用を受けていたもの

e: 相続や遺贈によって財産を取得した人が相続開始の年に被相続人から生前一括贈与を受けていたもの

ここでいう農地には、上述した生産緑地も含まれています。よって、贈与税と同様、平成29年の改正でこの面積要件が緩和されたことで、より多くの農地が特例農地等に含まれることになります。

相続税の納税猶予の手続き

相続税の特例を受けるためにも、贈与税の場合と同様、相続税の申告書に一定の書類を添付して期限内(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)に提出するとともに農地等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供することが必要です。

納税猶予期間中は相続税の申告期限から3年目ごとに、引き続いてこの特例の適用を受ける旨及び特例農地等に係る農業経営に関する事項等を記載した届出書(この届出書を「継続届出書」といいます。)を提出することも同様に必要です。

相続税の納税猶予の効果と打切り事由

①納税猶予の効果
納税猶予を受けることになると、農地の相続税の納税が猶予されます。この猶予は譲受人が耕作を続ける限り続き、一定の要件を満たすと猶予されていた納税額が免除されます。
一定の要件とは次の3点です。

◆特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合

◆特例の適用を受けた農業相続人が特例農地等(この特例の適用を受ける農地等をいいます。)の全部を租税特別措置法第70条の4の規定に基づき農業の後継者に生前一括贈与した場合

◆特例の適用を受けた農業相続人が相続税の申告書の提出期限から農業を20年間継続した場合(市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予税額の部分に限ります。)

市街化区域内農地

三大都市圏の特定市街化区域

・一般市街化区域
・生産緑地
・農地評価
・農地課税
・市街化農地
・宅地並み評価
・農地に準じた課税

※都市営農農地等とは、生産緑地地区内にある農地又は採草放牧地で、三大都市圏の区域内に所在し、生産緑地法規定の買取り申出がなされていないものを言います。

納税猶予の打切り事由

次のいずれかに該当することとなった場合には、納税猶予が打ち切られ、その納税猶予税額の全部又は一部を納付しなければなりません。

・特例農地等について、譲渡等があった場合
・特例農地等に係る農業経営を廃止した場合
・継続届出書の提出がなかった場合
・担保価値が減少したことなどにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、その求めに応じなかったとき
・都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があった場合や都市計画の変更等により特例農地等が特定市街化区域農地等に該当することとなった場合
・特例の適用を受けている準農地について、申告期限後10年を経過する日までに農業の用に供していない場合

※譲渡等には、譲渡、贈与若しくは転用のほか地上権・※永小作権・使用貸借による権利若しくは賃借権の設定若しくはこれらの権利の消滅又は耕作の放棄も含まれます。

永小作権とは…小作料を支払うことによって、他人の土地で耕作または牧畜に利用することができる権利。地主の圧制から小作人を守る目的で制定され、存続期間は、20年以上50年以下と規定されており、特段の期間の定めがない場合30年、更新する場合は最長50年まで。この権利は物権で、登記により第三者に対抗でき、譲渡や転貸も可能。なお、永小作権は、農地法制定により買い取りの対象となり、ほとんど残存していない。

納税猶予の趣旨は、農業の後継者への承継を促進することにあります 。上記のような事由は、その趣旨に反するため、農地であっても納税猶予が打ち切られてしまいます。猶予が打ち切られてしまった場合、納税猶予税額の全部または一部を納付しなければならず、影響は大きいです。

さらに、農地の中でも、市街化区域内にある農地の場合は、宅地に近い額の課税がなされるうえに利子を付けて支払う必要があるため、多額の納付額になります。これらの影響を考え、どのような場合に打切りがなされるのかについて注意しておく必要があります。

まとめ

農地等の納税猶予は税制改正により、敷居が今までよりも低くなりました。生産緑地指定の要件が緩和されたことで、結果として納税猶予を受ける可能性が高くなったのです。

これまで、農業を次世代に継承することがあまりにも手間がかかっていたのは事実です。また、街として農業を身近に感じてもらうという観点から、生産緑地が市民農園等として利用されるていることは大変有意義なことです。

農地を巡っては「減反政策」など政治と深く関わってきたため、今後の税制改正の動向をさらに注視していく必要がありそうです。