解体工事が終わると、その後に建物滅失登記の手続きをします。この建物滅失登記の手続きを行わないと、固定資産税が正しく課税されなくなってしまいます。
手短にいうと、法務局にある、登記された建物の内容を「建物がなくなりました」と変更する手続きです。土地家屋調査士が代行したり(およそ3~5万円)、自分で申請したりすることもできます。
では、登記されていない建物の場合はどうでしょうか。登録されてないなら何もする必要がないのでしょうか。
今回は、未登記の建物解体工事後の手続きを説明していきます。
建物滅失登記に自分で挑戦してみたい方はこちらをご覧ください。
登記をしていない建物がある?
建物の登記は、新築工事など建物を建てた際に建物表示登記をします。ですから、登記されていない建物なんてあるのか……と思われるかもしれませんが、未登記の建物はそれほど珍しいものでもないようです。
金融機関(銀行・信用金庫・住宅金融支援機構など)から、住宅ローンなどの融資を受ける時には、不動産(土地と建物)を担保にして抵当権設定登記を行いますが、融資を受けない場合、抵当権設定登記を行う必要がありません。ですから、登記をしないままの建物も存在しているのです。
また、現在では金融機関(銀行・信用金庫など)から融資(住宅ローン)を受けるのが一般的ですが、昔は金融機関などでお金を借りることなく、自己資金で建てるのが一般的でした。そのため抵当権設定登記が必要なく、登記をしないことも珍しくありませんでした。
未登記建物と固定資産税の関係
それでは、未登記建物に固定資産税は課税されていないのでしょうか?
……そんなことはありません。長期にわたり未登記状態が続いた建物でも、自治体(市区町村)が調査を行って課税しています。
未登記建物の場合、登記がされていないので所有者は明確にはなっていませんが、所有者と判断した人に自治体(市区町村)が納税通知書を送付し、固定資産税を徴収しています。
そのため、逆に未登録にもかかわらず「納税通知書が来ている」ということから、登記がされていると誤解してしまうこともあります。
『建物の権利証もしくは登記識別情報が見当たらない』『固定資産税の課税通知書に「家屋番号」が記載されていない』などの場合には、未登記建物(家屋)である可能性が高いといえるでしょう。
まずは、解体する建物の登記がされているのかどうかを確認してください。
未登録建物の調べ方
建物が未登記であるかどうかを調べるためには、まず法務局(登記所)で、調べる建物の所在地に関する建物の全部事項証明書請求を行います。そして、全部事項証明書が取れるか取れないかで判断できます。
全部事項証明書とはどのようなもの?
個々の不動産に対して行われた登記手続きの全てが、法務局(登記所)が管理するコンピュータ内に『登記記録』というデータとして保管されています。この登記記録の内容全てを法務局が紙に印刷し発行されるものが『全部事項証明書』です。
『全部事項証明書』は自分が所有する不動産はもちろん第三者が所有する不動産でも、誰もが所定の料金を支払えば入手することができます。
『全部事項証明書』は、法務局が内容が真正であることを証明しているので、公的な手続きによく利用されています。
昔の登記簿謄本に代るものです。
(中略)
・「全部事項証明書」には、抹消された事項を含めて現在効力を持っている登記事項のほかに、今日までに変更された事項が記録されています。
・「全部事項証明書」は、一番正確で詳細な証明書なので、様々な場面で用いられています。
・「全部事項証明書」は「登記事項証明書」の1つです。
・「全部事項証明書」という言葉は、不動産登記だけでなく、戸籍にも使われています。
全部事項証明書が取れれば、『既登記建物(きとうきたてもの)』、全部事項証明書が取れなければ、『未登記建物(みとうきたてもの)』となります。
未登記建物と判断しても、念のために、その建物の権利証や登記済証などがないか金庫の中などを確認してください。「この建物は未登記だ」と思い込んでいるケースも意外とあるようです。
また逆に、未登記であると思った建物が既登記であったというケースは、建物の登記記録の所在が間違っていたために起こることが多いようです。
例えば、建物が建築されてから、土地改良による換地処分や区画整理事業が行われた場合には、それぞれの事業者が建物の登記記録の所在地を変更することになっています。しかし、何らかの行き違いにより変更されていないケースがあります。
そうすると、建物の所在が変更されずに登記がされているので、その建物の登記記録が迷子になってしまい、見つけることが難しくなります。
また、建物の建っている土地が、合筆登記や分筆登記により、地番が変わることがあります。
しかし、建物の所在の地番が変更されずそのままになってしまい、現在の建物が建っている土地の地番で探しても見つからないこともあります。
未登記建物を解体しようとするとどうなる?
未登記建物の解体のケースを見てみましょう。
未登記建物の解体について
お世話になります。
父から相続した土地上に、40年ほど前に建てられた未登記建物があります。その建物は40年ほど前に法人相手に口約束で賃貸し、その従業員が自宅用の建物を建築し住んでおりました。その法人が20年程前に潰れ、建物に住んでいた従業員も行方がわかりません。
その後は賃料も頂いておらず、建物は現在朽ち果てております。崩壊の危険もあるので取り壊したいのですが、弁護士や裁判所に頼むなどの費用を用意だて出来ません。こちらの手で解体しても良いものか、またその段取り等を教えて下さい。
ポイント
(1)建物は未登記(名義人不明)
(2)賃料は20年程頂いておりません。
(3)土地を貸した法人は現在存在しません。
(4)裁判所の取り壊し命令等を受けずに解体できるか
お願い申し上げます。
No.1 ベストアンサー
まあ、弁護士を雇えばお金はかかるけど、弁護士を雇わなければ裁判費用自体はさしたる金額ではないのですけど、ある程度は知識がないと訴訟はやりにくいですよね。
で、その建物にはどのくらい人が住んでいないのでしょうか。
10年、20年住んでいない、建物はとても人が住める状況に無いということなら、本来は違法ですけど、違法を承知で建物を取り壊してしまうという手はあります。
ただリスクはあります。建物所有者が現れて訴えられたら、損害賠償はしなければなりません。とはいえそのような建物の価値は著しく低いでしょうから、建物の現状を写真そのほかで記録に残して、壊してしまえば、損害賠償を求められてもそんなに高額にはならないだろうということはいえます。
気になるのは器物損壊罪なんですけどね。一応器物損壊罪の構成要件は満たしているので、その建物所有者が告訴すると、、、、罪に問われる可能性がないとはいえません。
とはいえ、ご質問のような事情であれば起訴猶予としてもよさそうですが。
法律によらない場合のリスクというのは上記に書いたような話です。
この回答へのお礼
ありがとうございます。
この建物には約20年間は誰も住んでおりません。賃料は21年前に頂いた分が最後のようです。
建物は朽ち果て、平屋建で屋根などは完全に崩落しており、近隣から苦情も出ております。今回取り壊したいと思ったのは、小学校の通学路に面しており、消防の方に何とかしてほしいと言われたからです。
そのような状態の建物なので、損害賠償になっても器物損壊罪でもそれほどの賠償額にはならないと自己判断しております。
私にもう少し財力があれば弁護士や調査士に頼み裁判所の取り壊し公告・命令を出して頂くのですが、正式な手間を省きリスクが多い事も承知の上で、アドバイス通り写真で記録を残しながら建物を取り壊ししたいと思います。
専門的なご意見を頂きありがとうございました。
No.3
情報を開示して貰えるかは解りませんが、役所の資産税課に行って、その建物が固定資産課税登録台帳に載っているかどうかくらいは確認してみてもよろしいのではないでしょうか。
未登記建物の場合、固定資産税の課税名義になっている者を所有者として考える見方もあります。個人情報は出せないかもしれませんが、消防からの要請等の事情を説明すれば、家屋として台帳に記載があるかどうかくらいは教えてくれそうな気もしますけれど。
その土地の固定資産税納税通知書等(土地の地番がわかるもの)を持参して役所に行ってみることをお勧めします。
それで台帳にも記載がない(考えにくいのですが・・)場合には、NO1の方のアドバイスを参考にしつつ、解体することもやむを得ないと考えます。
台帳に記載があれば、可能な限りその課税名義人を探すことですね。いずれにせよ解体したら台帳からも消してもらう必要があります。
この回答へのお礼
ありがとうございます。
本日、市役所の固定資産税課へ行ってまいりました。
担当者に事情を話し台帳を調べていただきました。
公図・土地謄本・住宅地図を持参し、固定資産税課のパソコン内地図で照合して頂きましたが、地番と建物番号が一致しないようで残念ながら現在誰の所有か不明との事です。
担当者の話では、あまり古い建物ですと、地番と建物番号が合わない物件が相当数あるようです。また、20万円以下の評価の可能性もあると言っております。
20年前の最後の借主は大正生まれで、平成元年に転出届けを出していましたが、その方に固定資産税は課されていませんでした。
市役所の方の話では、不一致建物はこれ以上検索が難しいとの事です。
よろしくお願い致します。
まずは、調べられる範囲で対象の未登記建物について徹底的に調べてみましょう。固定資産税が払われているかどうかは、未登記建物を調べる一つの参考になります。
行政窓口に相談しながら、同時にリスク管理という面からも検討してみてください。
未登記の建物解体で申請するときに必要な書類とは?
取り壊す建物が未登記だった場合、家屋滅失届出書という書類を提出しましょう。
提出先は、建物のある自治体ごとに違いますが資産税課や税務課など、税金にかかわる課に問い合わせればわかります。この家屋滅失届出書は、撤去工事を依頼した業者から署名、捺印してもらう箇所があります。
家屋滅失届出書は、自治体のホームページから用紙のダウンロードが出来ますので、直接役所に行って書くよりも、事前にプリントアウトして工事業者に記入してもらってから提出するとスムーズに手続きできます。遠方でも郵送等で対応しているようですので、該当の役所に問い合わせるとよいでしょう。
無事に解体工事を終わらせるために
この家屋滅失届を年末までに手続きして済ませておけば、来年の固定資産税は正しい金額で課税されます。ちょっと面倒に思えるかもしれませんが、ここまで済ませてやっと解体工事が終了します。
家屋滅失届出書ができていない場合、取り壊した建物が「まだ存在している」と認識され、すでに存在しない建物に対して課税されてしまう可能性があります。間違って課税されるリスクを防いでください。
未登記の建物解体についてのまとめ
未登記建物は、自治体が存在を把握できていないケースが数多くあり、特に古い建物(家屋)ではかなりの数があるようです。
このような未登記の建物は、自治体が建物の存在自体を把握していないため、固定資産税が課税されていないことが多いです。
ですが、中には長期にわたり未登記状態が続いた建物でも、自治体(市区町村)が調査を行って課税しているケースもあります。
そのため、固定資産税が課税されていても登記してあるかどうか確認して下さい。
建物が未登記であるかどうかを調べるためには、法務局(登記所)で調べる建物の所在地に関する建物の全部事項証明書請求を行って確認して下さい。
建物が未登記だった場合、家屋滅失届出書という書類を提出しましょう。滅失届出書は、解体工事を依頼した業者から署名、捺印してもらう箇所があります。事前にプリントアウトして解体業者に記入してもらってから役所に行くことをおすすめします。
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