「解体を考えている空き家。もう住んでいない家のために、税金を払いたくない…。
でも家屋を解体してしまうと、土地の固定資産税が6倍になってしまうと聞いた!」
「そもそも固定資産税はどうして、何のために払わなくてはいけないの?」
「固定資産税はどう計算されているの?」
固定資産税に対して疑問や不安を抱えている人は少なくないのではないでしょうか。
固定資産税を節減させるには固定資産税の仕組みについてよく理解する必要があります。
一口に土地の税金と言っても、場所・大きさ・状態など、様々な条件によってその金額は変わってくるのです。
所有している土地の固定資産税について理解し、適切な節税方法を考えましょう!
そもそも固定資産税って何?
そもそも固定資産税とはどのようなもので、なぜ私たちに払う義務があるのでしょうか。
意外とご存知でない方は多いかもしれません。
固定資産税は土地の所有権を持つ人が、1/1時点で各市町村(東京都23区内であれば東京都)に対して支払う義務のある税金です。
なぜ固定資産税を支払わなければならないのかと言うと、市街地が形成されることにより、学校や幼稚園・道路・水道・消防体制などの行政サービスへの需要が増えます。固定資産が受けるそれらのサービスの受益に着目し、固定資産税は課税されているのです。
つまりその土地があることで、ほかの行政サービスが利用されるからということですね。
固定資産税は、土地の固定資産評価額に1.4%をかけた金額で求められます。
固定資産評価額は、土地の種類によって変わってきます。このことを地目といいます。
地目は23種類に分けられます。宅地、畑、田、公園、山林、学校用地など…。固定資産評価による評価額は地目によって全く異なり、例えば同じ大きさの土地でも、地目が違えば金額は大きく変わります。更に、固定資産評価額は各市町村により決定されますので、同じ大きさ・同じ地目の土地でもその土地のある場所によって違うこともあります。
実際に固定資産税を計算してみよう!
では、実際に例を上げ、固定資産税を計算してみましょう。
今回は比べやすいように、土地の大きさ、立地条件等は同一のものとします。
住家の建っている一般住宅用地の場合
家屋の建っている住宅用地には、土地の大きさによって評価額の1/6、もしくは1/3が軽減される特例があります。1戸につき200㎡までの部分を小規模住宅用地、200㎡以上の部分を一般住宅用地と区分され、小規模の場合は1/6、一般の場合は1/3軽減されます。
例えば、敷地の面積が250㎡の住宅の場合だと、200㎡までの部分を小規模住宅用地として、あとの50㎡の部分を一般住宅用地として評価されるわけです。
わかりやすく、今回は土地の大きさを250㎡として計算してみましょう。
※土地の今年度の評価額を26,000,000円、前年度の課税標準額を3,000,000円とします。
なお、固定資産税の計算方法は自治体によって異なる場合があります。
今回は千葉県柏市での計算式を例として計算してみたいと思います。
まずは負担水準率を算出します。
負担水準とは固定資産税評価額と課税標準額を比較してどの水準かを示す指標の事です。
負担水準率が低い場合、税額が急激に高額になってしまう事のないように調整されます。
負担水準率が100%未満になると、課税標準額の計算式に×5%を加えて計算されます。
つづいて、課税標準額を算出し、それをふまえて固定資産税額を求めます。
(それぞれの評価額は、全体の評価額から1㎡あたりの額を求めて計算します)
=土地の200㎡までの部分の評価額×1/6×5%
※負担水準率が100%未満の場合
一般住宅用地の課税標準額
=土地の残りの50㎡の部分評価額×1/3×5%
※負担水準率が100%未満の場合
今年度課税標準額
=前年度課税標準額+(小規模住宅用地の課税標準額+一般住宅用地の課税標準額)
固定資産税の額
=今年度課税標準額×1.4%
実際に計算してみましょう。
=3,000,000÷(26,000,000×1/6)
=69 %
一般住宅用地の負担水準率
=3,000,000÷(26,000,000×1/3)
=34 %
共に100%未満でしたので、計算式に×5%が加わります。
=20,800,000×1/6×5%
= 173,333 円
一般住宅用地の課税標準額
= 5,200,000×1/3×5%
= 86,667 円
今年度課税標準額
=3,000,000+(173,333+86,667)
=3,260,000 円
固定資産税の額
=3,260,000×1,4%
= 45,640 円
(計算式はあくまで一例です)
このように、同じ建築物の建っている土地だったとしても、それが住宅用地か・非住宅用地かによって金額は大幅に変わります。
住家を解体したあとの土地の固定資産税については、後半でご紹介致します。
都市計画税って何?
固定資産税と共に納税する義務がある税金として、都市計画税があります。
都市計画税はどの土地にもかかるものではなく、都市計画法による都市計画区域内にある土地にのみ払う義務があります。
都市計画税は市町村が都市計画事業もしくは土地区画整理事業に要する費用の財源として求める目的税で、わかりやすく言うとその市町村の活性化や、整備のために必要な費用を捻出するために払わなくてはいけないもの、ということです。
土地のある場所が都市計画区域内か否かは各市町村のホームページ等で確認できます。
都市計画税を計算してみよう!
それでは、都市計画税も実際に計算してみましょう。
都市計画税は、固定資産税の課税標準額に税率0.3%をかけて算出します。
なお都市計画税においても住宅用地は負担軽減の特例が適用されますので、小規模住宅用地の場合は評価額が1/3、一般住宅用地の場合は評価額が2/3になります。
住家の建っている一般住宅用地の場合
※ここでは、上記の固定資産税額を算出した条件で計算します。
=今年度評価額×1/3
一般住宅用地の課税標準額
=今年度の評価額×2/3
都市計画税の額
=(小規模住宅用地の課税標準額+一般住宅用地の課税標準額)×0.3%
=20,800,000×1/3
=6,933,333 円
一般住宅用地の課税標準額
= 5,200,000×2/3
=3,466,666 円
都市計画税の額
=(6,933,333+3,466,666)×0.3%
= 31,200 円
都市計画税は固定資産税と一緒に納税するものですので、都市計画区域内にあったこの家屋の固定資産税は上記で算出した固定資産税額にこの都市計画税を足すことになり、土地にかかる固定資産税の合計は76,840円、ということになります。
解体工事後の固定資産税は、むしろ安くなることもある!?
「空き家を解体したいけど、解体すると固定資産税が6倍に上がってしまうと聞いた…」
そう考えて解体工事を後回しにしている方は多いのではないでしょうか。
確かに、空き家を解体すると土地の固定資産税が上がってしまうというのは本当です。
使っていない家を解体したのに、なぜ固定資産税は高くなってしまうのか?本当に6倍にまで跳ね上がってしまうのか?詳しくご説明していたしましょう。
住宅のある土地は特例を受けている
上記の固定資産税の計算方法でお話しましたが、住宅用の土地は固定資産税の負担軽減の特例を受けているのです。具体的に言うと、普通固定資産税の計算は課税標準額×1.4%で算出されますが、住宅用地ではこの課税標準額が安くなるというわけですね。
家屋を解体した宅地の固定資産税額の計算方法
家屋を解体した後の宅地は住宅用地でなくなり、負担軽減特例が適用されなくなります。
※土地の今年度の評価額を26,000,000円、前年度の課税標準額を12,000,000円とします。
まずは負担水準率を算出します。宅地の負担水準率は60%未満、70%未満、70%以上の3つに区分され、負担水準率により計算式は異なります。
=前年度課税標準額÷今年度評価額
=前年度課税標準額+評価額×5%
負担水準率70%未満だった場合の今年度課税標準額
=前年度課税標準額を据え置き
負担水準率70%以上だった場合の今年度課税標準額
=評価額×70%
固定資産税の額
=今年度課税標準額×1.4%
実際に計算してみましょう。
=3,000,000÷26,000,000
=11 %
負担水準率が60%未満だった為、計算式は次のようになります。
今年度課税標準額
=3,000,000+26,000,000×5%
=4,300,000 円
固定資産税の額
=4,300,000×1.4%
= 60,200 円
(計算式はあくまで一例です)
いかがでしょうか。
確かに土地の固定資産税額は以前よりも高くなっていますが、その差はわずか1.3倍です。
住宅を取り壊した際住宅用地の特例、つまり今年度評価額から最大で1/6の負担軽減がなくなるために、「じゃあ今までの固定資産税額の6倍の金額になるということ?」と思われる方が多いかもしれませんが、自治体によっては非住宅用地も負担調整措置がなされ、金額が安くなることもあるのです。
もちろんこれはすべての土地に当てはまるわけではありません。土地のある自治体によってはこのような負担調整措置がされないところもあり、その中にはもともと支払っていた額の6倍の金額を払うことになってしまうこともあるかもしれません。
ですが、例えばこの柏市の計算式に基づいた一例の場合だと土地の固定資産税額は1.3倍におさまった上に、建物を解体したということは建物の固定資産税額はかからなくなりますので、トータルで考えれば今まで支払っていた税額よりも安くなる可能性もあります。
「解体したいけれど固定資産税が高くなってしまうかもしれないから…」と考えている方は、一度自治体のホームページを確認し解体後の税額を計算してみてはいかがでしょう。
特定空き家は解体しなくても高額になってしまう!?
住宅用地の特例は、あくまで人が住んでいる住宅にのみ適用されるものなのです。
その家屋に人が何年も住んでいないと判断されれば、その特例は無効になり、そこに建ったままでも解体したあとと同じだけの額を支払うことになってしまいます。
人が何年も住んでいない市町村から解体を求められる家屋の事を特定空き家といいます。
ご所有の空き家が特定空き家に認定されてしまうと、所有者の意思と関係なく税額を上げられてしまうばかりか、強制的に撤去され、撤去費を請求される可能性もあります。
更地はどう節税したらいいの?
では、家屋を解体した後の土地はどのような節税対策を取ればよいのでしょうか。
まず初めにしてほしいことは、役所の固定資産課税台帳の確認です。
もしもその土地が相続して譲り受けたものであった場合、記載されている内容は昔に申請された情報のままであり、現況とは大きく異なっている可能性もあります。
例えば、登記簿と現況の地積が一致していなかったり、評価額が違っていたり、地目が昔のまま現況とは違っていたり…。なかなかご自身で確認をしないものだからこそ、登記ミスがそのまま放置にされているということは少なくありません。
まずは登記に間違いないか確認し、無駄に支払ってしまった税金などがあれば役所に問い合わせましょう。過去5年間以内のものに関しては還付を受けることもできます。
駐車場・コインパーキングにして活用する
更地だった土地を駐車場やコインパーキングにして活用し、土地の地目を雑種地に変更することで固定資産税を安くすることもできます。新たにそこから利益を得ることもできますし、うまくいけばその利益が支払う税金を上回ることも期待できます。
駐車場・コインパーキングでなくても、資材置場・運動用地などに活用しても地目は「雑種地」となり、固定資産税の評価額は変わります。また、実情がこのように様々なため、評価方法は市町村によって異なり、決まった評価の規定などはありません。
農地に転用する
地目変更にはほかにも方法があり、農地にして活用するという方法もあります。
地目が「農地」の土地は固定資産税がとても安く、今まで万単位で支払っていた固定資産税が何百円単位になるということもあります。
しかし地目を変更できても、その後放置してしまうと地目は変更されてしまいます。
農地に変更したらしっかり農作業を行い完全な農地として活用しなくてはいけません。
農作業により収穫が得られれば、そこで新たに利益を得ることも期待できます。
農地転用について、詳しくはこちらの記事で紹介しています。
まとめ
固定資産税についてよく理解できておらず、登記ミスに気づけないでいたり、必要以上の額を支払ってしまっていたり、空き家を放置した結果固定資産税が上がってしまったり。
知らないままでいると、知らない間に損をしてしまっているかもしれません。
ご自身の所有地の固定資産税の内容(地目・評価額・計算方法等)を理解した上で、適切な節税対策をとりましょう!
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