相続後などに空き家となり、老朽化が進んだ危険家屋。
危険家屋は倒壊やゴミの不法投棄といった問題を引き起こしやすいので、早めに解体撤去したいところです。
もし、危険家屋を解体撤去にあたり、補助金が交付されれば金銭負担を軽減できます。
解体費用は意外にかかるケースが多いので、各自治体が制定する補助制度を活用しましょう。
そこで、今回はどんな危険家屋が補助制度の対象となるのか、具体的な例を交えながら解説します。
もくじ
どんな危険家屋が対象なのか? 解体補助金の概要を確認しよう
補助対象となる危険家屋の判定基準は、各自治体によって異なります。
まずは、一般的な危険家屋の定義を確認したうえで、各自治体が実施する補助金審査の流れについて説明します。
補助対象となる危険家屋とは何なのか?
一口に危険家屋といっても、古くて老朽化が進んでさえいれば補助対象と認められるわけではありません。
補助対象の危険家屋として、各自治体はおおむね以下のような条件を示しています。
- 行政により危険家屋等と判定された(後述する不良度判定)
- おおむね1年以上使用されていない空き家
- 建物の過半が居住用として使用されていた
- 補助金の交付対象となるために、わざと破損等していない
- 借金の担保等になっていない
- 公共事業等の補償対象となっていない
自治体によって、上記をベースに条件が追加または削除されます。
実際に補助金交付を申請する際は、各自治体・補助制度の条件を改めて確認しましょう。
危険家屋の呼び名は決まっていない
ただ、補助金の情報を自治体サイトで探す際には、1つ注意点があります。
それは、危険家屋に対する呼び方が自治体ごとに異なるという点です。
5つの自治体を例に、補助制度の名前を見比べてみましょう。
・老朽空き家解体工事補助金(神奈川県厚木市)
・老朽危険空き家対策補助金(兵庫県姫路市)
・老朽危険家屋解体工事等補助金(奈良県生駒市)
・不良空き家住宅除却費補助制度(北海道旭川市)
危険家屋を表す呼び名は各自治体ごとに異なり、全国で統一されていないと分かります。
名前の違いにより、自治体サイトの補助金情報を見落とさないようにしなければなりません。
補助金情報を探すときは、「危険」「老朽」「不良」「空き家」といった単語を手掛かりにしましょう。
どんな審査基準で補助対象が決まるのか?
危険家屋の解体補助金を交付してもらうためには、自治体による審査に通らなければなりません。
具体的には、先に紹介した建物条件を満たしたうえで申請者と工事に関する審査基準をクリアする必要があります。
一般的な申請者と工事の審査基準については、以下の通りです。
申請者の審査基準
- 個人(法人ではない)
- 空き家の所有者や相続人(共有物件の場合は、共有者全員の同意がある)
- 固定資産税等の市町村税を滞納していない
- 暴力団員や暴力団と密接な関係者ではない
工事の審査基準
- 補助金の交付決定前に着工していない
- 対象物件の全部を解体撤去する
- 他の似たような補助制度の対象ではない
- 解体工事に必要な資格を持った業者に依頼する
- 解体現場がある市町村内の業者に依頼する
- 適正な分別解体、再資源化等を行う(建設リサイクル法を守る)
- 解体工事に暴力団関係者が関与しない
審査基準をクリアできる見通しが立ったら、補助金申請の準備を始めます。
一般的な申請手続きの流れは?
補助金の申請前に、事前相談や事前調査を実施するケースが多いです。
補助金の申請に先立ち、自身が対象条件を満たしていそうかといった確認などを行うのが事前相談です。
事前相談で、行政から補助対象になりそうと判断されたら事前調査を受けます。
事前調査では、建物が補助対象に該当するかが判定されます。
事前相談と事前調査で補助対象となると判断されたら、以下の順に手続きを進めて補助金交付を受けます。
事前相談・事前調査
↓
解体業者に見積依頼
↓
自治体に補助金申請
↓
解体工事
↓
自治体に完了実績報告
↓
自治体に補助金請求
↓
補助金交付
なお、補助金額はおおよそ20万~50万円程度です。
なかには100万円以上を補助する自治体も存在します。
ただし、高額な補助金が設定されるほど、申請者の所得制限や解体跡地の用途制限といった厳しい条件が追加されるケースが見受けられます。
補助制度の実施状況は自治体ごとに異なる
空き家問題の深刻さは地域間で差があり、かつ補助金の原資は各自治体の財政事情に左右されます。
そのため、危険家屋の解体補助金は全国共通の制度ではありません。
自治体ごとに独自に取り組んでいるのが現状です。
よって、補助金の有無だけでなく、補助対象となる家屋や審査基準も自治体によって差があります。
でも、もしあやふやな家屋判定や審査をされて落ちたとしたら、納得できませんよね?
ですから、危険家屋の判定基準に関しては、多くの自治体が点数制による明確な基準を設けて対応しています。
具体的には、事前調査の際に不良度判定が行われます。
どんなところがチェックされる? 危険家屋の判定基準とは
危険家屋にあたるかどうかは、各自治体が実施する不良度判定で判断されます。
事前調査の際に実施されます。
なお、自治体によっては「老朽危険度判定」「老朽危険空き家の判定」といった名前が付けられています。
不良度判定では、一定の基準に基づいて項目ごとに点数を付け、総合点数により判定を行います。
判定基準の内容を具体的に確認してみよう
では、具体的にどうやって危険家屋を判定しているか見てみましょう。
今回は、大阪府門真市の判定基準を例に挙げて説明します。
2.評定項目…調査対象となる部分
3.評定内容…調査部分に問題があると判定される例
4.評点…評定内容の程度(問題の深刻さ)に応じて採点。
危険家屋等の判定基準:評定項目すべての評点合計が100点超の場合
例えば、各評定項目と評点が以下であった場合を考えましょう。
b.基礎が不ぞろいに沈んで建物が斜めに傾いている(評点50)
c.外壁の一部が下地むき出しなっている(評点15)
d.屋根瓦の大部分が落下している(評点25)
e.残りの屋根瓦が落下すると通行人に当たる危険がある(評定25)
f.外観もボロボロで、明らかに街の景観を悪化させている(評点15)
a~fの評点合計は140点です。
よって、上記のケースでは100点を超えているので危険家屋等と判定されます。
すべての自治体が同じ基準で判定しているわけではないため、上記はあくまで一例にすぎません。
評定項目などは自治体によって異なります。
ただし、各市町村の判定基準は、国や県が作成した一定のガイドラインに沿って作成されるのが一般的です。
そのため、各自治体の判定基準は、実は同じような表の構成や評点の計算方法になっています。
参考 門真市危険家屋等除却補助 参考 大阪府放置された空き家等老朽危険家屋に対する対策 参考 国土交通省空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報空き家解体以外の補助金や助成金もよく確認しよう
ここまでは、危険家屋の解体補助金について確認しました。
しかし、空き家ではないといった理由により、危険家屋の解体補助金が受けられない場合があります。
そこで、他の補助・助成制度に関しても、いくつか紹介します。
耐震化助成制度
日本は地震が多いので、建築の際に守るべき耐震基準が強化されてきました。
ですので、旧耐震基準により建てられている古い住宅は、今の基準で考えると一般的に地震に弱い傾向があります。
そこで、大地震に備えるための改修工事などに対して助成金を出しています。
耐震化助成制度の概要
助成対象は、耐震性の低い建物に対して改修・解体工事等を行う方です。
多くの場合、自治体が以下のいくつかを助成対象として設定しています。
・耐震設計
・耐震改修工事
・耐震シェルター等設置工事
・解体工事
助成を受ける場合は、まず耐震診断を受けます。
基本的には、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された旧耐震基準の家屋が対象です。
診断の結果、耐震性が一定の基準以下なら、耐震設計や改修工事等に100万円以下の助成金が出ます。
もし、改修等で解決できない場合は、解体工事に対して20万~50万円の助成金を出す自治体もあります。
ただし、助成対象や助成金額は自治体によって大きく異なるので注意してください。
なお、東京都千代田区では解体工事も含めた耐震化助成制度を実施しています。
記事でまとめてありますので、参考にしてみてください。

ブロック塀撤去の補助金
2018年(平成30年)に発生した大阪北部地震の際、ブロック塀の倒壊により児童を巻き込む事故が発生しました。
倒壊したブロック塀は、現行の建築基準法で求められる基準を満たしていませんでした。
そのため、全国に存在する同様のブロック塀が問題視され、自治体が撤去に対する補助事業を始めたのです。
参考 産経新聞社大阪北部地震のブロック塀倒壊、原因は施工不良 高槻の女児死亡、第三者委答申ブロック塀撤去の補助金の概要
補助対象は、高さや壁の厚さ等が建築基準法の基準に適合しないブロック塀です。(建築基準法施行令 第62条の8)
ただし、補助制度を開始した背景から、「通学路に面する」といった場所に関する条件が付く場合があります。
また、危険家屋の解体補助金などと一緒に使用できない自治体もあります。
補助金額は目安で10万~15万円程度です。
このように、危険家屋の解体補助金のほかにも補助・助成制度が存在します。
なお、建て替えまで検討している場合は、新築に対する補助金が使える可能性があります。
建て替えに関する補助金については、以下の記事で詳細にまとめていますので参考にしてください。

進む法律の整備…危険家屋を放置するデメリットとは
ところで、なぜ国や自治体が危険家屋の解体に対して補助金を出しているのでしょうか?
端的に答えると、空き家問題が地域の土地活用や人口流入を妨げ、各自治体の税収を圧迫しつつあるからです。
現在、国は空家法を、各自治体は空家法に沿った空き家条例を出し、空き家を減らす取り組みをしています。
放置空き家の所有者に対する是正命令、空き家取壊しの行政代執行などが可能になりました。
正式には空家等対策の推進に関する特別措置法といいます。
指定されたら要注意!! 特定空家等とは
空家法では、そのまま放置できないほど酷い状態にある危険家屋を特定空家等と呼んでいます。
特定空家等は、具体的には以下の状態にある放置空き家を指します。
- 倒壊や屋根落下などの危険性が高い
- ゴミによる悪臭や害虫・害獣の発生などにより、衛生上有害となりうる
- 落書きや窓ガラス破損の放置、草木の繁茂などにより、景観を損なっている
- 建物の安全・衛生・防犯面の悪化に伴い、周辺住民の生活環境が深刻になっている
特定空家等は行政から指定されるケースと、行政による不良度判定の結果で指定されるケースがあります。
当然ながら、問題になるのは前者の行政から指定されるケースです。
自治体が近隣住民からの通報等を受けて指定した特定空家等に対しては、「助言・指導⇒勧告⇒命令⇒行政代執行」の順に措置が講じられます。
特に、勧告以降になるとペナルティがあるので要注意です。
・固定資産税や都市計画税の優遇措置から除外される(勧告を受けた場合)
・空き家を取り壊されて解体費用を請求される(行政代執行)
空き家を放置すると、金銭的なペナルティを受けるケースが多いので気を付けましょう。
なお、行政から警告を受けた場合のデメリットや対処方法については、以下の記事にて具体的に解説しています。
よろしければ、ご一読ください。

特定空家等に対しても補助金が交付される場合がある
国や自治体は特定空家等を取り締まる一方で、自主的な解体撤去を決断した方に対しては補助金を交付する場合があります。
以下は、特定空家等を対象とした解体補助金の例です。
栃木県那須塩原市 | 福岡県嘉麻市 |
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自治体公式サイト | 自治体公式サイト |
当サイト内の該当記事 | 当サイト内の該当記事 |
上記の例では、補助制度名のなかに「特定空家等」が入っていてます。
ただ、単に「危険家屋」としか表記されていないケースも多いです。
その場合は、建物条件に「特定空家等に指定された家屋」といった文言があるかどうかで判断できます。
このように、特定空家等へ指定されたら解体補助金が受けられる場合があります。
空家法による勧告や命令を受けると補助対象外に?
しかし、もともと空家法は放置空き家を取り締まるために成立した法律です。
ですから、行政が優しいのは、あくまで特定空家等に指定された当初のみ。
もし、行政の助言・指導に従わず、勧告や命令を受けた場合は補助金も受けられなくなってしまいます。
具体的には、山口県下関市や神奈川県厚木市などが補助金の対象除外条件として明記しています。
山口県下関市 | 神奈川県厚木市 |
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自治体公式サイト | 自治体公式サイト |
当サイト内の該当記事 | 当サイト内の該当記事 |
※神奈川県厚木市の場合は、工事条件の一つに入っています。
補助金が受けられる状況であったのに、対象から除外されたらガッカリしてしまいますよね。
ですから、もし特定空家等に指定されたら、早めに解体撤去などを検討すべきでしょう。
まとめ
補助金の対象となる危険家屋は、自治体によって異なります。
そのため、所有する空き家が建っている地域の自治体公式サイトを確認してみましょう。
また、補助金も当然大切ですが、解体工事にかかる費用そのものを抑えるのも大事です。
当あんしん解体業者認定協会では、優良業者の数社紹介を無料で行っています。
数社による比較により、適正範囲でできるだけ価格を抑えられます。
ぜひ、当協会へご連絡ください。
なお、解体作業者の人件費や解体ゴミの処分費は年々増加しています。
ですから、後回しにするほど空き家の処分は難しくなります。
まずは一歩、自治体や当協会へご相談いただき、解体工事の準備を始めるのがオススメです。

