お家の取り壊しを考えたとき、まず気になるのが「解体費用はどれくらいかかるのか?」ですよね。
今の時代、インターネットで調べれば、解体工事のだいたいの相場や坪単価などはすぐにわかるかもしれません。
しかし、解体費用はお家によって千差万別。お家の構造や大きさ、室内外に残る不用品の量、周辺環境などによって、かかる費用はまったく違うのです。
この記事では、解体工事は何にいくらかかるのか?費用がかさむのはどんなときか?実際の事例を挙げながらリアルな金額をお伝えしていきます。
解体費用は家ごとにまったく違う
まずは解体工事の坪単価の考え方について見ていきましょう。
「坪単価×お家の坪数」で算出できる金額は、実は家屋のみの解体費用の目安です。
解体工事は、家が建っている状態の土地を更地にするまでの工事ですので、室内にある家財道具はもちろん、家屋本体の他にも取り除かなければならないものがたくさんあります。
家屋の他に解体・撤去するもの
- 家財道具
- 庭の草木・庭石
- 物置き
- 門扉・ブロック塀
- 玄関から門扉までの敷石
- カーポートの土間コンクリート
- 地中埋設物(浄化槽や井戸など)
ここへさらに諸経費などが加わり、解体工事費の合計金額が決まります。
さらに、工事費の合計金額に対して消費税がかかるため、総合計金額はもう少し高くなります。
「坪単価×坪数」から算出できる金額が、解体工事にかかるだいたいの費用だと考えていると、実際の工事金額の高さに驚いてしまうかもしれませんね。
解体工事費の内訳を見てみよう
それでは、解体工事には具体的に、何にどれくらいの費用がかかっているのでしょうか?
ここからは実際の見積書をもとに、工事費の内訳を見てみましょう。
木造2階建て住宅 32坪(26.5坪)
解体前のお家
見積書の内容を以下に書き出します。
名称 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 | |
---|---|---|---|---|---|
仮設工事 | 単管パイプ養生シート (掛けバラシ) |
180 | ㎡ | 800 | 144,000 |
重機回送 | 2 | 回 | 25,000 | 50,000 | |
解体工事 | 木造2階建物解体 発生材処分共 |
26.5 | 坪 | 30,000 | 795,000 |
サンルーム解体 発生材処分共 |
2 | 坪 | 27,000 | 54,000 | |
バルコニー撤去処分 | 1 | ヶ所 | 20,000 | ||
土間コンクリート 発生材処分共 |
12 | ㎡ | 2,500 | 30,000 | |
道路面CB、門扉、 カーゲート撤去処分 |
1 | 式 | 30,000 | ||
出精値引き | 1 | 式 | -11,888 | ||
【合計】1,111,112円 |
合計金額1,111,112円×8%=消費税88,888円を含めて、総合計金額は120万円となっています。
それでは、上の事例をもとに解体工事の基本的な項目について詳しく見ていきましょう。
養生費
見積書の一番上に「単管パイプ養生シート」という項目がありますね。工事現場などでよく見かける、建物を囲っているシートが養生シート、シートで囲う枠が単管パイプです。
養生シートを単管パイプで組んでいるので「単管パイプ養生シート」と記載されています。
養生は解体工事中、隣家や辺りに埃や破片が飛び散るのを防ぐために行うもので、建物の解体が進んでいくと、以下の写真のように建物の高さに合わせてシートも下げていきます。
解体工事が進み、養生シートが下げられた状態
養生費は、上の事例のように「1㎡あたり800円」と計算する場合もありますが、「一式いくら」と見積もる場合もあります。
重機回送費
「重機回送」という項目は、工事で使う重機を現場まで運ぶためにかかる費用です。
建物の解体には通常、油圧ショベルなどが使われますが、重機は道を自走できないので、特別な車両に積んで現場まで運びます。
(参照:有限会社妻本商店ホームページ)
重機回送費に含まれる費用も業者ごとに違い、重機運搬用車両のレンタル代や、ガソリン代、重機を所有していない場合は重機のリース代なども含まれます。
現場まで行き、工事が終わったら現場から引き上げるため、重機回送は2回となっています。
坪単価
坪単価で計算できる費用は、上の事例で言うと「木造2階建物解体 発生処分共」という項目です。1坪あたり(坪単価)30,000円となっていますね。
家主の方は登記簿などからお家の大きさを「32坪」とおっしゃっていたようですが、業者さんの測量では、2階部分が1階部分よりも床面積が小さいとして、26.5坪で見積もりが出されています。
また「発生処分共」とは、家屋の解体工事費と工事で出た廃棄物の処分費も込みで計算されているという意味です。
業者さんによっては処分費や廃棄物の運搬費を別途で見積もる場合もあります。参考に、上の事例と同じお家を別の業者さんが見積もった見積書をご覧ください。
別の業者さんの見積もりは、工事費とは別に運搬費・処分費が出されているため、工事費の中にある「木造2階建てスレート葺き住宅解体工」の坪単価は18,000円となっています。先に見た見積書の「木造2階建物解体 発生処分共」の坪単価30,000円よりも安くなっていますね。
付帯工事費
見積書の「木造2階建物解体」以下の、
・バルコニー撤去処分
・土間コンクリート
・道路面CB、門扉、カーゲート撤去処分
という項目は、一括りにするならば、「家屋解体に付帯する工事の費用=付帯工事費」です。
上の事例のお家には、玄関とは反対側にサンルームがあったようです。また「土間コンクリート」とは、例えば玄関ポーチや駐車スペースなど、コンクリート床を総称したものです。「道路面CB」のCBは、コンクリートブロックの略称です。
以上のような付帯工事費が家屋の解体費用の他にかかり、撤去するものが多ければ多いほど費用がかさみます。
その他にかかる付帯工事費や諸経費
その他にも、お家の条件や周辺環境の違いによって、解体費用に大きな差が出てきてしまいます。
付帯工事費がかさみ、解体費用が高くなってしまう例
- 庭木や庭石がある
- 建材にアスベストが含まれている
- 家の前の道が狭い
- 地下埋設物がある
立派な庭木や庭石は、撤去に数十万円かかる場合もあります。(⇒ 事例が載っている記事を見る「お庭の解体費用はどれくらい?庭石・庭木などの撤去費用の目安は?」)
アスベストが含まれている建材は、他の建材に比べて処理費用が割高になります。(⇒ 事例が載っている記事を見る「アスベストの「レベル」とは?アスベストの解体費用はどれくらい?」)
重機が家の近くまで入れないと手作業で解体する必要があり、また、廃棄物をダンプカーまで運ぶなど、手間が増えてしまいます。するとそのぶん工事期間が長くなり、人件費もかかるため、費用が割高になります。
見積もり時には地下の状態がわからず、解体してみたら思わぬ物が出てきて、追加費用がかかる例もあります。(井戸、昔の建物の残骸など)
ここでも1件、事例を見てみましょう。
鉄骨造2階建て建物(31.5坪)
解体前、養生シートがかけられた建物
見積書を見やすく書き出します。
名称 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 | |
---|---|---|---|---|---|
仮設工事 | 単管パイプ養生シート (掛けバラシ) |
200 | ㎡ | 800 | 160,000 |
重機回送 | 2 | 回 | 25,000 | 50,000 | |
解体工事 | 軽量鉄骨2階建物解体 発生材処分共 |
31.5 | 坪 | 34,000 | 1,071,000 |
木造増築部分解体 発生材処分共 |
6 | 坪 | 33,000 | 198,000 | |
電線が低い為 一部手壊し |
1 | 式 | 150,000 | ||
鉄骨バルコニー 撤去処分 |
1 | ヶ所 | 50,000 | ||
樹木伐採、伐根 発生材処分共 |
1 | 式 | 20,000 | ||
庭石、玉石 撤去処分 |
1 | 式 | 80,000 | ||
土間コン、赤レンガ撤去 発生材処分共 |
1 | 式 | 30,000 | ||
残置物撤去処分 | 1 | 式 | 300,000 | ||
諸経費及び現場管理費 | 1 | 式 | 41,000 | ||
【合計】2,150,000円 |
事例2の建物は、小さな診療所を営んでいたようです。
構造が鉄骨造なので、木造の増築部より坪単価が少し高くなっていますね。さらにバルコニーも鉄骨造のため、同じような大きさの事例1のバルコニーよりも、3万円高い見積もりになっています。
さらに、建物内には多くの物が残されていたため、「残置物撤去処分」の費用がなんと30万円もかかっています。別の業者さんの見積書には「トラック8台分」との記載がありました。
また、一般的な木造住宅とは異なり、軽量鉄骨の建物だったので、安全に工事を進めるため、建材を適切に分別・処理するために、現場を管理するスタッフさんが、工事を施工する職人さんとは別に入っていたようです。
「現場管理費」は、以上のようなケースで発生する費用です。
ここでもう一度、現場写真を見てみましょう。
見積書に「電線が低い為一部手壊し」とあるように、建物の2階部分と電線がとても近いですね。
そのため、重機が電線に触れることのないよう、建物の手前部分は手作業で解体しています。
以上のように、解体工事にかかる費用は、お家それぞれの条件や、周辺環境の違いによっても、相場とは大きな差が出てしまうのです。
解体費用を少しでも安く抑えるために
ここからは解体費用をできるだけ安く抑える方法について見ていきましょう。
不用品はなるべく捨てておく
室内に残っているものは、解体業者さんに処分をお願いしてもよいでしょう。
しかし、私たちが家庭ごみとして出せば一般廃棄物として扱われ無料で回収されるものでも、業者さんが処分しようとすると産業廃棄物の扱いになり、処分費はとても高額です。
余分な費用を抑えるためには、室内外にある不用品はできるだけ処分しておくとよいでしょう。
特に処分しておくとよいもの
- 衣類などの布製品
- 本や雑誌などの紙製品
- 食器や花瓶などの陶器類
- 調味料や洗剤など液体が入ったもの
- 家電製品
種類 | 単位 | 単価 |
---|---|---|
木くず | ㎥ | 4,000円 |
紙くず (紙・書類・雑誌) |
㎥ | 5,000円 |
ガラス・陶器くず | ㎥ | 12,000円 |
繊維くず (衣類・布団・ジュータン) |
㎥ | 15,000円 |
(※産業廃棄物処理料金の例。各地域、各処理場で料金は異なります)
また、液体が入ったものは中身を抜かなければ処分できません。業者さんにお願いすると手間がかかる分、人手が必要になるため、費用がかさんでしまいます。
タンスや本棚など、木製の家具や鉄・金属製品などは、業者さんによっては「サービスで処分しておくよ」と、無料または格安で処分してくれる場合もあります。
木材や鉄骨などが大量に発生する家屋の解体では、木製の家具や金属棚の廃材が1~2個分増えたところであまり変わりません。タンスなどが室内に残っている場合は、見積もり時に業者さんに相談してみるとよいでしょう。
補助金制度があるか確認する
家屋を解体する場合、地域によっては補助金制度(助成金)が利用できるかもしれません。
例えば以下のような家を所有する人に対して、補助金を用意している自治体が多く見られます。
- 空き家になってしまっている
- 昭和56年5月31日以前に建てられた家である
(旧耐震基準で建てられている)
(参照:足立区ホームページ「木造住宅・建築物への耐震助成を行っています」より)
ご自身のお家がある地域でも、家屋の解体工事に活用できる補助金・助成金制度があるかもしれません。解体工事をお考えであれば、ぜひ事前に確認してみてくださいね。
2~3社から見積もりを出してもらう
解体工事は、同じ建物でも解体業者ごとに見積り金額はまったく違い、工事費に数十万円の差が出るケースもざらにあります。
1社だけの見積もりでは、もっと安く施工してくれる業者さんがいるのに気づかず、高額な工事費を提示されても、何も疑わずに支払ってしまうのです。
最後にもう1件、実際に数十万円の差が出た事例を見てみましょう。
木造2階建て住宅(28坪)
解体前のお家
ここでは工事の総合計金額を3社で見比べてみましょう。
消費税込の工事費で比べると、約166万円、約155万円、約111万円という見積もり金額が出ていますね。もちろんすべて別の業者さんが見積もっています。
1社目と3社目ではなんと55万円もの差が出ていますね。
以上のような見積もり金額の差は、各業者さんが設定している単価ごとのわずかな差や、それぞれの処分場で違う廃棄物受け入れ金額の単価の差などで出てしまうものです。
さらに、事例3の中でも一番安い見積もりを出している業者さんは、家族経営の小さな会社さんでした。小さな会社でも、人件費やその他の経費を節減するなどの企業努力で、工事費を安く抑えている場合もあります。
以上のように、解体工事をするときは2~3社から見積もりを出してもらい、工事金額を見比べる一手間が非常に重要です。ただし、金額を比べる際は以下の点に注意してくださいね。
- 家屋の坪数に大きな違いはないか
- 付帯工事の項目に漏れはないか
- 消費税込の金額かどうか
また解体業者には、安く見積もっておいて、工事後に高額な追加料金を請求してくる悪質業者も存在します。
解体工事は「壁を壊してみたらアスベスト建材が出てきた」、「基礎を撤去していたら地中埋設物が見つかった」など、追加料金がよく発生するものですが、誠実な業者さんであれば、追加料金についても事前によく説明してくれますし、追加工事が必要になったら、その時点で報告してくれます。
わからない事があれば、見積もりの時でも積極的に質問してみましょう。信頼できる業者さんを見極める判断材料になるかもしれません。
まとめ
解体工事にかかる費用は、それぞれのお家の条件によってまったく違います。
ただ、坪単価で計算すれば家屋分の解体費用の目安はわかるので、まずは心の準備として知っておくと安心かもしれませんね。
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