解体工事の養生は義務?養生シートでわかる解体業者の質

養生シート

解体現場の前を通りかかった時、見かけることの多い養生シート。何気なく目にしているそれが、実は解体工事において重要な役目を担っているって知っていましたか?

実は養生シートは、解体工事で発生する粉塵の飛散、騒音の発生などの被害を最小限に留める、トラブル回避に欠かせない存在なのです。

けれど中には稀に、養生を設置せずにそのまま解体工事を行っている業者も存在します。

「そんなに養生が解体工事において重要なら、養生を設置しないのは違法なんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。

今回は、解体工事における養生シートの重要性と、そこから見える解体業者の質についてご紹介します!

養生シートとは?解体工事における養生の必要性

養生シート

養生シートは解体工事で発生し得るトラブル回避に欠かせない存在と紹介しましたが、普段解体工事になじみのない方々には、その重要性は今一つわからないかもしれません。

まずは解体工事における養生シートの必要性から、詳しく見ていきましょう!

建物の取り壊しによる粉塵飛散を防ぐことができる

建物を取り壊すとき、建材の細かい破片や、屋内に残ったホコリやゴミなどが周囲に飛散してしまうことがあります。

こうした粉塵の飛散は、近隣の方々が屋外に干した洗濯物や、車や自転車、その他屋外に置いておいた所有物を汚してしまいます。

また、現場近くを通りかかって粉塵を吸い込んでしまうことで、体調を崩してしまうようなことも。

粉塵が飛散するような取り壊し作業の際、作業を行う敷地内を養生シートで取り囲むことで、粉塵の飛散を最小限に食い止めることができます。

解体工事中に発生する騒音を抑えることができる

笑顔の子供

解体工事で発生する近隣被害のうち、最も多く報告されているのが工事中の騒音。

重機を動かす音や、取り壊した建物の破片が崩れ落ちる音など、どんなに丁寧に施工していても、騒音の発生を完全に防ぐことはできません。

解体工事で設置されている養生シートの多くは、防音シートと呼ばれる遮音性に優れた素材で作られたシートです。

防音シートは一般的に、ターポリンというポリエステル製の布地に合成フィルムを貼り付けて作られたビニル系の生地で作られていて、遮音性をはじめ、雨などの悪天候にも対応できる耐水性と耐久性、耐光性にも優れています。

養生シートは近隣トラブルを回避できる存在

解体工事において発生するトラブルのうち、最も多く報告されているのが近隣トラブルです。

粉塵飛散・騒音発生被害を抑える役目もありますが、何よりもしっかりと養生を現場に設置していることで「この解体業者は丁寧に施工してくれている」というイメージを近隣の方々に持たれやすく、解体工事に対する不安な気持ちを和らげることが期待できます。

養生シートの種類

養生シートをかけた建物

素人目では、どれも同じように見えてしまう養生シートですが、解体する建物や工事の内容によって、解体業者は様々な種類の養生シートを使い分けます。

養生シートの機能を理解しておけば、どういったところに、どんなものが必要なのかもわかるので、どんな養生が適切か見えてきます。

防音シート

住宅密集地や音の出る工事が多いものは、『防音シート』や『遮音シート』と呼ばれているものを使用します。

名前の通り騒音を軽減するもので、鉄筋コンクリート造の建物を解体工事する際、コンクリートを撤去する作業で出る大きな音を主に軽減してくれます。

防音シートは質量が重くなればなるほど、防音性能は高くなります。そのため、厚みがしっかりして、密度が高いものが防音効果は発揮されます。

密度は一見わかりませんが、防音シートの厚みは、0.5ミリから1ミリが存在します。

防音シートがあるのとないのとでは、騒音の大きさが全然違ってきます。近所の方への迷惑を軽減するためにも、防音効果にこだわったものを利用したいですね。

シート以外にも、様々な種類の物があり、ビルの解体工事の場合は防音パネルというものを使います。パネルなどは、その分密度が高くなるため、より音の大きい工事に対して効果があります。

防火シート

火に強い素材を使用しているのが防火シートです。

解体工事の際、鉄筋や鉄骨など、金属を切断するときに出る火花の飛散を防ぐために使われます。

ものによっては800℃の熱まで耐えられ、万が一着火したとしても燃え広がらないものが多いです。

消防庁の認定防炎ラベルが付いているものもありと、解体工事現場の安全を守るために信頼できるものです。

材質は、ポリエチレンや塩化ビニール、ポリエステル100%など、様々な種類のものが多いです。

養生メッシュシート

風を通すことのできるメッシュ構造のシートを活用することで、一定以上の耐火効果を得ながら、風により足場が倒れてしまう様な事故を防ぎます。

海辺や山など風の強いところに使用します。安全に工事を行っていくためにこのメッシュ養生シートは重宝されます。

ものによっては、防炎機能がないものも存在します。どういった解体工事をする際に、どんな養生メッシュシートを使用するのか聞いてみるといいかもしれませんね。

養生シートの大きさ

養生シートは、単管と呼ばれている鉄のパイプ状のものに取り付けます。

大きさは、1.8m×3.6m(業界では一間二間(いっけんにけん)と言われています。)や1.8m×5.4m(一間三間)が主流で、1枚1,500円程度で買うことができます。

養生シートは、解体工事の中では消耗が激しい備品で、重機や木材でちょっと引っ掻いただけで破れてしまいます。

解体工事を月に10棟の解体工事を行っている業者であれば、月に1~2回は買い換える計算になります。

参考までに延床面積30坪程度の建物では、3面に養生を設置し15枚~20枚程度使用します。

消耗が激しい備品ですが、これをどれくらい丁寧に扱うかによって、解体費用が抑えられるため見積費用の時に他より高額であれば、こういった資材の消耗が激しいということも考えられ、作業員の方の質も見えてくる気がします。

養生シートの設置は解体業者に義務付けられているのか?

建物を壊している様子

解体工事で発生し得るトラブルの対策として、大変重要な存在である養生シート。

となれば、解体工事を施工する際には必ず設置してもらいたいものですが、では、解体工事を行う際に養生を設置しないのは違法行為なのでしょうか?

養生なしの解体工事も、一概に違法であるとは言えない

実は、解体工事を行う際に養生を設置するのは、解体業者の義務ではありません。

例えば、解体工事を行う現場から近隣家屋までの距離が極端に離れている場合、養生シートを設置しなくてもよい場合があります。

粉塵飛散の対策として散水を行うなどしていた場合、養生を設置していないことが一概に違法行為であるとは言えません。

また、騒音防止の面においても、解体工事で発生する騒音が騒音規制法による規制値以下であった場合、防音シートの設置は必ずしもしなくてはならないわけではありません。

一般的に、木造家屋の解体工事の場合、発生する騒音が規制値以上になることは稀であり、近隣の方々から騒音に対するクレームが来たとしても、解体業者を法的手段に訴えることは難しいでしょう。

騒音や振動の対策には指針がある

国土交通省によって定められている指針には、

第14章 構造物とりこわし工
(とりこわし工法の選定)

1.コンクリート構造物を破砕する場合には,工事現場の周辺の環境を十分考慮し,コンクリート圧砕機,ブレーカ,膨脹剤等による工法から,適切な工法を選定しなければならない。

(小 割)
2.とりこわしに際し小割を必要とする場合には,トラックへ積込み運搬可能な程度にブロック化し,騒音,振動の影響の少ない場所で小割する方法を検討しなければならない。なお,積込み作業等は,不必要な騒音,振動を避けて,ていねいに行わなければならない。

(防音シート等)
3.コンクリート構造物をとりこわす作業現場は,騒音対策,安全対策を考慮して必要に応じ防音シート,防音パネル等の設置を検討しなければならない。

引用:建設工事に伴う騒音振動対策技術指針

工事を行う際、解体業者はこの指針に従って適切な対策を取らなくてはなりません。

しかし、こちらは法的に定められたものではありませんので、養生の設置を怠ったからといって違法行為になるとは言えませんが、近隣トラブルへの対策を適切に行わない業者には注意したほうがよいでしょう。

解体業者を見極めるなら!養生シートをチェックしよう

虫眼鏡をのぞいている男性

養生シートを設置している解体業者であったとしても、そのクオリティはピンからキリまで。その解体業者は丁寧に施工してくれる業者か否か。実は、養生シートを確認することで、その業者の質が見えてくるのです。

破けたままの養生シートを使い続けていないか?

破けたままの養生シート

養生シートが破けたまま使い続ける業者は、安全管理が行き届いていない業者と言えるでしょう。

確かに、消耗が激しい備品なので、出来る限り長く使いたいという気持ちはわからなくもないのですが、破損したものを使い続けることで、その機能が低下しているだけでなく、事故につながる可能性があります。

破けた部分に解体した瓦礫や資材が引っかかり、大事故につながる可能性があります。

また、破けてしまっているところから粉塵が漏れて飛散したり、隙間ができることで防音効果が薄れてしまいます。

そのため、周辺の住民の洗濯物が汚れたり、庭先がホコリまみれになったりとクレームに繋がる可能性が高まります。

また、新品の養生シートばかり使っている業者はすぐに破損させてしまうことの裏返しということも考えられます。

そのため、扱いが乱暴だったり、廃材で公共スペースを傷つけてしまう可能性が考えられます。

あまりに新しい養生シートばかり見たら、聞いてみてもいいかもしれませんね。

シートが古くても綺麗に使い続ける業者を選ぼう

養生シートが古くても綺麗に使用し続けてる解体業者は、工事技術がある業者と考えられます。

養生を傷つけずに作業ができるということは、職人の腕がよく重機の扱いにも手馴れているはずです。

汚れは、ホコリや粉塵が外に出るのを防ぐと考えられるため、汚れていて当然なのです。

丁寧な仕事ができる人は、近隣のクレームも少なくなる可能性が高いことと、トラブルが起きたとしてもしっかりと対話ができる人である可能性が高いため、安心した仕事を任せることができます。

会社名の入った養生シートは信頼できる

養生シートは破損したり汚れたりすると交換・破棄しなければならない消耗品ですが、消耗品である養生シートに社名やロゴがプリントされているというのは、それだけ経営が安定している証であるとも取れます。

無地の養生シートよりも、社名やロゴなどがプリントされたオリジナルの養生シートは発注に費用がかかります。

破れたり汚れたりするたびに交換しなければならないものに対して費用をかけるというのは、ギリギリで経営している業者にはできないことです。

社名を大々的に押し出して営業ができるというのは、それだけ経験があり、トラブルが少ない証でもあります。

また、その場を通った人が現場を見るだけでどの業者が施工できるのかわかるというのも、プリント養生シートの利点と言えるでしょう。

養生シートを丁寧に設置しているか?

丁寧な養生シート

養生シートを設置していても、上下違う向きで設置していたり、シートとシートの間に隙間ができていたり、足場とシートのサイズが合っていなかったりといった、ずさんな設置をしていては意味がありません。

養生は、工事現場を通りがかっただけで多くの人の目に留まるものです。

だからこそ優良な業者であればクレームやトラブル回避のために丁寧な設置を心がけるものですが、それほど大切な養生シートをずさんに設置しているとなれば、ほかの作業も丁寧に行っていない可能性がありますから注意が必要です。

解体工事の養生シートについてのまとめ

解体工事における養生シートの重要性は非常に高いものでありながら、解体業者に設置が義務付けられているわけではありません。

しかし、近隣トラブルを防ぐ意味でも、養生シートの設置はなるべくお願いしたいものです。

工事を依頼する前に、その業者はきちんと養生を設置してくれるのか、ずさんな扱い方をしていないかをしっかりと確認しておきましょう。

著者情報

解体無料見積ガイド

解体無料見積ガイド編集部

解体無料見積ガイド編集部は、建物の取り壊しを題材に独自のコンテンツを発信するオウンドメディアを運営しています。2011年の創業以来、10年以上にわたるサービス運営経験の中で培ったノウハウを凝縮し、役立つコンテンツを発信しています。

監修

中野達也

中野達也

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事
解体工事業登録技術管理者
公益社団法人 日本建築家協会(JIA)研究会員
一般社団法人東京都建築士事務所協会 世田谷支部会員

静岡県出身。日本全国の業者1,000社超と提携し、約10年間で数多くの現場に関与。自身でも解体工事業登録技術管理者としての8年間の実務経歴を持つ。現在では専門家として、テレビ番組をはじめとする多数メディアに出演。これまでに一般家屋はもちろん、マンション、ビルなど様々な建物の取り壊しに従事し、工事を行いたい施主、工事を行う業者の双方に精通している。また、大手から中小まで様々な規模の住宅メーカーへの販促支援、コンサルティング事業に携わり、住宅購入者心理の理解を深める。家を「壊す」ことと「作る」ことの専門家として、全国の提携パートナーと共に家をとりまく様々な問題に取り組んでいる。

出演メディア
ひるおび!(TBS系列)、情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)、バイキングmore(フジテレビ系列)、他多数...

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