解体工事では避けられない騒音や振動。
とは言え、工事の依頼主としてはなるべく近隣に迷惑はかけたくないですし、トラブルも起こしたくありませんよね。
ご近所さんとの関係を良好に保つ為にも、工事をスムーズに進めたいところです。
でも一体どの程度の音が「騒音」なのか。
「周りの人がうるさいと思えば騒音?」「法律での細かい決まりはあるの?」
それでは詳しく見ていきましょう。
1解体工事の騒音にまつわる2つの法律
実は工事の騒音に関する法律は環境省が定めています。
実際に騒音での被害が生まれている証拠でもありますね。
今回は大きく分けて2つご紹介します。
騒音規制法
1つ目が「騒音規制法」です。
騒音規制法は、事業活動や建設工事で発生する騒音を規制して、生活環境の保全と国民の健康保護を目的とした法律です。
簡単に言うと、あまりに酷い騒音は取締りの対象になるのです。
内容としては都道府県知事などが地域を指定し、環境大臣が「騒音の大きさ」「作業の時間帯」「日数」「曜日」などの基準を定めています。
詳しくは環境省が定めた基準でお話しします。
3.建設作業騒音の規制
騒音規制法では、くい打機など、建設工事として行われる作業のうち、著しい騒音を発生する作業であって政令で定める作業を規制対象としている。
具体的には、工場騒音と同様に都道府県知事等が規制地域を指定するとともに、環境大臣が騒音の大きさ、作業時間帯、日数、曜日等の基準を定めており、市町村長は規制対象となる特定建設作業に関し、必要に応じて改善勧告等を行う。
引用元:環境省|騒音規制法の概要
振動規制法
2つ目は「振動規制法」です。
振動規制法も同じく、事業活動や建設工事で発生する振動を規制して、生活環境の保全と国民の健康保護を目的としています。
騒音が振動に変わっているだけで取締りの対象や内容はほとんど同じです。
3.建設作業振動の規制
振動規制法では、くい打機など、建設工事として行われる作業のうち、著しい振動を発生する作業であって政令で定める作業を規制対象としている。
具体的には、工場振動と同様に都道府県知事等が規制地域を指定するとともに、総理府令で振動の大きさ、作業時間帯、日数、曜日等の基準を定めており、市町村長は規制対象となる特定建設作業に関し、必要に応じて改善勧告等を行う。
引用元:環境省|騒音規制法の概要
環境省が定めた基準
さて、騒音に関する2つの法律を紹介しましたが、騒音規制法と振動規制法には具体的な基準が明記されていません。
まずは「時間」「日数」「曜日」について環境省が定めた基準をお見せします。
時間帯 午後7時から翌日の午前7時までは作業禁止
作業時間 10時間以上の作業は禁止
作業期間 6日以上連続での作業は禁止
曜日 日曜日、休日は作業禁止
いかがでしたでしょうか。もしも苦情を入れられた際には、上の基準を守っているかを確認しましょう。
そして、肝心の「騒音の大きさ」の基準は
- 騒音の上限は85db(デシベル)
- 振動の上限は75db(デシベル)
となっています。
db(デシベル)とは音の強さや電力の減衰を表す単位の事です。
いまいちピンと来ないですね。例として一般的な目安を紹介します。
db(デシベル) | 生活への影響 | 目安となるもの |
---|---|---|
70db | かなりうるさい | 騒々しい街頭 セミの鳴き声 |
80db | うるさくて我慢できない | 地下鉄の車内 ピアノ(1m以内) |
90db | うるさくて我慢できない | カラオケBOX内 犬の鳴き声(5m以内) |
上の目安を見ると、騒音の上限は地下鉄の車内とカラオケBOXの間くらいの大きさだと分かります。
逆に言えば、地下鉄の車内程度の騒音までなら法律上は問題ないという事です。
とは言え……地下鉄の車内、とてもうるさいですよね。
家の中で聞くとなれば、なおさらうるさく感じるかもしれません。
となれば、法律上は問題なくても苦情が来てしまう可能性はあります。
次の項目では、ご近所とのトラブルを起こさないための方法についてお話しします。
2ご近所とのトラブルを避けるために
さて、法律上どのくらいの騒音が取締りの対象になるのかは分かりました。
しかし同時に、騒音の上限未満の音をうるさく感じても当然とも思ったのではないでしょうか。
そうなると怖いのがご近所からの苦情、クレームですね。
ご近所とのトラブルを回避するにはどうするのが適切か見ていきましょう。
ご近所への挨拶まわり
工事をスムーズに行う為に、ご近所への挨拶回りは必須です。
もっと言うなら解体業者だけでなく、「依頼主本人」が挨拶に行くことが大切です。
解体業者だけに任せてしまう人も多いですが、解体業者だけに行かせると挨拶をする相手にとって失礼にあたる場合があります。
工事前に本人からご近所にきちんと説明をして、協力のお願いをしておくだけでもご近所からの印象は良くなります。
「挨拶した方がいいのかな」と何となく考えている方や「しなきゃいけないのは分かってるけど正しいやり方がわからない」という方へ、3つのポイントに分けてお話しします。
1挨拶をする範囲
明確な決まりはないものの、解体をする家の両隣、向かい3軒、裏の家には最低限挨拶に行きましょう。
さらに運搬車や重機で道路を塞いでしまう事も考え、道路を同じくするご近所さんにも挨拶に行くのがベターです。
そして挨拶の際は、解体業者と一緒に行くのが最適です。
優良な解体業者は近隣への挨拶を欠かさない為、ばらばらに行ってしまうと二度手間になってしまいます。
また、一般的に挨拶に伺うのは工事開始の10日~1週間前が適切です。
2手土産を渡す場合
手土産は必ず用意するものではありませんが、一般的には手ぶらで行くのは失礼にあたる為、なるべく用意するのが良いでしょう。
用意する粗品は500~1000円程度の生活雑貨(タオルや洗剤など)が無難です。
ポイントは相手にとっての「受け取りやすさ」と「実用性」です。
あまりに値が張るとかえって遠慮してしまいますし、生活からかけ離れたものだと、要らないと思われてしまいます。
そして包装についてですが、粗品には「ご挨拶」と書かれたのし紙をつけるのが一般的です。
注意するポイントは「内のし」と「外のし」です。
「内のし」は身内の祝い事をおすそわけする際に使用し、「外のし」はどんな目的で渡すかを分かりやすくする為に使用します。
なので、解体工事の挨拶の場合は「外のし」が一般的です。
挨拶状
手土産とは違い、挨拶状は必須です。
基本的には作業内容が記載された挨拶状を解体業者が用意してくれるので、その場合は自分で用意する必要はありません。
しかし用意してくれない場合もあるので、一例を元に記載するべき内容を確認しましょう。
令和○年○○月○○日
①書面にて失礼致します。この度、近隣にて②○○解体工事を行う事になりました施主の○○と申します。解体工事期間中は騒音や振動等で皆様には多大なご迷惑をおかけするかと存じますが、工事期間中は安全、騒音等に万全の注意を払いますので、何卒ご理解とご協力を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
③施主:○○○○
④解体工事場所:○○市○○町○○番地
⑤解体工事期間:平成○○年○○月○○日~平成○○年○○月○○日
⑥解体工事時間:午前○○時~午後○○時まで
⑦休日:土曜、日曜、祝日
⑧施工業者:○○○○
⑧緊急連絡先:○○-○○-○○
①ご協力のお願いとお詫び(簡潔なもので大丈夫)
②工事の名称(〇〇邸解体工事)
③施主(依頼主の氏名)
④工事場所(解体地の住所)
⑤工事期間(開始日と終了予定日)
⑥工事時間(工事の時間帯)
⑦休日(工事を行わない日)
⑧施工業者(解体業者の会社名・連絡先など)
以上が記載されていれば問題ありません。
また、挨拶に伺った際に留守だった場合は書面だけポストに投函し、後日直接お伺いしましょう。
騒音自体を抑える
いくらご挨拶に伺っても、異常なうるささをご近所さんに我慢させるのは忍びないですね。
もっと根本的に音を抑える事は出来ないのでしょうか。
なるべく周りに迷惑をかけない為に、工事内容を見直すのも手かもしれません。
養生シートの使用、強化
工事を行う際に建物を多い囲むシートを「養生シート」と言います。
「養生シート」はほこりなどの飛散防止や、防音目的で使用されます。
養生シートは一般的には設置するものですが、用意しない業者もある為、見積りの際には良く確認しましょう。
また、従来使用するシートよりも防音性の高いものもあるので、追加で料金は発生しますが状況次第では検討してもいいでしょう。
3苦情が来てしまった時は
どれだけ対策をしていても、人間関係のトラブルですから時として苦情は避けられません。
実際に苦情やクレームが来てしまったらどうすれば良いのでしょうか。
対策と苦情の事例を紹介します。
早急な対応
苦情やクレームの内容に係わらず、まずは早急な対応が必要不可欠です。
近隣との関係を悪くしない為にも、真摯な対応を心がけましょう。
金銭の要求
騒音に関する被害を訴えて慰謝料を請求してくる場合があります。
しかし、基本的に解体工事において慰謝料の支払いが必要になるほど近隣の生活に影響を及ぼす事は考えにくいです。
1でもお話ししたように85dbを超えていなければそもそも違法では無いのです。
例えば、「騒音が持続的に100dbを超えていた」「振動が90dbを超えていた」など明らかに騒音に異常性があり、さらに騒音により心疾患などを引き起こした事が医師に認められて慰謝料の支払いに応じた例はあります。
しかし、工事に違法性がない場合はあくまで正当性を主張してください。
解体業者に説明してもらうなど、話し合いで納得させるのが一番ですが、強硬的に迫られた時は弁護士などの専門家に相談するのも手です。
中断の要求
騒音から工事を中断するように求められる場合もあります。
しかし、工事の中断に踏切ってはいけません。
一度中断の要求を飲んでしまうと、工事の再開には近隣の許可が必要になります。
するといつまで経っても工事が終わらなくなってしまいます。
それだけは避けたいので基本的に、中断の要求を受け入れる必要は無いのです。
だからといって無視をするのも良くありません。
中断の要求が来た場合には、養生シートを強化するなど妥協案を提案し、解体工事への理解を深めてもらいましょう。
4まとめ
解体工事を行う際には、ある程度の騒音は振動は必然です。
そして持ち家の場合、いつかは取り壊さなくてはなりません。ですから騒音も「お互い様」の心持ちでいたいものですが、全員がそうとは限りません。
だからこそ依頼主側は「迷惑をかけている」という意識の元、近隣には真摯に説明し工事の理解を深めてもらう事が大切です。
近隣から苦情が来ないだけでなく、お互いの関係を崩さずに工事を終えられるように、適切な対応を心がけましょう。
今回お話しした情報について、もっと細かく知りたいという方はこちらも合わせてお読みください。