空き家を活用する最も一般的な手段として、解体工事があります。
解体工事を行う事で、土地を売ったり、新築を建てたりと選択肢が増えるのがメリットです。
しかし、解体工事が初めての方は、費用の不透明さに不安を感じる事も多いのです。
今回は、解体費用の内訳をしっかり理解して、自分の空き家の解体費用はどれくらいなのかを判明させましょう。
もくじ
1 解体費用に目安は無い?解体費用の仕組みとは
解体費用って?
解体費用について少し調べると、費用を算出する方法として、「坪単価×坪数」と書かれているメディアが多く見受けられます。
しかし、実際は「坪単価×坪数」で算出される費用では、解体費用の総額としては不十分です。
坪単価は、建物の構造や地域によって異なります。
ちなみに、坪単価の地域・構造別の平均目安は、以下の表の通りです。
地域/構造 | 木造 | 鉄骨造 | 鉄筋造 |
---|---|---|---|
福岡県 | 2.5万円 | 3.7万円 | 5.2万円 |
群馬県 | 2.6万円 | 2.6万円 | 5.3万円 |
栃木県 | 2.7万円 | 2.7万円 | 5.4万円 |
大阪府 | 2.8万円 | 3.1万円 | 4.9万円 |
千葉県 | 3.1万円 | 3.7万円 | 6.3万円 |
東京都 | 3.8万円 | 4.8万円 | 6.8万円 |
基本的に坪単価の相場は、壊しにくかったり、都市部に近いほど高くなります。
また、木造2階建ての解体工事の場合、一般的な目安は120~150万円だと言われます。
しかし、厳密に言うと、解体費用に相場・目安は存在しません。
基本的な本体工事費に加え、家の状態によって様々な費用が加わるからです。
例えば、同じ地域で同じ規模の建物を解体したとしても、他の条件が違えば解体費用の総額は異なります。
つまり、解体工事は一件ごとに費用が大きく異なるのです。
いきなり衝撃の事実ですが、解体費用は概算することが出来ません。
そのため、大切なのは「解体費用の仕組みを理解すること」です。
先程、一般的な解体費用の目安は120~150万円だとお伝えしましたが、目安を元に費用の総額だけを見て、高い・安いと決めつけるのは大変危険です。
まずは、解体工事ではどんな作業に費用がかかるのか、一緒に見ていきましょう。
何に費用がかかる?解体費用の内訳とは
それでは、解体費用の内訳をひとつずつ見ていきましょう。
本体工事費
本体工事費は、解体工事費の大半を占める費用です。
全体の大半を占め、多くは「坪単価」に床面積を掛けることで目安を算出できます。
厳密に言うと、坪単価で算出できる部分は「本体工事費」なのです。
本体工事は、あくまでメインの建物本体を取り壊す工事を指します。
解体工事では他にも取り壊すものがあったり、取り壊す以外の作業もあるので、総額は算出できません。
また、解体業者によっては処分費が含まれずに記載される場合があるので、本体工事費が極端に安い場合は注意してください。
付帯工事費
付帯工事費は、壊す建物の状況によって大きく変動する費用です。
オーソドックスな物としては、「井戸・浄化槽・ブロック塀・倉庫・物置」などが挙げられます。
付帯工事費は、当然、壊すものが多ければ多いほど高くなります。
逆に、壊すものが殆ど無ければ費用はそれほどかかりません。
解体費用の目安が存在しない理由のひとつでもあります。
養生費
養生費は、近隣への被害を抑える為に必要な費用です。
養生シートとは、騒音や粉塵を抑える為に、建物の周囲を覆うシートの事です。
養生の単価は解体業者によっても違いますが、一般的な目安は1㎡あたり500円~1200円程度です。
残置物処分費
残置物処分費は、工夫次第で減らす事も出来る費用です。
家具や家電などが多く、瓦礫などの産業廃棄物と一緒に処分出来ないのが特徴です。
残置物は、解体業者に処分を依頼する場合は別途費用がかかってしまいます。
しかし、残置物は自分で処分することも出来ます。
自分で処分を行った場合は、費用を抑える事も出来るのでおすすめの方法です。
詳しい処分方法は2 残置物を自分で処理するでお話しします。
重機回送費
重機回送費は、機材を効率良く運ぶための費用です。
しかし、重機は公道を走れないので、重機を運ぶ回送車を手配する必要があります。
回送車の手配費用が、重機回送費です。
重機回送費は、全体の中では少ない費用なので、「諸費用」としてまとめられる事もあります。
一般的な目安は3~5万円程度です。
整地費
整地費は、解体工事後に土地の価値を左右する大事な作業にかかる費用です。
整地にかかる費用が整地費です。
整地費は、解体業者によって異なります。
また、石ひとつ落ちてない丁寧な整地もあれば、大きなガラ(廃材)を残すような整地もあり、整地内容もさまざまです。
とは言え、綺麗に整地が行われないと、不動産としての価値が下がったり、新築工事の着工が遅れる原因にもなるので、多少値が張っても丁寧な業者にお願いするのがベストです。
諸費用
諸費用は、その他にかかる様々な費用です。
細かく内訳を記載する場合もありますが、諸経費〇〇円のように記載する場合もあります。
主に発生する諸費用は以下の通りです。
主な諸費用 | |
---|---|
挨拶費 | 通常、工事前には近隣に挨拶に伺います。挨拶時に渡す粗品代です。 |
届け出・手続き費 | 解体工事の際には、廃棄物に関する届け出を役所に提出します。また、道路を占有してしまう場合も同様に届け出が必要です。基本的には、手続きは解体業者が代行してくれます。 |
保険費 | 解体業者によっては、もしもの事故に備えて「工事賠償保険」に入る場合もあります。 |
準備費 | トラブルや追加費用に備えて、前もって余分に費用を算出している場合もあります。ただし、使用しなかった費用が返金されます。 |
見積書を読む前に
さて、解体費用の大まかな分類をご紹介してきました。
続いては、実際の見積書を読んで費用を確認していきますが、ひとつ共有しておきたい認識があります。
そのため、実際の見積書の記載は、先程確認した名称と異なる場合もあります。
見積書の記載方法はバラバラなので、項目の名称だけを覚えておくと混乱の原因になります。
大切なのは、各項目の内容を理解して、見積書での対応箇所を見つけられるようになることです。
例えば、ブロック塀を壊しても、樹木を伐採しても「付帯工事費」に分類されます。
なので、「付帯工事費」の名称を覚えるより「メインの建物以外で行う全ての解体」と理解するのがベストです。
2 実際の見積書を確認!リアルな数字を見てみよう
さて、それでは実際の見積書を元に、リアルな数字を見ていきましょう。
今回は、木造と鉄筋造の場合の解体費用を見ていきます。
木造2階建ての場合
※見積書例1 埼玉県 木造2階建て 36.25坪
それでは、色分けされた枠ごとに紹介していきます。

※抜粋 本体工事費
「建屋解体工事」は、本体工事費に該当します。
今回は坪単価27,000円、床面積36.25坪の建物を取壊したので、978,750円となっています。
費用総額の約40%を占める、莫大な費用です。

※抜粋 付帯工事費
「物置小屋撤去処分」「屋根瓦(日本瓦)」「CB塀撤去処分」「ソーラーパネル撤去処分」「土間コン撤去処分」「樹木/雑草撤去処分」は付帯工事費に該当します。
今回は、メインの建物以外に壊す物が多いので、総額は563,750円と高額になっています。

※抜粋 養生費
「シート養生」は養生費に該当します。
今回は、1㎡あたり800円の養生を320㎡行っているので、256,000円の費用がかかっています。
少し高いと思うかもしれませんが、養生シートを貼らないと、ほぼ確実に近隣からのクレーム対象になってしまいます。
近隣の方々に迷惑をかけない為に、怠ってはいけない費用です。

※抜粋 廃棄物処分費
「残置物撤去処分(室内)」は廃棄物処分費に該当します。
費用が0円になっているのは、工事前に残置物の量を計測していないからです。
そのため、「確認後別途」と記載されています。
今回の場合は、残置物の量が確定してから、支払う事になります。

「場内整地工事」は整地費に該当します。
今回は、1㎡あたり800円の整地を200㎡行っているので、160,000円かかっています。

※抜粋 重機回送費
「重機回送費」はそのまま重機回送費に該当します。
今回は、1回25,000円の回送車を2回使用しているので、50,000円です。

※抜粋 諸費用
「近隣挨拶」「リサイクル法の届け出」「諸費用」は「諸費用」に該当します。
今回は合計で240,000円です
鉄筋コンクリート造2階建ての場合
※※見積書例2 愛知県 鉄筋2階建て 43坪
続いて、鉄筋コンクリート造(RC造)の解体費用を見ていきましょう。
同じように、色分けされた枠ごとにご紹介します。

※抜粋 本体工事費
「RC2階建物解体工事」は本体工事費に該当します。
今回は坪単価40,000円、43坪の建物を取り壊したので、1,720,000円の本体工事費です。
鉄筋は、木造に比べて非常に壊しにくいので、大きな金額差が生じていますね。

※抜粋 付帯工事費
少し多くなってしまいましたが、青枠内は付帯工事費に該当します。
先程にもあったブロック塀や、物置などは分かりやすいですね。
ただし、「隣接建物切離し費用」は先程と少し毛色が異なります。
「隣家建物切離し」とは、取り壊す建物と隣家の距離が近すぎる、または屋根が繋がっている場合に一旦切離す作業です。
もちろん、工事後には修復しますので、その際も別途費用がかかります。(建物切離し後修復工事費用)
そして、今回の付帯工事費の総額は1,055,600円です。

※抜粋 養生費
「飛散防止養生シート設置工事」は養生費に該当します。
今回は、1㎡1,200㎡の養生を150㎡行っているので、180,000円の養生費です。

※抜粋 諸費用
「諸経費」は諸費用に該当します。
今回は「重機回送費」「賠償責任保険費用」「道路使用許可申請費用」に使用されたと記載されており、総額は65,000円です。
3 解体費用を抑える方法4選
さて、解体費用の実際の費用例を見てきました。
おそらく、「壊すだけなのに高すぎる」と感じた方もいるかもしれません。
ですが、解体費用は、個人の工夫で抑える事が出来ます。
続いては、少しでも解体費用を抑える為に私達に出来ることを一緒に見ていきましょう。
1 中間マージンを発生させない
解体工事では、中間マージンを発生させない事で、解体費用を抑えられます。
基本的に中間マージンは、解体業者以外に解体工事を依頼した時に発生します。
なぜなら、ハウスメーカーなどは自社で解体工事を行っている訳ではないので、工事自体は解体業者に発注する形になるからです。
仲介業者として一般的なのは、「ハウスメーカー・工務店・不動産業者・建築事務所」などです。
解体工事に詳しくないと、「大手の方が安心」「建築の時にお世話になったから」と上記のような仲介業者を選びがちです。
ですが、直接解体業者に依頼する事で中間マージンをカットし、解体費用を抑えられるのです。
ちなみに、解体工事の中間マージンの相場は総額の20~40%と言われています。
つまり、解体費用の総額が150万円の場合、実に30~60万円の中間マージンが発生します。
かなりの高額費用ですね。
大切な事は、仲介業者を通さずに、解体業者に直接依頼することなのです。
なお、当協会の運営する「解体無料見積りガイド」では、中間マージンは一切かからずに、解体工事の見積りが出来ます。
見積書の内容にご納得いただければ、そのまま直接ご依頼が出来ますので、中間マージンはかかりません。
お見積書の金額が納得行かない場合などは、解体業者へのキャンセル連絡も代行しておりますので、お気軽にご連絡ください。
2 補助金・助成金制度を利用する
解体工事を行う際、自治体によっては補助金や助成金が出ることがあります。
全国の空き家問題を改善するために、自治体が補助金・助成金制度を定めているためです。
支給金額や支給条件は、各自治体によって異なりますが、地域によっては100万円以上負担してくれる場合もあります。
以下の表は、全国各地の補助金・助成金制度をまとめたものです。
地域を選択するとサイト内の詳しい記事が読めますので、参考にしてみてください。
3 残置物を自分で処理する
先程少し触れましたが、残置物の処分を解体業者に依頼すると、別途費用がかかります。
なぜなら、解体業者は残置物を処分出来ないからです。
残置物は瓦礫などの産業廃棄物とは違い、一般廃棄物として扱われるので、処分は別の業者に発注するのです。
例えば、電化製品はリサイクルに出したり、一般ごみはゴミの日に回収して貰ったりと、決して難しい作業ではありません。
詳しい処分方法は下記の記事を参考にしてみてください。
また、事前調査をしてもらい、およその量を見積もってもらうのも有効です。
事前に概算が出来るので、突発的な費用は防げます。

4 相見積りを欠かさない
解体費用を抑える為には、相見積もりが欠かせません。
解体業者によって、見積書の書き方も金額の出し方も異なるため、複数の見積書を比較する事が重要なのです。
つまるところ、実際の解体費用を知る為には見積書を出してもらう必要があります。
そして、複数の見積書の中から一番自分に合った条件で契約をする事が重要なのです。
ちなみに、当協会が運営する「解体無料見積りガイド」では、全国から厳しい審査基準をクリアした優良業者の中から、3社一括見積りが取れます。
依頼主様にとって、より良い条件での契約が可能ですので、是非ご連絡ください。
4 まとめ
解体工事は、一件一件状況が異なるため、目安を算出するのは至難の業です。
なので、解体費用が知りたいと思ったら、まずは複数の解体業者に見積りを出してもらいましょう。
その他にも、解体工事について不明な点などがありましたら、お気軽にご相談ください。
依頼主様が解体工事を円滑に進める為に、お力添えさせていただきます。