ここ数年、関東で地震が起こる可能性が高まり、そのため都内では様々な対策が進められてきました。東京都杉並区でも重要な避難路・輸送路が緊急時に確保できるよう、主な道路(特定緊急輸送道路)脇に建つ古い建物の耐震化助成制度を設け、そのなかで解体・建替え助成金を出しています。解体や建替え費用は高額ですから、ぜひ助成金を利用しましょう。
もくじ
解体・建替え助成金の制度概要
最初に、解体・建替え助成金の制度概要(助成の対象条件、助成金額)について整理します。
※耐震化助成制度には、現在補強設計・耐震改修・解体(除却)のみ・建替えがありますが、今回は解体・建替え助成金を中心に見ていきます。
対象物件
次の条件すべてに当てはまる建物
- 敷地が特定緊急輸送道路に接している
- 1981年(昭和56年)6月1日施行の耐震基準改正前の建築
- 道路横幅のおおむね半分以上の高さ
- 杉並区の助成を受けた精密診断で耐震性の不足が明らか
- 建築基準法等の法令に違反していない
条件1にある特定緊急輸送道路とは、下図の道路のことです。
引用元:杉並区公式ホームページ
・青梅街道
・井の頭通り
・甲州街道
・環状七号線
・環状八号線
・首都高速四号線
条件2に当てはまる場合、元々耐震性が低いと考えられます。
条件3は、建物が倒壊した場合に全面道路(特定緊急輸送道路)をふさいでしまうかをチェックしています。
詳しくは、下図を参考にしてください。
引用元:杉並区公式ホームページ
対象者
対象物件の所有者が助成対象者です。
ただし、住民税に滞納があると申請できません。
助成金額
助成対象費用×1/3
(5,000㎡超えの部分は1/6)
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〇助成対象費用
次のA・Bのうち、低い方の額
A.実際に工事にかかる額
B.延べ面積(㎡)※1に以下をかけた額
・下記以外:50,300円
・マンション※2:49,300円
・住宅※3:33,500円
※1 建替えの場合は、解体物件の床面積で計算
※2 1,000㎡以上かつ3階以上の共同住宅
※3 一戸建ての住宅、長屋、1,000㎡未満または3階未満の共同住宅
計算式は複雑ですので、助成金額=工事費用×1/3以内を目安にしましょう。
解体・建替え助成金の手続き方法
次に、解体・建替え助成金の手続き方法についてまとめます。
↓
☆確認申請
↓
確認通知
↓
☆解体or建替え工事
↓
☆完了報告
↓
☆交付申請
↓
交付の決定通知
↓
☆交付請求
↓
助成金の交付
「☆」を付けた部分が、申請者側で手続きが必要なところです。
それでは、流れに沿って見ていきましょう。
事前準備
まず、杉並区役所に事前相談が必要です。
自身が助成対象として認められそうか、そもそも受付期間中か等を確認しておきましょう。
事前相談後は、杉並区役所との事前協議、工事業者へ見積書の作成依頼をします。
事前協議にあたっては、以下の書類を持参してください。
・既存建物の法適合性にかかる報告書
※報告書は事前に建築士に作成してもらいます。
書類データは杉並区公式ホームページから取得可能。
・報告内容が分かる図面(案内図・配置図・各階平面図・断面図・立面図等)
現地調査が行われたあと審査があり、杉並区から結果を報告されます。
また、見積書は、建設業者・解体業者に依頼します。
ただし、解体工事については相場が存在しないため、その分悪徳業者が多い状況です。
不当な追加請求だけでなく、不法投棄や手抜き工事で見積もり価格を抑えるケースがあり、その場合は近隣トラブルにつながる可能性があるので要注意です。
そのため、あんしん解体業者認定協会では無料のサービスで優良業者の3社紹介を行い、適正範囲内で低価格かつ高品質な工事ができるようにサポートしています。ぜひご連絡ください。
※工事が複数年度にまたがる場合は、確認申請前に以下の書類を杉並区役所へ提出してください。
・全体設計の承認申請書(第1号様式)
※確認申請時の「その他の必要書類」をあわせて提出
確認申請
事前準備が整い次第、確認申請を行いましょう。
以下の書類を杉並区役所に出します。
・確認申請書(第3号様式)
・建築年月日、延べ面積を確認できる書類(台帳記載事項証明、建築確認通知書、検査済証等)
・図面(案内図、配置図、平面図、断面図、立面図、面積表等)
・住民税or法人住民税の納税証明書(区分所有は不要)
※申請時直前の納期限の年度分
・委任状(申請手続きを第三者に委任する場合)
・業務計画書(業務の概要等が分かる書類)
・工程表
・消費税仕入税額控除確認書
・所有権を証明する書類(A~Cのどれか1点。所有者が複数の場合は全員分。区分所有の場合は不要)
A.登記事項証明書(登記簿謄本)
B.登記事項要約書(登記簿抄本)
C.固定資産税納税通知書・課税明細書
・法人登記簿全部事項証明(法人所有の場合)
・耐震診断確認書or評定書の写し、耐震診断結果概要書の写し
・既存建物の確認通知書、検査済証の写し等
・工程表
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【区分所有の場合に追加】※管理組合があり理事長がいること
・総会の議事録(耐震診断等を受けることを決議した議事録)の写し
※原則、耐震改修工事の決議は3/4以上の特別多数決議が必要
・管理組合理事長が選任された際の議事録、管理規約の写し
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【建替えの場合に追加】
・工事設計図書(解体+新築工事)
・工事見積書・内訳書(解体費+新築工事費)
・耐震改修計画図
・既存建物の耐震改修相当見積書
・業務計画書
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【解体のみの場合に追加】
・既存建物の設計図書
・解体見積書・内訳書
・既存建物の耐震改修相当見積書・内訳書、図面
確認申請に必要な書類は多めなので、一つずつチェックしてください。
確認申請を済ませると、審査を経て確認通知書が発行されます。
解体or建替え工事
確認通知書が届いたら、工事業者と契約を結んで着工してもらいます。(助成を受けられなくなるため、必ず順序は守りましょう)
同時に以下の書類を提出します。
・着手届(第6号様式)
・契約書の写しor注文書の写しと請書の写し(契約金額・契約年月日の記載付き)
・工程表(契約締結時のもの。各段階の期間等を記載)
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【建替えの場合に追加】
・確認済証
また、工事内容に変更がある場合等には変更届出書(第7号様式)等の提出が必要です。
ちなみに、完了報告時に着工前・中・完了が分かる写真が求められます。あらかじめ工事業者に撮影を依頼しておきましょう。
※建替えの場合は、中間検査があります。
完了報告
工事が終了したら、完了報告をします。
以下の書類を出してください。
・完了届&検査願(第10号様式)
・耐震改修等実施報告書(都の報告)+一緒に提出する資料
・着工前・中・完了が分かる写真(紙製ファイルにとじる)
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【建替えの場合に追加】
・検査済証
耐震改修等実施報告書については、以下からダウンロードしてください。
交付申請
完了報告が終わったら交付申請が可能です。
以下の書類を出してください。
・交付申請書(第12号様式)
・請求書&口座振替依頼書(第16号様式)
※委任払い制度を利用する場合は「委任払い用」を利用します。
【通常払いの場合】
・助成にかかる費用分の領収書の写し
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【委任払い制度を利用する場合】
・助成に掛かる費用分の請求書の写し
・助成に掛かる費用のうち、所有者負担分の領収書の写し(助成金額をオーバーする場合)
最終的に申請者が工事業者に支払う金額自体は変わりませんが、申請者が事前に用意する資金が少なくて済むようになります。
もし、制度を利用する場合には、事前に工事業者と杉並区に相談しましょう。
委任払い制度を利用する場合は、提出書類が変わります。
交付申請が書類審査を通ると、交付の決定通知書が発行されます。届いたら交付請求をしましょう。後日指定の口座に助成金が振り込まれます。
解体・建替え助成金の手続き方法に関しては以上です。
疑問点・不明点等は杉並区役所に問い合わせてください。
都市整備部 市街地整備課 耐震改修担当
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所在地:〒166-8570 東京都杉並区阿佐谷南1丁目15番1号
電話:03-3312-2111(代表)
FAX:03-3312-2907
解体・建替え助成金に関する情報取得
最後に、解体・建替え助成金に関する情報取得についてお話しします。
助成金のことを調べる場合、杉並区公式ホームページをご覧になる方は多いと思います。
ただ、サイト規模が非常に大きいので、目的ページにたどり着くのは意外と大変です。
そこで、解体・建替え助成金に関するページの行き方と内容を説明します。
解体・建替え助成金に関するページへの行き方
まず、検索サイト(Google等)を利用して「杉並区」を調べ、検索の結果一覧から「杉並区公式ホームページ」を選択します。
これで杉並区公式ホームページに入れました。
そのまま続けて、「くらしのガイド」⇒「住まい」⇒「耐震化支援事業」⇒(建物の耐震化に関する助成制度-特定緊急輸送道路~)「特定緊急輸送道路~助成制度」の順に選択していきます。
すると次のページが表示されます。
引用元:杉並区公式ホームページ
この「特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に関する助成制度」というタイトルのページ内に、解体・建替え助成金に関する情報があります。
解体・建替え助成金に関するページの内容
解体・建替え助成金に関するページには、パンフレット(制度概要)や申請書類の一覧・ダウンロードがあります。
パンフレットでは、制度内容を図表入りで見ることができます。
文字ばかりでは理解するのに限界があるので、ぜひ申請前に一度目を通しておきましょう。
申請書類の一覧・ダウンロードでは、手続きの段階ごとに必要な書類をチェックできます。また、ダウンロードして申請書類を印刷すると、ご自宅で記入・作成することも可能なので、うまく活用してください。
まとめ
今回は、東京都杉並区の解体・建替え助成金についてまとめました。
建設業界は人件費とゴミ処理費が上がり続けているため、結果的に工事依頼者の負担は増える一方です。ですから、早急な地震対策に加えて、コスト面でも早く工事を始めた方がよいと言えます。
まずは、杉並区役所に事前相談をしてみましょう。
杉並区公式ホームページ:特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に関する助成制度
解体工事にはお金と時間がかかります。しかし、正確な情報をもとに計画的に進められれば、補助金・助成金も使えて費用をかなり抑えられます。さらに、私たちあんしん解体業者認定協会では、信頼できる解体業者の紹介と正しい情報の発信等しています。迷ったら、ぜひお気軽にお問い合わせください。