ここ数年地震への不安が高まっていますが、都内ではいざというときに備えて様々な対策が練られています。東京都中野区でも緊急時に重要な避難路・輸送路を確保するため、主要な道路(特定緊急輸送道路)脇にある建物の耐震化助成制度を設けています。制度には解体・建替え助成金も用意されているので、古い建物の解体や建替え時にぜひ利用しましょう。
もくじ
解体・建替え助成金の制度概要
最初に、解体・建替え助成金の制度概要(助成の対象条件、助成金額)について整理します。
※耐震化助成制度には、現在補強設計・耐震改修・解体(除却)のみ・建替えに対する各助成金がありますが、この記事では解体・建替え助成金を中心に確認します。
対象物件
次の条件すべてに当てはまる建物
- 1981年(昭和56年)5月31日以前の建築着工
- 敷地が特定緊急輸送道路に接している
- 建物の各部分の高さが、それぞれの部分から前面道路の境界線までの水平距離に、前面道路の横幅の半分に相当する距離(前面道路の幅員が12m以下の場合には6m)を加えたものを超える
- 他の補助金等を受けていない
- その他、各事業の助成要件に該当するもの
条件1は、「古い耐震基準での建築か?」のチェックです。当てはまる場合は、地震に弱い可能性がグンと上がります。
条件2の特定緊急輸送道路とは、下図の赤の道路のことです。
・新青梅街道
・環状七号線
・青梅街道
・早稲田通りの一部
・首都高速中央環状線の一部
※ちなみに、青の道路(緊急輸送道路)脇の建物は本助成制度の対象外ですが、別の助成制度が色々あります。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
中野区公式ホームページ:建築物の耐震対策
条件3は、文章では分かりにくいので下図を参考にしてください。
下図のような高さがある(倒壊したら道路をふさぐ)建物が対象です。
引用元:中野区公式ホームページ-特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を支援します
条件5については、かなり細かい要件を含みます。
詳しくは、中野区役所へ事前相談したときに確認するのがオススメです。
・道路に面した塀を設置する場合、高さ40cm以上の部分をフェンスにする
・耐震性が非常に低く危険、または老朽化が進んでいて放置しつづけると危険となる
対象者
次の条件すべてに当てはまる方
- 次のうちの、どれか
・対象物件の所有者
・管理組合の代表者or区分所有者の合意により選出された代表者(分譲マンションの場合)
・共同所有者の合意により選出された代表者(共同で所有する建築物の場合) - 住民税等(法人の場合は法人住民税等)を滞納していない
- 対象物件の固定資産税を滞納していない
税金を滞納している場合、助成が受けられません。
助成金額
(5,000㎡越えの部分は1/6)
※千円未満切り捨て
助成対象経費の考え方は、下図の通り非常に複雑です。基本的には解体or建替えにかかる費用と考えましょう。
解体・建替え助成金の手続き方法
次に、解体・建替え助成金の手続き方法(手続きの流れ、用意するもの等)についてまとめます。
↓
☆交付申請
↓
交付の決定通知
↓
☆解体or建替え工事
↓
☆完了報告
↓
助成金交付の決定通知
↓
☆交付請求
↓
助成金の交付
「☆」を付けた部分が、申請者側で手続きが必要なところです。
それでは、流れに沿って確認していきましょう。
事前準備
まず、中野区役所へ事前相談、耐震診断の受診、見積書の入手が必要です。
事前相談では、助成対象と認められる見込みの確認や疑問点・不明点の解決のために行います。窓口は中野区役所の9階8番窓口(都市基盤部 建築課 耐震化促進係)です。
あわせて耐震診断についても確認し、後日受診しましょう。
見積書は解体業者や建設業者に依頼します。解体工事or建替え工事分に加えて耐震改修工事分(費用が分かる書類)も必要ですので、注意してください。
ちなみに、解体業界はいまだに悪徳業者による不正(不法投棄・手抜き工事・不当な追加請求)が絶えません。そのため、あんしん解体業者認定協会では無料サービスとして優良業者の3社紹介を行い、適正範囲内で価格を抑え、かつ高品質な解体工事が受けられるようにサポートしています。ぜひご連絡ください。(建替え工事の場合は、解体費用について高く見積もられる傾向が強いので、分離発注がオススメ)
※工事が複数年度にまたがる場合は、交付申請前に以下の書類を中野区役所へ提出してください。
・全体設計の承認申請書(第1号様式)
・全体設計表(第1号様式の1)
・事業内容等の確認書(別添様式)
・工程表(年度ごとの出来高が分かるもの)
・見積書(内訳書含む。年度ごとの支払い額が分かるもの)
・位置図(案内図)
・対象物件の配置図、平面図、立面図、断面図、建築設備図+昇降機、関係図面等
・特定緊急輸送道路沿いの建築物であることが確認できる書類
交付申請
事前準備が整い次第、交付申請をしましょう。
以下の書類を中野区役所へ出してください。
・交付申請書(第3号様式)
・事業内容等の確認書(別添様式)
・対象物件の確認通知書の写しや検査済証の写し(その他建築確認年月日or建築竣工年月日が確認できるもの)
・申請者が区分所有者によって合意された代表者であることがわかる書類(区分所有建物である場合)
・申請者が共有者によって合意された代表者であることがわかる書類(代表者承諾書と共有者全員の同意書。共有建物である場合)
・建物の全部事項証明書or建物の所有権を証明する書類
・土地の全部事項証明書or土地の所有権を証明する書類
・現状が分かる写真(建物+前面道路を撮影し、撮影位置を明示)
・住民票の写し(申請者が個人の場合)
・登記事項証明書(全部事項証明書の「履歴事項証明書」。申請者が法人の場合)
・住民税or法人住民税の納税証明書(直近のもの)
・固定資産税の納税証明書(直近のもの)
・案内図+配置図
・特定緊急輸送道路沿いの建築物であることが確認できる書類
・消費税仕入税額控除確認書(別添様式。消費税を含めて助成認定の申請をしたい場合)
・土地の所有者の承諾書(借地の場合)
・耐震診断の結果報告書(概要版)
・耐震改修に要する費用を示す書類
・工事見積書
・工事工程表
・管理組合の規約+工事を行う旨が記載された書面(申請者が分譲マンション管理組合の場合)
・工事施工者の建設業の許可証の写し
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【建替えの場合に追加】
・工事に関する設計図書(案内図、配置図、平面図、立面図等)
・工事監理者の建築士免許証の写し
用意するものが多いので、1つずつ確認しながら集めましょう(原則、提出済みの書類は省略できます)。
交付申請を行うと、審査を経て交付の決定通知書(第4号様式)が発行されます。
解体or建替え工事
交付の決定通知書を受け取ったら、工事業者と契約して工事を始めてもらいましょう。(助成が受けられなくなるため、必ず順序を守ってください)
また、工事開始と同時に以下のものを提出します。
・着手届(第6号様式)
・契約書の写し
・工事の内訳書
・工程表
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【建替えの場合に追加】
・確認済証(建築物)の写し+確認申請書(建築物)の写し(第一面から第六面まで。新築工事着工前に、再び着手届の提出可)
もし工事内容に変更を加えるときは、あらかじめ変更届(第8号様式)や変更申請書(第9号様式)等を出す必要があります。
※建替えの場合は、対象物件の解体が完了した時点(~新築工事の着手前まで)で中間検査を受けます。
以下の書類を提出してください。
・中間検査の申請書(第12号様式)
・解体の状況(着手前、中間時、完了時)が分かる写真
完了報告
工事がすべて終わったら、完了報告を済ませましょう。
以下の書類を出してください。
・完了実績報告(第13号様式)
・助成金交付申請書(第14号様式)
・工事費用の明細書
・工事費の支払いを証明する書類の写し(領収書等)
・工事の状況(着手前、中間時、完了時)が分かる写真
・消費税仕入税額控除確認書(別添様式。消費税を含めて助成金の申請をしたい場合)
・耐震改修等実施報告書
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【解体のみの場合に追加】
・申請者の転居先住民票の写し(解体建物に住民登録があった場合のみ)
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【建替えの場合に追加】
・検査済証(建築物)の写し
・設計図書(案内図、配置図、平面図、立面図、構造図、構造計算書)
・建物の全部事項証明書or建物の所有権を証明する書類
完了報告を済ませると書類審査と完了検査があり、問題がなければ助成金交付の決定通知書(第17号様式)が出されます。
交付請求
助成金交付の決定通知書が届いたら、交付請求が可能です。
以下の書類を出してください。
・助成金請求書(第19号)
・支払口座振替依頼書
・領収書
・請求書等
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【委任払い制度を利用する場合】
・支払口座振替依頼書
・領収書(助成限度額オーバーの場合は、自己負担分の領収書)
・請求明細書等
・工事費用を証明する書類の写し
・委任状
最終的に申請者が工事業者に支払う金額自体は変わりませんが、申請者が事前に用意する資金が少なくて済むようになります。
もし、制度を利用する場合には、事前に工事業者や中野区と相談しましょう。
提出書類で指定した口座に対して、後日助成金が振り込まれます。
以上が解体・建替え助成金の手続き方法です。
分からない点があれば、中野区役所に問い合わせてください。
都市基盤部 建築課 耐震化促進係
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所在地:〒164-8501 東京都中野区中野四丁目8番1号(9階 8番窓口)
電話:03-3228-5576
FAX:03-3228-5471
解体・建替え助成金に関する情報取得
最後に、解体・建替え助成金に関する情報取得について説明します。
助成金のこと知りたいと考えた方の多くは、中野区公式ホームページをご覧になると思います。ただ、サイト規模があまりに大きいので、目的のページを見つけるのは大変かと思います。
そこで、解体・建替え助成金について書かれているページへの行き方についてお話しします。
解体・建替え助成金に関するページへの行き方
解体・建替え助成金について詳しく書かれたページへの行き方と内容を説明します。
まず、Google等の検索サイトを利用して「中野区」を調べ、結果一覧から(中野区公式ホームページ)「くらし・手続き」を選択します。
これで中野区公式ホームページ内の「くらし・手続き」に入れました。
続けて、(まちづくり・住まい)「建築」⇒「建築物の耐震対策」⇒(非木造建築物の助成制度)「特定緊急輸送道路等沿道建築物の耐震化を支援します」の順に選択していきましょう。
すると次のページが表示されます。
引用元:中野区公式ホームページ
この「特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を支援します」というページに、今回取り上げている解体・建替え助成金の情報が載っています。
解体・建替え助成金に関するページの内容
「特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を支援します」というページ内では、解体・建替え助成金に関する多くの情報が取得できます。
「助成内容について」という項目には、パンフレットへのリンクがあります。
パンフレットには、制度の詳細な内容がまとめられています。文章は少し分かりにくいかもしれませんが、図や表が入っているので理解しやすいと思います。申請前に一度目を通しておきましょう。
また、「申請書・届出様式」という項目内には申請書類のダウンロードページへのリンクがあります。
ダウンロードすると、記入が必要な書類がご自宅で作成できます。便利ですので、ぜひ活用してください。
まとめ
今回は、東京都中野区の解体・建替え助成金についてまとめました。
建設業界は空前の人手不足で人件費が上がり続けています。加えてゴミの処理費も増加しているので、解体工事や建替え工事にかかる費用は高くなる一方です。
早急な地震対策だけでなく、コストの面でも早めに工事を検討するべきです。
まずは、中野区役所へ事前相談をしてみましょう。
中野区公式ホームページ:特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を支援します
解体工事にはお金と時間がかかります。しかし、正確な情報をもとに計画的に進められれば、補助金・助成金も使えて費用をかなり抑えられます。さらに、私たちあんしん解体業者認定協会では、信頼できる解体業者の紹介と正しい情報の発信等しています。迷ったら、ぜひお気軽にお問い合わせください。