建て替えでセットバックが必要と言われたら?利用したい3つの支援策

みんなのため、セットバックに協力しよう!!

新築を建てるために見つけた古家付きの不動産。立地が良くて値段も予算内。

しかし、不動産屋さんに「セットバックありの物件ですが...」と聞きなれない言葉を言われてしまうと不安になってしまいますよね。

そこでこの記事では、セットバックとは何かの基礎知識から、セットバックにかかる費用を減らす3つの支援策までをご紹介します。

セットバックとは?

パトランプ

まずはセットバックとは何かについて詳しく見ていきましょう。

何のためにできたのか?

セットバックは英語で「後退」という意味があり、建築業界では、家を道路から後退させることを指します。つまりセットバックをひと言でいうと道幅を広くするための法律です。

もし、住宅街で火災が起こった場合、消火活動が遅れると被害はどんどん大きくなってしまいます。そこで、緊急車両が十分に通れる道幅を確保するために定められた法律です。

法律の内容は?

セットバックの詳細が定められている法律は建築基準法です。

法42条2項道路  「基準時(建築基準法が施行された昭和25年11月23日と当該市町村が都市計画区域に指定された時点とのいずれか遅い時点)」に存在する幅員4m未満の道で、既に建築物が建ち並んでおり、その他特定行政庁が定める基準を満たすものです。この道路に面している敷地は、基準時の道の中心線から水平距離2mの線を道路の境界線とみなします。中心線から水平距離2m未満にがけや河川等が存在する場合は、これらの境界から水平距離4mの線を道路の境界線とみなします。

引用:東京都都市整備局

セットバックは法律の名前や文面から、通称「2項道路」「みなし道路」と呼ばれる場合があります。なお、セットバックで重要なポイントは3つです。

  • 新築・建て替えの場合が対象
  • 全ての道路が対象ではない
  • 道路の中心から2mの範囲

特別な場合を除いて既に建っている家はセットバックの対象外です。対象になるのは、2項道路に面した土地で新築を建てる場合や、家屋の建て替をする場合です。ちなみに、2項道路かどうかは道路台帳で確認出来ます。なお、地域によってはweb上で道路台帳を公開している場合があります。

対象道路の確認例

例えば、品川区の場合はホームページから道路台帳の閲覧が出来ます。

品川区対象道路

写真では右の凡例から色を確認してどこが2項道路か確認できるようになっています。 ただ、自治体によっては道路台帳を公開していても、どれがセットバック対象の道路か分かりづらい場合があります。

品川区の場合は、区のホームページから関連する文言をクリックしていくと確認できるようになっていましたが、関連する単語を知らないと使い方に苦戦するかもしれません。

道路台帳の検索で役立ちそうな単語
  • 建築基準法・・どの法律の対象道路かを確認する
  • 2項道路・・セットバック対象道路の名前。建築基準法第42条第2項道路。
  • 指定道路・・道路の種類を検索する
  • 凡例・・色分けや、区分けの詳細が載っている部分

自治体のサイトによって使い勝手も名称も様々なので環境に合わせて試してください。 なお、不動産の売買では必ず告知の義務があるので、セットバックが必要な土地なのに黙って売りつけられる心配はありません。

セットバックを行わず違反するとどうなる?

上記のようなことから、セットバックの必要性はお分かりいただけたかと思います。とはいえセットバックはもちろん自己負担ですし、手続きや工事の時間もかかるので「セットバックを快くしたい」という方は少ないでしょう。

そういった方たちのため、セットバックを守らないとどんな罰則があるのかを調べてみました。

結論からお伝えすると、建築基準法による罰則というよりは、自治体によって措置が取られているとのことです。厳密には指導や勧告、最悪の場合は強制的な処分もあります。

バツ

ところが、実際に罰則が適応された具体事例が見つかりませんでした。(セットバックを巡った近隣同士での訴訟による判決はあるようです)

さらに、「セットバックは関係ない。建てたもの勝ちだ!」といった意見もあり、法律自体が機能していない部分があるのも事実です。

ですが、やはりセットバックは実行するべきでしょう。上記でもお話した通り、火災や自然災害時に緊急車両が入れずに救助活動が遅れることは命に関わります。

近隣と助け合って緊急時にも強い街作りを進めてみてはいかがでしょうか。

セットバックで新築が小さくなる場合がある

続いては、具体的なセットバックによる建て替えの影響をお話していきます。

そもそもセットバックの対象となるケースは、主に4m未満の道幅しかない道路の脇で、お家を建て替える場合です。

道路が狭いと消防車が通れないうえ、お家同士が近くて火が燃え移りやすいからです。そのため、自治体は道幅を4m以上に広げたいと考え、セットバックをお願いしている状況です。

そこで注意したいのは、新築の大きさが敷地の広さに左右される点です。つまり、セットバックして敷地が狭くなると、建て替え後のお家が小さくなる可能性があるのです。

道路の中心から2mの位置まで境界線を下げる

セットバックは、道路の中心線を基準に考えます。 道路の中心線から2mの位置まで下げたところが、新たな境界線になります。

たとえば、ご自身と道路の反対側にあるお宅が、それぞれ2mの位置までセットバックしたとしましょう。すると、道幅を4mに広げられるわけです。

セットバックとは

ただし、道路の反対側にあるお宅が先にセットバックを済ませている場合、道路の中心線は見た目と異なるので注意してください。

また、道路の反対側がお家ではなく、川になっている場合も気を付けなければなりません。ご自身のセットバックだけで、道幅を4mに広げる必要があるからです。

反対側から4mの位置まで下げる

例外はあるものの、基本的には道路の中心線から2mの位置まで境界線を下げると考えてください。

敷地が狭くなると建て替えにも制限がかかる

上記のようなセットバックのルールがあることから、お家の安全性や近隣宅への影響を考慮すると、建てられるお家の面積には上限があることがわかります。

お家の最大面積は敷地の面積をもとに計算するため、敷地の面積が狭くなると、必然的にお家の最大面積も小さくなります。

これを具体的に言うと、お家の広さは容積率によって制限されると言えます。

容積率とは?

お家の各フロアの面積を合計した延べ床面積を、敷地面積で割った値です。
容積率 = 延べ床面積 ÷ 敷地面積なお、容積率の上限は、お家が建っている地域によって決まります。

容積率を一定とした場合、敷地面積が小さいほど延べ床面積は小さくなります。

敷地面積 × 容積率 = 延べ床面積だから、敷地面積が小さくなるほど、延べ床面積も小さくなります。

たとえば、敷地面積が100㎡で容積率が80%の場合、延べ床面積は最大80㎡です。

敷地面積 100㎡ × 容積率 80% = 延べ床面積 80㎡

ところが、5㎡のセットバックを行うと敷地面積が95㎡に減るので、延べ床面積は最大76㎡に変わります。

敷地面積 95㎡ × 容積率 80% = 延べ床面積 76㎡

つまり、セットバックして建て替えると、新築の最大面積が狭くなるのです。お家が小さくなれば間取りに影響しますので、注意しましょう。

セットバックの負担を減らす3つの支援策

また一般的には、セットバックにかかる費用は自費負担で支払います。

それに、ただ測量などの手続きを専門家にお願いするだけでも、30万円以上がかかります。ですから、建て替える方にとって大変な負担となりかねません。

そこで、自治体はさまざまな支援策を行っています。 セットバックは地域のためになるので、自治体としても協力していただける方を手助けしたいのです。

自治体の支援策のなかでは、以下の3つが特にオススメです。

  1. セットバック費用の補助金
  2. セットバック部分の寄付制度
  3. セットバック部分の税金免除

支援策を使えば、セットバックの負担を大幅に減らせます。そこで、表の順番通りに、支援策の内容を一緒に見ていきましょう。

【支援策1】セットバック費用の補助金

セットバックでは、以下のような工事や手続きが必要となります。

境界確定測量 セットバック後の新たな境界線を決める作業
建築物の撤去 セットバック部分にある門や塀などの撤去
建築物の撤去 セットバック部分にある門や塀などの撤去
舗装工事 建築物を撤去したあとのアスファルト舗装
分筆(ぶんぴつ)登記 法的にセットバック部分を敷地から切り離す手続き

工事や手続きにかかった費用は、自治体に補助してもらえる場合があります。そこで、実際に自治体が行っている補助金の一部をご紹介いたします。

門や塀の撤去にかかった費用の補助金

古いお家を解体するとき、セットバック部分にある門や塀の解体費用を補助してもらえる場合があります。たとえば、東京都北区では道路沿いの門や塀を撤去すると、門と塀1mにつき5,000円を補助してもらえます。

「道路に沿っている門・塀の長さ(m) × 5,000円」を補助

もし、撤去した門と塀の長さが合計10mだとすると、50,000円を補助してもらえます。

参考 狭あい道路等拡幅整備事業東京都北区

舗装にかかった費用の補助金

セットバック部分は道路の一部になるので、アスファルト舗装が必要です。 そこで、アスファルト舗装に補助金を出している自治体があります。

たとえば、東京都港区の場合はアスファルト舗装1㎡につき7,000~23,000円までを補助しています。

「アスファルト舗装する広さ(㎡) × 7,000~23,000円」までを補助

ちなみに、アスファルト舗装は構造の違いによる種類があります。種類に応じて自治体が補助する金額は異なるので、注意してください。

港区のアスファルト舗装1㎡あたりの補助金は、以下のように決められています。

アスファルト舗装の種類 補助の上限額
L形上部改修 7,000円/m²
20型 11,000>円/m²
25型 17,000円/m²
40型 23,000円/m²

20型・25型・40型は、アスファルト舗装の種類を指します。もし、5㎡の広さを25型のアスファルト舗装にする場合、最大で85,000円が補助されます。

セットバック部分 5㎡ × 25型の補助上限額 17,000円/㎡ = 補助の上限額 85,000円

なお、アスファルト舗装の種類は自由に選べるわけではありません。強度などが異なるので、場所に合った種類を選ぶ必要があるからです。

どのアスファルト舗装にするのかについては、自治体に問い合わせてみてください。

参考 細街路(2項道路)拡幅整備事業港区役所

測量と登記にかかった費用の補助金

セットバック部分は、実質的に自分の所有地ではなくなります。ですから、別の土地として切り分けて管理する必要があります。

そこで、建て替え後に土地の分筆登記をします。

分筆(ぶんぴつ)登記とは?

国が管理する帳簿を使って、法的に1つの土地を2つに切り分ける手続きです。権利や税金などの管理は、1つの土地ごとに行われます。分筆登記をすれば、セットバック部分と残りの敷地を別々に管理できるようになります。

また、セットバック後の境界線を決めるために、工事前に正確な測量が必要です。測量は専門家でなければできないので、手数料がかかります。

測量と分筆登記にかかる費用を合わせると、一般的に約31万円以上になります。

そこで、自治体によっては、測量と分筆登記にかかった費用を補助しています。 たとえば、栃木県佐野市では、測量と分筆登記にかかった費用のうち最大30万円を補助しています。

測量と分筆登記にかかった費用のうち、最大30万円を補助

自治体は、さまざまな補助金の制度を設けています。ですから、「〇〇市(お住まいの地域名) セットバック 補助金」で検索してみてください。補助金の制度があれば、簡単に見つかりますよ。

参考 土地登記費用一覧白木登記測量事務所

参考 狭あい道路の後退に係る測量分筆費の補助制度について佐野市役所

【支援策2】セットバック部分の寄付制度

セットバックした部分は、実質的にみんなのものになります。ですが、法的には自分の所有地として残るので、税金や権利の管理がややこしくなってしまいます。

そこで、セットバック部分は自治体に寄付するのがオススメです。

東京都練馬区では、建て替えが終わったあとにセットバック部分を寄付する制度を設けています。建築物の撤去にかかる費用を除けば、すべて練馬区に行ってもらえます。

自分の所有地でなくなれば、税金や権利の問題はもう起きません。なので、セットバック部分は寄付して、自治体に所有してもらうのがベストです。

なお、「〇〇市(お住まいの地域名) セットバック 寄付」で調べてみると、お住まいの地域に寄付制度があるか簡単に調べられます。

参考 公道化事業練馬区

【支援策3】セットバック部分の税金免除

寄付ができない地域では、セットバック部分が自分の所有地として残ります。所有地には固定資産税がかかるので、自分で使えない土地に税金を払い続ける状態になります。

ですが、自治体に申請すれば、セットバック部分にかかる固定資産税を免除してもらえます。

東京都であれば、申告書を提出して都税事務所の職員さんにセットバック部分を確認してもらいます。すると、セットバック部分にかかる固定資産税が、翌年度から免除されます。

固定資産税を免除している自治体は、数多くあります。ただし、基本的に申請をしなければ免除されません。

ですから、お住まいの地域に固定資産税を免除する制度があるかどうか、必ず確認しましょう。確認するときは、「〇〇市(お住まいの地域名) セットバック 固定資産税 非課税」で検索してみるのがオススメです。

参考 (1)固定資産税・都市計画税の概要について東京都主税局

建て替えのセットバックについてのまとめ

セットバックが必要な地域では、建て替えるときに敷地が狭くなります。敷地が狭くなると新築の最大面積も小さくなるので、新築の間取りを考えるときには注意が必要です。

セットバックの費用はご自身で支払うのが一般的です。ただ、セットバックに協力していただいた方の負担が大きくならないように、自治体はさまざまな支援策を行っています。

特に、以下の3つの支援策を使うと、セットバックの負担が大幅に減らせます。

  1. セットバック費用の補助金
  2. セットバック部分の寄付制度
  3. セットバック部分の税金免除

ただし、自治体ごとに行っている支援策は異なります。

ですから、「〇〇市(お住まいの地域名) セットバック」などと検索してみてください。 お住まいの地域で受けられる支援策を簡単に調べられるので、オススメです。

地域の環境が良くなれば、地域の方々だけでなくご自身も気持ちよく安全に生活できます。この先も何十年と暮らしていく地域のために、お家を建て替えるときはセットバックにぜひ協力しましょう。

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著者情報

コノイエ編集部

コノイエは、東京都港区に本社を置く株式会社アールアンドエーブレインズが運営するオウンドメディアです。累計80,000人以上が利用する「解体無料見積ガイド」の姉妹サイトとして、住宅関連コンテンツを発信しています。人が生活する基本となる「衣・食・住」の中でも、コノイエでは「住」にフォーカスして独自の情報をお届けします。

監修

中野達也

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事
解体工事業登録技術管理者
公益社団法人 日本建築家協会(JIA)研究会員
一般社団法人東京都建築士事務所協会 世田谷支部会員

静岡県出身。日本全国の業者1,000社超と提携し、約10年間で数多くの現場に関与。自身でも解体工事業登録技術管理者としての8年間の実務経歴を持つ。現在では専門家として、テレビ番組をはじめとする多数メディアに出演。これまでに一般家屋はもちろん、マンション、ビルなど様々な建物の取り壊しに従事し、工事を行いたい施主、工事を行う業者の双方に精通している。また、大手から中小まで様々な規模の住宅メーカーへの販促支援、コンサルティング事業に携わり、住宅購入者心理の理解を深める。家を「壊す」ことと「作る」ことの専門家として、全国の提携パートナーと共に家をとりまく様々な問題に取り組んでいる。

出演メディア
ひるおび!(TBS系列)、情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)、バイキングmore(フジテレビ系列)、他多数...

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