世帯数の変化で不動産の価格が暴落する危険があると噂されていた「2019年問題」。 先日、あらたな推計が発表され、当初懸念されていたような2019年問題がきっかけで不動産の価格が暴落する危険はないとの見方が強りました。
この記事では2019年問題がなぜ注目されたのか、そしてなぜ回避されたのか。また、今後の不動産投資をどのように行うべきかを調べてまとめました。
2019年問題とは?
国立社会保障・人口問題研究所は2013年に推計した結果をもとに、2019年以降日本の世帯数が減少し始めると発表しました。そのため、2019年を境に不動産の需要が減り、不動産の売買価値が下がっていくと予想されたのです。
しかし、2018年1月の推計では2023年まで全国の世帯数は増加傾向にあると修正されました。
ただし、2023年以降は依然として世帯数が減少すると予想されたため、完全に2019年問題が回避されたわけではありません。
日本人口は既に頭打ち
世帯数の変化も気になりますが、実はそもそもの日本人口は2004年を境に減少傾向にありました。
しかし、世帯数は今もなお増え続けています。人口は減っているのに世帯数は増え続けている。その原因はひと世帯当たりの構成人数の変化にありました。
参考:国土交通省 平成29年度 住宅経済関連データより作図
世帯あたりの平均人数は平成29年に2.23人まで下回りました。原因は単独世帯の増加です。
2023年を境に世帯数の減少が始まると、居住用としての不動産は需要が無くなっていくのが予想が出来ます。やはり、世帯数の減少がきっかけで不動産の売却価格が下がっていくのは避けられないのでしょうか。
異常に上がり続ける不動産市場
今後、値下がりの不安を抱えている不動産業界ですが、不安を煽っている原因があります。それは、不動産価格の高騰です。実は現在、首都圏を中心に不動産の値上がりが止まりません。一体いつまで不動産の価格は上がり続けるのでしょうか?
特にマンションの価格がすごい!
特に値上がりが激しい不動産は首都圏のマンションです。
引用:厚生労働省
2023年まで世帯数の増加が見込める理由に単独世帯の増加がありましたね。世帯当たりの人数が少なくなっている現状では、戸建てに比べるとマンションタイプに人気が集まるようです。さらに都市部は土地の値段も上昇傾向にあります。
一方で人口の流出が激しい地域では空き家の増加が止まりません。
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既に、人口の流出が激しい地域では世帯数の変化による不動産価格の変化が現れています。しかし、人が集まる都市部では依然として価格の値上がりが止まりません。特に変化があったのは平成25年以降の推移です。
これほど激しい値上がりが続くと値下がりが始まった時が心配です。不動産の価格が上がるにつれて暴落に対する不安もいっそう高まっています。
しかし、いつから値下がりが始まるのか明確な時期までは分かりません。ただ、不動産価格が高騰している要因はいくつか挙げられます。
オリンピックの影響
不動産価格の上昇が始まった平成25年はオリンピックの開催国に日本が選ばれたニュースが報道されました。
オリンピック開催の報道をきっかけに、それまで注目されていなかった日本の株が急に値上がりを始めたり、日本を訪れる観光客の数も驚くほど増えました。
さらに、オリンピック開催に伴うインフラの整備や関連施設の建設で多額の資金が投入されています。
オリンピックの開催が首都圏を中心に不動産価格の上昇に影響しているのは間違いありません。ただし、オリンピックの開催後は景気が不安定になると予想する専門家が多く、不動産相場が急に崩れると心配している投資家の方も多いようです 売買のタイミングを見逃さないためにも、今後の動向に注目です。
異次元緩和による影響
近年の不動産価格の高騰に大きく影響しているもう一つの要因は、2013年に導入が決まった日本銀行による金融政策、通称「異次元緩和」です。
市中銀行が保有している国債を日本銀行が買い入れ、市中銀行の預金残高を増やす政策。預金残高が増えた銀行は積極的に融資活動が出来るようになり、資金が市場に供給される仕組み。
異次元緩和の恩恵を一番受けているのは不動産業界だという意見も多く、実際に銀行の貸出先を見ると、不動産業界への貸し出し額は異次元緩和後にかなり上がっているのが分かります。
住宅金融市場の推移を見ても民間金融機関からの借り入れ率が常に上昇しているのが分かります。
参考:国土交通省 平成29年度 住宅経済関連データより作図
金融機関の後押しがあり、不動産の購入が活発になっているのが明らかです。
今後の投資対象はどうすれば?
さまざまな要因により首都圏を中心に不動産価格が上昇しているのが分かりました。しかし、価格が上がっているからといってすぐに投資に取り掛かるのはリスクが高すぎますよね。そこで最後に、これから不動産投資をする際に意識しておくべき点について考えてみました。
単身向け住宅に絞る
2004年以降、人口が減少傾向にあるのに世帯数が2023年まで増え続ける要因は単身世帯が増加しているからでした。もう一度、単独世帯が増加するグラフをご覧ください。
特に今後明らかなのは高齢者の単身世帯増加です。推計では2050年には単身世帯の約半分が高齢者になると予想されています。やはり、深刻な高齢化社会は避けられないようです。
人口は減少傾向にあり、世帯数も2023年以降減少が予想される。ただ、単身世帯の増加は今後歯止めがかかる見込みがありません。ひと世帯あたりの平均人数は今後も減り続けるのでしょうか?だとすれば今後、不動産で投資をやっていくのであれば単身世帯に的を絞って投資を行うのが現実的かもしれません。
ただし、単身入居者を対象に爆発的に進められたサブリースに関しては注意が必要です。
サブリースは詐欺なのか?!
単身者向けの不動産投資に魅力を感じている投資家の方は多いようです。しかし、十分な知識がないまま投資を始めてしまうと取り返しのつかない結果になってしまいます。
ここでは、単身者向けの不動産投資の中でも特に注意が必要なサブリースについて紹介します。
サブリースとは
サブリースとは一括借り上げともいわれます。サブリース会社にアパートを一軒まるごと借りてもらい、空室に関係なく定期的に決まった金額を賃料として受け取る投資スタイルです。
サブリースは長期契約が多く、安定して収入を得られる点から爆発的に広まりました。しかし、サブリースを行っていた会社が経営破綻に陥ったことで、サブリースの問題点が次々に浮き彫りになりました。
サブリースをめぐるトラブルは様々です。
- 過度な賃料の引き下げを要求された
- 運営するサブリース会社が経営破綻した
- 付近に同様のアパートが次々に建設される
- 申告内容を改ざんして無理やり融資の審査を通された
などなど、サブリースに関するトラブルは多岐に渡ります。
ここでは詳しく紹介しませんがサブリースを始めるには事前に情報収集するのをお勧めします。なお、サブリース問題については以前に書いた記事があるのでそちらも参考にしてみて下さい。
不動産の経営でサブリースを選んではいけない本当の理由不動産の2019年問題についてのまとめ
2019年問題は先延ばしになったに過ぎません。人口の減少に加えて、世帯数も2023年以降は減少していくとなると現在高騰している不動産の相場が崩れる可能性は大きいです。
ただし、不動産の市場価格に影響を与えている大きな要因には他にもあり2023年まで不動産の価格が上がり続ける保証はありません。
また、世帯人数の減少も深刻で、今後は単身者向けの不動産物件に需要が集中する可能性が高そうです。ただ、単身者向けの不動産ならどれでもいいわけではありません。リスクが高い物件もあるので、投資対象を選ぶ際は注意が必要です。