4月17日日曜日、全国的に風速30mを超える強い風が吹き、各地で様々な被害が生まれてしまいました。中でも多く報道されていたのが、解体・建設工事現場での事故。
ある現場では足場が倒壊、またある場所では防音パネルがはがれ落ちるなど、幸運にもけが人・死人は出なかったものの、あわや大惨事になってしまうところでした。
では、なぜこういった事故は起こってしまったのでしょうか?
また、今後このような事故をなくすためにはどのような対策をとればよいのでしょうか。
安心な工事のため、しっかり見直しておきましょう。
実際にあった足場倒壊の事例
では、実際にあった事例から見ていきましょう。
北千住のビル建設現場の足場倒壊
さっき北千住を歩いていたら、背後でバリバリというものすごい音が聞こえて、振り返ったら強風で建設現場の足場が倒れ、大惨事に!! あと1分遅かったら下敷きになってた… pic.twitter.com/fNjVC7oO8z
— うさこ@うさぎ部 (@usako_usagiclub) 2016年4月17日
東京都足立区千住の、足立成和信用金庫の本店新築工事現場で、鉄パイプで組まれた足場が倒壊する事故がありました。足場はまるでビルからはがれおちるように崩れ、道路を挟んだ向かい側のビルに覆いかぶさるように倒れました。
建設中のビルは7階建てで、足場の高さは約30m、幅約50mで組まれたものでした。
北千住 旧区役所通り通れません。足場崩れてます。 pic.twitter.com/Ty4SSJbbG1
— 花屋 小梅 (@hanayakoume1) 2016年4月17日
倒壊する前から、足場が傾いたりグラグラと揺れてしまっているのが確認されていたため、事故のあった北千住の旧区役所通りは事前に通行止めがされていたようです。
死人やけが人が出てしまう被害をおさえることができたのも、早めの対応ができたというのが大きいでしょう。
聖蹟桜ヶ丘のビル解体現場の足場倒壊
こちらは東京都多摩市にある、聖蹟桜ヶ丘駅付近の解体工事現場での事故です。
9階建ての雑居ビルの解体工事で、足場には防音用のパネルが全面に取り付けられていましたが、強風にあおられて防音パネルが徐々にはがれはじめ、最終的には足場もろとも倒壊する事態となりました。
強風で補修工事のパネルが。相当危ないです。聖蹟桜ヶ丘駅そば。 pic.twitter.com/Co21dB0dUe
— じゅんちち (@juntiticamp) 2016年4月17日
死人・けが人は出ませんでしたが、前の通りで信号待ちをしていた乗用車に足場の鉄パイプの一部が落下したほか、信号機3台が使用できなくなるといった被害が出ました。
蒲田のホテル建設現場の足場倒壊
こちらは2か月前、2月14日に起こった事故です。東京都大田区蒲田にあるホテル建設現場の足場が、前の建物に覆いかぶさる形で倒壊しました。
建設中のホテルは14階建てで、足場が崩れたのは上層部にあたる6階分だったそうです。
この日は休日だったため工事自体は行われておらず、けが人はありませんでした。
なぜ足場の倒壊が起こってしまったのか?
先ほどご覧になった事例をもとに、今度は倒壊の原因を探ってみましょう。
一口に足場と言っても、実際にはいくつかの種類があります。
まずは、足場の種類ごとに見ていきます。
枠組み足場
別名、ビティ足場とも呼ばれています
鋼管を溶接された建枠にはめ込み、交差筋違い、
鋼製布板等の基本剤を組み合わせ、積み上げていき足場を作ります。
今回の強風による倒壊の影響として考えられるのは、
①足場の壁つなぎ金物の位置の未確認
②取り付けに不備があった
③枠組足場のブレースの欠損
④建枠の防止ピンなどの未施工
⑤布枠の吹上防止フックの未施工
などが挙げられます。
正確な理由は定かではありませんが、安全上必要な部分の未施工や未確認が原因である可能性は高いと考えられます。
全面防音パネル
防音パネルの効果としては、消音性・吸音性に優れたパネル構造により、工事によって発生する騒音を大幅に軽減することができ、足場の骨組み部分が隠されるため、景観が重視される街中でも悪影響を与えることがありません。
パネルは主に亜鉛めっき鋼板で、水に強く腐食しにくいという特徴があります。亜鉛めっき鋼板は、かつてトタン屋根などに多く使われていました。
防音パネルが剥がれ落ち、足場が倒壊するという事故の原因として考えられるものは、
①足場の壁つなぎ金物が不足している
②足場の取り付け状態に不備があった
などが挙げられます。
解体工事の際、解体の順序によって壁つなぎ金物の盛替えを確実に行う必要がありますから、解体がどの段階まで行われていたのかにより、また理由が違うこともあります。
全面シート養生
養生シートは、防音対策のほかに粉塵対策にも効果があり、養生となるシートの種類により、その強度は異なります。
強風による倒壊の原因として考えられるのは、
①壁つなぎ金物の不足
②壁つなぎの取り付け不備
③足場の足元回りの根がらみ補強の不備
④足場に養生が施行されているために、風の逃げ道がなかった
などが挙げられます。
いずれも具体的な倒壊の原因は明らかにされていないため、考えられる原因についてもあくまで憶測でしかありませんが、想定以上に強い風が吹いてしまい、想定内の対処では防ぎきれず、安全上もっと考慮をすべきだったということはほぼ間違いないでしょう。
強風にも負けない足場を作るためには?
では、強い風が吹いても倒壊・崩壊しない足場を作るためには、どのような対策を取ればよいのでしょうか?引き続き、足場の種類ごとに見ていきましょう。
枠組み足場
養生がある場合は養生を作り、風を留めさせない
今回の北千住のビルの倒壊のように、枠組み足場に養生シートを施工している場合、強風が想定される時には、出隅部分の2、3枠部分の養生シートを絞る、もしくは撤去するなどをして風の通り道を作り、風を留めさせない段取りを作ることが必要です。
壁つなぎ金物はより頑丈なものを選ぶ
壁つなぎ金物に関しては、引っ張りと圧縮力が同時にかかり、繰り返しの曲げ応力がかかってしまいますので、より剛性の高い金物を使用することが大切です。
全面防音パネル
強風が想定される場合は、一部を防音シートに
防音パネルが取り付けられている足場の場合、取り外しが難しいため風の通り道を作ることが難しくなってしまいます。
なので、全面を防音パネルにしてしまうのではなく、一部分を防音シートに取替え、強風が想定されるときには事前にシートを絞る・撤去するなどの対処をすると良いでしょう。
ワイヤーを利用し、倒壊防止補強をする
全面防音パネルの足場が枠組みであった場合、枠内の3~5段ごとにワイヤーを使用し、建物の本体とつないで利用することで、足場の倒壊防止補強をすることができます。
全面養生シート
強風が想定される際にはシートを絞るり、点検・清掃を
養生シートが全面に使用されている場合には、足場自体に風をとじこめてしまうおそれがあるため、強風が予想される時には養生シートを一部絞る、撤去するなどして風の通り道を作る必要があります。
その際足場の布枠上に飛散物がないかの点検、清掃等をこまめに行いましょう。
足元部分には釘止め、根がらみ補強を実施
足場の足元部分には、ジャッキベース(基礎部分)と敷板との釘止めや、根がらみの補強を確実にし、強風にも耐えられるよう強い足場を作るよう心掛けることが重要です。
足場倒壊の事故についてのまとめ
今回は実際にあった足場倒壊の事故をもとに、原因と対策についてご紹介いたしました。
今回ご紹介した事故にはビルやホテルといった大規模な工事現場のものが多かったですが、もちろん一般住宅の解体・建設工事においても、こういった事故が怒ることは想定されます。ご自身が工事の施主となる際には信用できる業者を選び、安心して工事を頼めるようにしましょう。
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