空き家になってしまった実家をどうしようか・・・と、悩んでいる人は少なくありません。しかし、そのまま放置しておくと、家は傷んできますし、それなりの管理も必要になってきます。何らのかの手をうちたいと考えている方は、まず空き家になっている親の家について知ることから始めてみませんか。
親の家を知ることにより、適切な選択肢を選ぶことができ、やるべきことが見えてくるようです。親の家を知る作業を通して、親の家に対する思いや愛着を感じることができるとともに、親がたどった人生を知る機会にもつながります。それでは、家の概要を把握していきたい点を見ていきましょう。
権利関係を明らかにする
親の家を相続し、売却する等の手続きを取るには、相続登記をしている必要があります。仮に売ることになった場合、買い手がついても登記できないようであれば、契約することができません。
まず、家の権利関係がどのようになっているのかを明らかにしましょう。権利関係を知ることで、家の歴史を知ることができます。
権利関係を明らかにすると、今でも土地の名義が、ずっと前に亡くなった祖父のままというケースも珍しくないようです。あるご家庭では、ご両親が相次いで亡くなられ、いざ実家を売却しようとして登記情報取り寄せたところ、名義はお父様のままだったそうです。
そこで、まず亡くなられたお母様とお子さん(2人兄弟)の3人が法定相続を前提に、名義書き換えをしたそうです。この時には、他に被相続人がいないかを、戸籍を取り寄せて、確認する必要があります。
そして、亡くなられたお母様の相続分を2人の兄弟が相続するという書き換えが必要になりました。名義の書き換えをする必要があり、時間や手間はかなりかかったそうです。しかし、この名義変更する手続きがすまなければ売却はできません。
これらの一連の手続きは、全て自分で行わなくても、司法書士に任せることができます。もちろん士業に依頼するため、それなりの費用はかかります。また、いろいろな書類を取り寄せるためにそれなりの時間もかかります。このご家庭では、2ヶ月程度の時間がかかったそうです。
また、親の家が平成17年以前に登記されている場合、登記情報の確認や売買で所有権が移転する時にも、権利証が必要となってきます。
正式名称は「登記済証」というもので、平成17年以前は土地や建物を取得すると法務局が発行していました。しかし、平成17年に法改正があり、平成17年以降から順次、「登記済証」ではなく「登記識別情報通知書」という書類が発行されるようになっています。
もしかすると、家の中を探してみたが、権利証が見当たらないという場合もあると思います。このような場合には、司法書士、土地家屋調査士、弁護士に本人確認情報の提供を依頼すれば、権利証の提出や登記識別情報がわからなくても、不動産の売却による所有権移転はできるようですので、相談してみてください。ただし、数万円の費用がかかります。
家の基本仕様を整理する
家の基本仕様とは、土地・建物面積、間取り、築年数などのことを指します。これにより、親の家の特徴や状況を把握することができ、より具体的にどのような有効活用ができるのかを検討することができます。
家が建っているまま売る、家を貸すなどのときには、親の家の全体像が分かる基本仕様が必要です。その際に書面で確認したい資料を見ていきましょう。
土地の測量図、境界確認書
土地の測量図や境界確認書を確認しましょう。一戸建てや土地の場合に必要です。この書面を元に、どこからどこまでが売ったり、貸したりするときの対象になるのか、対象面積は何平方メートルか、といったデータを整理できます。
建築確認証および検査証、建築設計図書
建物の外を整理するために必要な資料です。建築確認証および検査証は、その家が建築基準法と言う法律に則って建てられたことを証明する書類となります。違法建築ではないお墨付きともいえます。
建築設計図書や工事記録を見ると、建物の広さや間取りがわかります。大抵の場合、設計図には日付が記載されているので築年数も把握することができるでしょう。
水回りなどは、リフォームしているかもしれません。リフォームしていたら、同様にリフォーム箇所に関する設計図や工事記録も探しましょう。新たに交換したトイレ、洗面所、キッチンなど水回りを中心として設備カタログがあれば、売る、貸すときの有益な情報となります。
こちらの土地測量図や境界確認書、建築確認証および検査証、建築設計図書等も見つからないという場合があるかもしれません。その場合にも、手間と費用はかかりますが、大丈夫です。
土地測量図、境界確認書については、隣の土地所有者の方々と協議し、了解を得て測量図を作成することになります。建築確認済書を紛失した場合は、家が所有する最寄りの自治体で証明書を発行してくれます。建築設計図書がない場合、室内の寸法を測り、大体の広さ、間取りをつかみます。
このようにして、建物に関する資料をもとに、家の概要を把握することができます。この段階で、売る、売らない更地にするなど、おおまかな方向性がある程度、見え始めます。親の家の基本仕様がわかれば、住宅市場における実力がどの程度かということが、客観的にわかってくるからです。
売る、貸す、経営する等、親の家の有効活用方法を決めることができたら、不動産会社に依頼しましょう。
お金関係について把握する
お金関係についても把握しておく必要があります。固定資産税や維持・管理費以外にも気がつかない費用がかかっていることが少なくありません。現在、維持していくのに、いくらかかっているのかを明らかにすることで、こんなにかかるのなら早くに売るとかこの程度の額なら売らずに保有するといった方針が見えてくることになります。
親の家には、土地、建物それぞれに毎年固定資産税、都市計画税、維持・管理費がかかります。それ以外にお金について補足しておきましょう。
火災地震保険
火災地震保険に加入していれば、保険料の払い込みが必要となってきます。ある地域では、木造一戸建て保険金額が2,000万円とすると、火災保険1年間で約15,000円。また、地震保険にも加入していて、保険金額が1000万円とすると保険期間1年の保険料は約18,000円。合計すると1年間で33,000円ほどかかってしまいます。
地震保険料は2014年7月に地震保険の改定があり、保険料率が全国平均で15.5%引き上げられました。2017年1月にも改定があり、保険料の値上げが実施されています。
地震保険料の値上げが実施されるのは、将来的な災害リスクが高まっていることを示しています。集中豪雨、巨大台風、竜巻、大規模な土砂災害、大雪などの被害が年々増加していることや、南海トラフ巨大地震、首都直下地震などのリスクの高まりなどで、巨額の保険金が必要になることを想定してのことです。
住宅ローンの残債
多くの場合、ローンは完済されているとは思いますが、老朽化による建て替えやリフォームによるローンの残債があれば毎月その返済をしなければなりません。税金・維持管理費約50万円にこれらの金額をたすと相当な金額になります。
家を売るという決断をすれば、これらのお金は一切かからなくなります。売らずに空き家のまま、もしくは更地にして保有する時みればこれらの金の負担は継続します。現在家にかかる費用を合わせて検討すると、負担してまで保有するのか、負担が大きすぎるので売るのかといった判断をする材料の一つにこちらもなります。
土地の購入代金、建物の建築費、建て替え代金もわかるようであれば、調べておくと良いでしょう。売ったときの売却益を計算する上で必要なデータとなります。
ここまで家のことを知ると、親の家の概要が整理でき、同時に親がどのような気持ちでこの家を建てたのか、またこの家でどんな人生を送ったのか見えてきたことと思います。家の歴史を知るとともに、現実にかかる費用を検討して判断していきましょう。
まとめ
空き家になってしまった実家をどうしようか迷っている方は、まず空き家になっている親の家について知ることから始めてみましょう。
権利関係、家の基本仕様、お金関係について把握することは、特に大切です。家の基本仕様の部分については、土地の測量図、境界確認書、建築確認証および検査証、建築設計図書などで確認することができます。
お金関係については、税金、維持・管理費用に加えて、火災地震保険、住宅ローンの残債など、他にもかかっているものがないか確認しましょう。
家の状況、かかる費用を知ることにより、適切な選択肢を選ぶことができ、どうするかが見えてくるようです。親の家を知る作業を通して、親の家に対する思いや愛着を感じることができるとともに、親がたどった人生を知る機会にもつながります。
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