空き家の活用法のひとつに、「リフォーム」があります。
リフォームとは、古くなったり壊れてしまった建物を、新築の状態に戻す事です。
また、意向によっては新たな設備や部屋を追加する事もあり、「リノベーション」とも呼ばれます。
しかし、空き家をリフォームして住みたい、売却したい意思があっても、費用の事を考えるとそう簡単には実行できません。
今回は、リフォームへ踏み切るための救世主「補助金制度」をご紹介します。
紛らわしい情報も多いので、惑わされずに利用出来る制度を見極めて工事費用を抑えましょう。
もくじ
1 空き家をリフォームするべき3つの理由
補助金の制度についてお話しする前に、まずは空き家をリフォームするメリットを3つご紹介します。
既にリフォームの意志が固まっている、早く補助金制度を確認したいとお考えの方は2 各自治体が定める補助金制度を確認!で、補助金制度について詳しくお話しします。
資産価値が上がる
空き家は、人が住んでいない為に管理が行き届いておらず、建物の劣化が激しいのが特徴です。
特に木造は、木材が傷みやすく、湿度も高いのでカビや害虫も発生しやすいのです。
放置して劣化してしまった空き家の資産価値は、ほぼ0です。
それどころか、倒壊の危険があると判断されれば、国から強制撤去される事もあり得ます。
自分の所有する不動産に価値を付ける為に、リフォームをして家を蘇らせる事は有効です。
そのまま居住も出来ますし、リフォーム後の家なら売却の際も買い手が付きやすいのもメリットです。

倒壊・犯罪リスクの減少
空き家を放置すると、犯罪リスク、主に放火される危険性が高くなってしまいます。
空き家は、人の気配がない上に手入れが行き届いていないので、雑草や廃材など燃えやすいものが大量にあります。
放火魔にとって好条件である空き家は、格好の獲物なのです。
また、倒壊の危険性も考えなくてはいけません。
万一、空き家が倒壊してしまい、近隣に被害が及んだ場合は、損害賠償責任が問われます。
老朽化した建物の安全性を確保するために、リフォームは有効的です。

税負担の増加を防ぐ
空き家を放置していると、税負担が大きくなってしまう可能性があります。
「空き家対策特別措置法」により、「固定資産税」の軽減が外れてしまうためです。
問題のある空き家を「指定空家」として定め、指定空家に対して環境の改善指導や解体を命令したり、最悪の場合は強制的に撤去を行います。
さらに、特定空家に指定された場合、固定資産税の軽減措置が外されてしまいます。
固定資産税は、面積が200㎡以下の土地に対して、税金が1/6まで軽減される措置があります。
200㎡は、ほとんどの住宅用建築物が収まる広さなので、多くの家が軽減措置の対象になります。
しかし、特定空家に指定されると、軽減措置が外されてしまいます。
つまり、実質的に固定資産税が6倍になるのです。
政府により特定空家に指定されると、実質的に固定資産税が6倍になってしまいます。
指定空家に指定されない為に、リフォームを行い家を安全な状態にすることは有効です。

2 各自治体が定める補助金制度を確認!
それでは、リフォームをする方向性が固まったところで、補助金制度を確認していきましょう。
リフォームに関する補助金は、各地方自治体が定めています。
自治体によって内容は異なりますが、一貫して言えるのは「地域の活性化を図る」目的意識を持っていることです。
そのため、補助金を受取る為には相応の条件が定められています。
では、一体どんな条件があるのか、一緒に見ていきましょう。
事例1)神奈川県海老名市「空き家活用促進リフォーム助成金」
1つ目の事例は神奈川県海老名市の「空き家活用促進リフォーム助成金」制度です。
海老名市では、市内の空き家の利活用を促進するとともに、防災・防犯・衛生・景観などの住環境の向上および定住促進を図ることを目的とした空き家活用促進リフォーム助成事業を行っています。
引用元:海老名市 | 平成31年度「空き家活用促進リフォーム助成金」について
では、申請条件・補助金額・申請方法の3つの要素に分けて見ていきましょう。
1.工事の対象が空き家であること(半年以上誰も住んでいない状態を空き家とする)
2.海老名市内にある空き家の所有者・購入者であること(所有者・購入者は市外在住でもOK)
3.税金を滞納していないこと
4.過去に同じ補助金を受け取っていないこと
5.リフォーム後、所有者ないし親族が居住するか、賃貸・売却を行うこと
6.着手前の工事であること(工事中・工事後の申請は不可)
7.工事費が10万円以上であること
そこまで難しい条件はありませんね。
最も重要なのは、「活用の意思がある」事です。
リフォームをする以上、工事後は居住するか売却をしなくてはなりません。
自治体としては、世帯を増やして市内を活性化させる事が目的なので、補助金を受取るには当然の条件です。
・工事総額の2分の1を補助 上限50万円
例)
工事費総額が80万円の場合……40万円補助
工事費総額が150万円の場合……50万円補助(1/2は75万円だが、補助上限は50万円)
~申請の3ステップ~
1.申請期間を確認!「2019年4月15日~12月27日」
※申請期間は年ごとに異なります
2.申請場所を確認!「海老名市役所4階 住宅公園課窓口」
※海老名市役所住所:神奈川県海老名市勝瀬175番地の1
3.必要書類を用意! ※必要書類は以下に記載
必要書類 |
---|
(1) 空き家活用促進リフォーム助成金交付申請書(HPよりダウンロード可) |
(2) 見積書の写し(施工業者が作成したもので、工事箇所と工事内容がわかるもの) |
(3) 撮影日入りの現況写真(住宅全体の外観写真と工事を行う箇所それぞれの写真) |
(4) 申請者の住民票(住民登録地が海老名市以外の場合) |
(5) 申請者の市税の納税証明書または非課税証明書(課税地が海老名市以外の場合) |
(6) 空き家の売買契約書または賃貸借契約書の写し(空き家購入者・賃借人が申請する場合) |
(7) リフォーム工事などに係る所有者の同意が得られたことを証する書類(空き家購入者・賃借人が申請する場合。所有者が申請し共有名義の場合は、共有者の同意が必要) |
(8) 電気、ガス、水道の使用量明細書など空き家期間を確認できる書類(所有者が申請する場合は6カ月以上。空き家購入者・賃借人が申請する場合は6カ月未満でも可) |
(9) 空き家の不動産登記事項証明書(1月1日から空き家の所有者を変更した場合) |
(10) 耐震診断結果報告書の写し、またはこれに準ずるもの(昭和56年5月31日以前に着工された住宅のうち、すでに耐震診断等により安全性が確認されている住宅の場合) |
(11) 耐震改修計画書の写し(耐震改修工事を行う場合) |
(12) 建築確認申請書の写し(確認申請が必要な工事の場合)[/memo] |
どの書類も、補助金を受取る条件を満たす為に必要になものばかりですね。
どうしても分からない、書類が用意出来ない場合は直接市役所に問い合わせてみましょう。
お問い合わせはこちら
海老名市役所 住宅公園課 住宅政策係 046-235-9604
事例2)山口県下関市「空き家居住促進改修助成金」
2つめの事例は、山口県下関市の「空き家居住促進改修助成金」です。
空き家の省エネルギー化又はバリアフリー化する改修工事を、空き家を購入し居住する方又は売却予定の方が実施する場合に、改修工事費用の一部を補助していますので、ご活用ください。
同じく申請条件・補助金額・申請方法の3つの要素に分けて見ていきましょう。
1.工事の対象が、おおむね年間を通じて使用されていない空き家であること
2.下関市の空き家の所有者・購入者であること(所有者・購入者は市外在住でもOK)
3.同一の住宅で同じ補助金を受け取っていないこと
4.工事内容は「省エネルギー化改修」「バリアフリー化改修」のいずれか、または両方であること
5.リフォーム後、所有者ないし親族が居住するか、賃貸・売却を行うこと
6.工事は下関市内の業者に依頼すること
7.着手前の工事であること(工事中・工事後の申請は不可)
海老名市と似ていますが、下関市では市内の業者に工事を依頼する事が条件に入っていますね。
やはり、政策の目的は地域の活性化なので、市内の企業に利益を出させたいのです。
特に地方では、中心市街地の衰退が著しいので、中心市街地の発展が急がれています。
そのため、中心市街地での工事の方が、補助金が高くなっているのです。
1.申請期間を確認!「2019年6月3日~12月20日」
2.申請場所を確認!「下関市役所1階 住宅政策課」
※下関市役所住所 山口県下関市南部町1番1号
3.必要書類を用意!※必要書類は以下に記載
必要書類 |
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(1) 空き家居住促進改修補助金交付申請書(HPよりダウンロード可) |
(2) 空き家居住促進改修補助金事業実施計画書(HPよりダウンロード可) |
(3) 空き家住宅の建築年、建築年月日等が分かる書類(登記事項証明書、建築確認済証等の写し) |
(4) 空き家住宅の改修に係る見積書(補助対象事業の種別ごとに区分した内訳書を含む) |
(5) 補助金交付決定通知書送付用の郵便封筒(住所記載・切手貼付) |
(6) 空き家住宅等の位置図、平面図(施工箇所、施工内容を記載) |
(7) 改修工事前の現地写真(空き家住宅等の全景・改修予定箇所等) |
(8) 使用する材料や設備機器等が、市が指定する仕様・性能を備えることを証明する資料 |
(9) 市税の滞納がないことの証明書(3ヶ月以内に発行されたもの) |
(10) 他の補助金等を受けている場合(予定含む)は、その申請書及び施工箇所等が分かる資料 |
(11) 他の補助金等を活用する工事を合わせて行う場合、補助対象工事項目ごとに補助金等の種類を明記した内訳書 |
(12) 昭和56年5月31日以前に着工された住宅については耐震性があることが確認できる書類の写し |
お問い合わせはこちら
下関市役所 住宅政策課 083-231-1830
事例3)福井県福井市「空き家リフォーム支援事業」
※福井市コミュニケーションマーク(左:市章入り 右:市章無し) 引用:福井市HP
3つ目は、福井県福井市の「空き家リフォーム支援事業」です。
空き家の循環利活用を促進するため、平成25年度から、市内の空き家のリフォームに対する支援を行っています。
引用元:福井市 | 空き家リフォーム支援事業(平成31年度)
1.1年以上人が住んでいない一戸建て住宅であること
2.福井市内の空き家の所有者・購入者であること
3.所有者、またはその親族が過去に居住していた住宅であること
4.福井市の空き家バンクに登録済み、または今後登録すること
5.対象の工事費が20万円以上であること
6.工事は福井市内の業者に依頼すること
7.工事完了後、10年以上活用する見込みがあること
8.税金の滞納が無いこと
9.国や地方公共団体から他の補助を受けていないこと
10.過去に同じ補助を受けていないこと
前述の2つと比べると、やや厳しい印象ですね。
異なる点としては、一戸建て限定、居住経歴が必要、空き家バンクに登録、他の補助と併用不可、などの条件が挙げられます。
地方活性化の為に多くの自治体が採用している制度で、三者にとって有益性が高い仕組みになっています。
とは言え、買い手が付きやすい代わりに空き家の売価は安めに設定されているので、少し注意が必要です。
1.申請期間を確認!「2013年~予算終了まで」(HPでは予算状況を随時更新)
2.申請場所を確認!「福井市役所5階 建設部 住宅政策課」
※福井市役所 福井市大手3丁目10-1
3.必要書類を用意!※必要書類は以下に記載
必要書類 |
---|
(1) 空き家リフォーム補助金交付申請書(HPからダウンロード可) |
(2) 対象工事の見積書 |
(3) 住宅の案内図 |
(4) 工事の内容が分かる工事前後の図面 |
(5) 工事着工前の写真 |
(6) 空き家リフォーム工事概要書 |
(7) 住宅の所有を証明する書類 |
(8) 所有者または親族が過去に居住していた事が証明出来るもの |
(9) 納税証明書 |
お問い合わせはこちら
福井市役所 建設部 住宅政策課 0776-20-5571
その他地方自治体の補助金制度一覧
さて、3つの事例を詳しく見てきましたが、他にも空き家の補助金制度は全国的に敷かれており、申請条件や補助金額は様々です。
ただし、やはり補助金の根幹にある目的が「地方活性化」なだけに、都市部よりも過疎地域の方が積極的に採用している傾向があります。
まずは、自身の所有する空き家の地方自治体の制度を調べてみましょう。
以下は空き家の補助金制度を採用している地方自治体を、一部まとめた表です。
地域を選択すると対象のHPが読めますので、是非参考にしてみてください。
補助金制度を定めているその他の地方自治体 | ||||
---|---|---|---|---|
恵那市(岐阜県) | 京都市(京都府) | 前橋市(群馬県) | さぬき市(香川県) | 荒川区(東京都) |
静岡市(静岡県) | 奈良市(奈良県) | 神戸市(兵庫県) | 新潟市(新潟県) | 富山市(富山県) |
3 その補助金、「空き家」は対象?紛らわしい制度に注意
空き家のリフォーム以外に、住宅向けのリフォーム補助金制度も存在します。
住宅向けのリフォーム補助金制度は、基本的に空き家は対象外です。
にも関わらず、あたかも空き家が対象のように記載しているメディアも存在します。
紛らわしい情報に惑わされず、本当に空き家が対象かどうか、見極める力をつけていきましょう。
東京都大田区「住宅リフォーム助成事業」
大田区では、自己の居住している住宅のリフォームを区内の中小事業者に発注し、バリアフリー、環境への配慮、防犯・防災対策、住まいの長寿命化のための住宅リフォーム工事及び吹付アスベスト除去工事を行う場合、工事費用の一部を助成しています。
リフォームに対しての補助金なので、一見対象のように思えます。
実際、大田区の補助金制度を「空き家リフォームに関する補助金」として紹介しているメディアもありました。
しかし、注目してほしい単語は「居住」と「住宅」です。
「居住している~」「住宅用~」と記載されている場合、空き家は対象外と考えてください。
そして、空き家に関する補助金の場合は、ちゃんと「空き家」と記載してあります。
また、確信を持てる情報源は対象制度の「申請条件」です。
申請条件をよく読むと、「工事対象住宅に居住している」と書いてあることが分かります。
誰かが居住している時点で、「空き家」ではありませんよね。
また、対象制度の申請条件をよく読む事で確信を持ちましょう。
4 まとめ
空き家のリフォームを行う際は、地方自治体の補助金制度を利用する事で、工事費用を抑えられます。
ただし、地方自治体が補助金を出しているのは、地域を活性化させたいからです。
なので、補助金を受取る場合は、しっかり空き家を活用する意思を持って、結果的に地域に貢献する循環が大切です。
紛らわしい情報もあるので、まずは、対象地域のHPを直接確認する事から始めてみましょう。
リフォームは高額ですが、利用できる制度はしっかり利用して、手頃に空き家を蘇らせたいですね。