ご両親から空き家を相続した方の中には
「もうこちらの利益は0でもいいから手放したい」
「手間やコストをかけずにどこかに寄付できないだろうか」
とお考えの方も多いです。
実際、自治体の中には空き家の寄付制度を設けているところもあり
空き家を引き取ってもらえる場合もあります。
しかし、残念ながら空き家は寄付しようと思っても
100%どこかに引き取ってもらえるとは限りません。
今回は空き家を寄付する際に参考になる制度や寄付先を詳しく紹介していきます。
もし、空き家の寄付が難しい場合におすすめの対策も紹介しているので併せて参考にしてみて下さい。
空き家の主な寄付先
主な寄付先は自治体、近隣の住人、法人、町内会・自治会の4つが挙げられます。
それでは、それぞれについて見ていきましょう。
自治体への寄付
自治体は、最初に検討して欲しい寄付先です。
実際に空き家をどう地域で活用していこうか積極的に対策を立てている自治体も多く、都内でも様々な地域で空き家の寄付制度が活用されています。
例えば東京都世田谷区では
空き家を地域資源と捉え、地域貢献活用を目的とした相談窓口を設けています。
引用:世田谷トラストまちづくり
こちらの物件情報ページには、次のような形で物件が掲載されていました。
引用:世田谷トラストまちづくり
引用:世田谷トラストまちづくり
寄贈された空き家は、保育園や、地域の人が集うコミュニティサロンとして実際に活用されているようです。
また、東京都練馬区でも空き家の活用を支援しています。
NPO法人自然工房めばえさんはこちらのマッチングサービスを利用し、練馬区の空き家を、園芸を通じた人々の交流の場として活用しています。
空き家の改修費は、一部を区の補助金でまかないつつ、スタートさせたようです。
引用:NPO法人自然工房めばえ
しかし、このようにうまく活用につながったケースは稀で、残念ながら基本的には寄付を引き受けられないのが現状です。
自治体への寄付は難しい?
理由は2つあります。
第一に、空き家を所有者から引き取れば、それまで所有者に課税していた固定資産税という収入源が無くなってしまうためです。
第二に、もしも寄付を受け入れた場合は、その家や土地の管理コストがかかってしまうからです。
つまり、空き家寄付前と比べて自治体側は収入が無くなり、支出が増えてしまいます。
いくら空き家の増加が問題視されているからと言って、安請け合いして寄付を受け入れていたら財政を圧迫してしまうため、容易に空き家の寄付を受け入れてもらえません。
極端に老朽化が進んでいたり、地域の住民が利用するには不便な立地だったりして、公共の施設に使う等の有効的な活用手段が見えてこない場合は、特に望みが薄くなります。
自治体への寄付の流れ
自治体への寄付を考えた場合のおおまかな手順は、次の通りです。
2 自治体による土地や空き家の調査
3 審査通過後、必要書類を提出
必要書類は自治体によって多少異なりますが、寄付申し出書、その土地の状況が分かるような写真(自分で撮影)、公図(法務局で取得)、登記簿謄本(法務局で取得)などは最低でも求められます。
個人への寄付
空き家は贈与の形で個人に寄付するのも可能です。
引取主として有力なのは、空き家の隣地の住人です。隣人だと土地をつなげて増築する、家屋自体は解体して駐車場にするなど、有効活用しやすいですよね。
隣りにいつまでも空き家があるよりも、自分たちが譲り受けて活用した方がいいと考えてもらえるかもしれません。
土地を贈与される側に費用が発生
ただし、個人へ不動産の寄付をした場合は、寄付された側に贈与税が課税されてしまいます。
ただし年間110万の基礎控除があるため、年間で貰った財産の合計額から110万を差し引いた額に対して課税されます。
つまり、贈与税は(贈与財産価額-110万円)×税率-控除額で計算できます。
例えば建物の評価額が100万円、土地の評価額が360万円だったとすると
評価額の合計は460万円です。
その場合の贈与税は(460万円ー110万円)×20%ー25万円=45万円
となります。
建物と土地の評価額は毎年役所から送られてくる「納税通知書」の固定資産税評価額から確認ができます。
税率と控除額は以下の国税庁のサイトを参考にしてください。
法人への寄付
自治体への寄付も難しく、近隣の住人への寄付もあまり現実的でない場合は、法人への寄付も視野に入れてみましょう。
法人の場合は、空き家を受け取った後の管理費等を経費で支払えますし、資材置場や違う事業の事務所に使うなど使用用途も広がります。
法人は一般法人(一般的な企業)か、公益法人(公益を目的とする事業を行う法人)かによって税金のかかり方が違ってきます。
結論から言うと、公益法人の方が寄付を受け入れられやすいです。
一般法人と公益法人それぞれに空き家を寄付した場合の税金面について、もう少し詳しく見ていきましょう。
一般法人
一般法人と言われても、懇意にしている会社や、知人の紹介などがなければ、寄付を申し出ることはなかなかしづらいですよね。
その上、一般法人への寄付は、寄付した側にみなし譲渡所得税が発生するケースがあります。
空き家を取得時よりも高い額で売った場合、その差異に対して発生します。
個人が法人に贈与した際に発生するので注意が必要です。
また、寄付を受け入れる法人側にも税金が発生します。
そもそも、土地や家屋などの不動産を取得した場合、個人や法人に関わらず不動産取得税が課せられます。
さらに、法人側は無償でもらった不動産の時価に相当する額を受贈益として処理するため会社の利益が増えたことになります。
その結果、法人税が高くなってしまうのです。
以上の理由から、一般法人への寄付はあまり現実的ではありません。
公益法人
公益法人とは、営利を目的とせず、社会公共の利益を目的として活動している団体を指します。
公益法人に寄付すると、教育や文化、社会福祉に貢献しているとみなされ、営利法人への寄付の際に発生するみなし譲渡所得税が免除されます。
例えば公益社団法人日本ナショナル・トラスト協会では現金と不動産(土地・建物等)の寄付を受け付けています。
※ただし、受け入れには条件があります。
自治会や町内会への寄付
自治体よりも規模は小さいですが、地域に役立ててもらうには、自治会や町内会への寄付もおすすめです。
もしこちらを考えるならば、「認可地縁団体」として認められている団体を選びましょう。
認可地縁団体以外の自治会や町内会だと、その団体が所有する不動産は代表者の個人名義または役員メンバーの共有名義で登記が行われますが、認可地縁団体だと「自治会」としてその土地や建物の所有者になることができます。
後者の方が手続きもスムーズですし、公益法人と同じように税制の優遇があるので、受け入れてもらえる可能性が高まります。
ボロボロの空き家でも受け入れてくれる?
ここまで空き家の主な寄付先について説明してきましたが、寄付先として検討できそうなところはありましたか。
寄付は断念せざるを得ないケースもあります。それでも手放したい方におすすめな方法は「相続放棄」と「解体」です。
相続放棄
空き家を相続する時点で、事前に寄付するのが難しいと分かっているなら、相続放棄をするのも可能です。
遺産相続は、財産だけでなく債務(借金)も相続することになるため、被相続人が借金を抱えて亡くなった場合に使われることが多いです。
相続放棄をする際には、その旨を被相続人の最後の住所を受け持つ仮定裁判所に申述する必要があります。
ちなみに相続するかどうかは相続する時点で判断しなければならないと思われがちですが、原則として相続後3ヵ月以内でしたら手続きは可能です。
したがって、相続したばかりで全ての財産を放棄しても構わないのであれば、相続放棄も選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
しかし、相続放棄したからと言ってすぐに管理責任を免れるわけではなく、新たな所有者が見つかるまで自分で管理しなくてはならないという規定もあります。
それでも早く放棄したい場合は、裁判所に相続財産管理人を選定して貰い、その際に50~100万円程度の予納金を支払う必要があります。
解体
もし寄付したいと考えている空き家が老朽化の進んだ家屋なら、解体して更地にするだけでも土地が売れやすくなります。
空き家を解体するにはどうしても費用がかかってきますが、費用は自治体から助成金がもらえるケースも多いです。
家を解体し、土地だけになれば、駐車場などに利用することもでき、定期的に収入を得ることも可能です。
当協会ではお客様から評価が高く、信頼できる解体業者を最大3社ご紹介しています。どなたでも無料で相見積もりがとれますので、ぜひ解体工事をご検討の際はお気軽にご相談ください。
まとめ
今回は主な寄付先や空き家の活用方法、寄付ができなかった場合の手段について説明しました。
空き家の寄付は必ず受け入れてくれるわけではないのが現状ですが、もしも必要としている人が有効活用してくれたら嬉しいですよね。
まずは自治体や近隣の方に相談するところから始めてみましょう。