空き家の数だけ犯罪は増える!?ミシガン州デトロイトに習う空き家の恐ろしさ

近年増加の一途を辿っている空き家問題。土地税の高騰化、少子高齢化による核家族の減少、その他様々な理由によって全国に人の住んでいない家屋が増えていっています。
「家をなくしてしまうと固定資産税が高くなってしまう」「空き家を放置しているかと言って、特に問題はないのでそのままにしている」など、空き家を所有している方の中には『解体のほうがデメリットが多いので、問題がないのならそのままにしておきたい』と考えている方はいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、実は空き家は様々な問題をはらんでいるのです。
そのひとつは犯罪の増加。空き家の増えた町は軒並み犯罪が増加し、治安がみるみる悪化していくというデータが取れています。

では、なぜ空き家が増えると犯罪の発生も増えてしまうのでしょうか?
今回は、空き家の増加により犯罪都市と呼ばれるまでに至った「デトロイト市」の歴史を振り返りながら、空き家と犯罪の関係性についてご紹介します。

空き家の数と犯罪の件数は比例する

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『空き家が増えると犯罪が増える』と聞くと、「ただ人が住んでいない家が建っているだけで、どうして犯罪に繋がるのか?」と不思議に思われるかもしれません。
しかし、空き家は時として犯罪の温床となってしまうのです。

空き家と犯罪率の関係性

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(引用元:http://tmaita77.blogspot.jp/2012/11/blog-post_28.html

こちらは、東京都23区の空き家率と犯罪発生率をグラフにしたものです。
このグラフから空き家の多い区ほど犯罪の発生率が高い傾向にあることがわかります。
もちろん、空き家が誘発して起こった犯罪ばかりではないとは思いますが、実際に空き家の多い地域は治安が悪くなってしまっているというデータが取れているのです。

なぜ空き家が多い地域は犯罪が増加してしまうかというと、理由はいくつかあります。
空き家はひと目につきにくく、犯罪を隠蔽できるということ。
そして、軽微な犯罪が発覚しにくいがために次々に小さな犯罪が増えていき、やがて大きな犯罪を誘発することになってしまう、ということです。

割れ窓(ブロークンウインドウ)理論

割れ窓理論とは、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した、「小さな犯罪も徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪をも抑止できる」という理論です。
「建物の窓が割られたのを放置していると、この窓について気に留める人は誰もいないという象徴になってしまい、いずれ他の窓もすべて壊されてしまう」という考え方で、これを空き家に当てはめて考えると、例えば空き家にごみが捨てられているのをそのまま放置してしまうと、「ここはごみを捨ててもいい場所なんだ」という印象を与えてしまい、次々に不法投棄がされてしまう、ということになります。不法投棄され続けてゴミ溜めのようになってしまった空き家は、周辺地域の景観をも悪化させ、結果、地域の治安を悪くさせてしまい、やがて大きな犯罪を生むことになってしまいます。

塵も積もれば山となるというのは語弊がありますが、小さな犯罪も増えればやがて大きな事件になってしまう、ということですね。

実際に空き家で起きた事件

空き家を利用して起こった事件や、空き家が誘発した事件はたくさんあります。
前述のとおり、空き家はひと目につきにくいため、犯罪が発生したとしてもすぐに発見されにくく、そのために犯罪者たちの恰好の餌食となってしまいます。

では、実際にどのような事件が空き家によって起こってしまったのでしょうか。

空き家を利用して大麻を大量製造

2016年2月、大阪・富田林市。新興住宅街にある民家でボヤ騒ぎが起こりました。
消防車がかけつけ、中から出てきたのはベトナム人男性。煙の正体は火事ではなく、乾燥大麻の栽培でした。

事件が起きた民家は、長らく空き家だったそうです。
1年半ほど前からベトナム人男性は空き家に出入りするようになりましたが、近隣の方々によれば住んでいる気配はなかったとのこと。
男は空き家に居住していたわけではなく、大麻工場として利用していたのです。

大麻の栽培は、誰にでもできる簡単なものではありながら、大量栽培すると強いにおいを発するため、近隣の方々が気づいて通報するということが多いそうですが、この住宅街には事件の起きた民家のほかにも空き家が多く、大量に栽培しても気づかれる心配がないと考え、ターゲットとなってしまったのかもしれません。

外国人犯罪グループが空き家を詐欺に悪用

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2015年、福岡県福岡市内にて、中国人男性が電磁的記録不正作出や窃盗などの容疑で逮捕される事件がありました。他人のクレジットカードを不正に入手し、そのカードで購入した商品を転売するという、悪質な詐欺事件です。
クレジットカードで購入した商品は、現在は居住者のいない空き家に配達させ、受け取っていたのだそうです。
万が一カードの持ち主や購入者に不信に思われたとしても、空き家ならば本当の住所にはならないため、あくまで住所を受け取る場所として空き家は利用されていました。

判決によれば、中国人男性は複数の共犯者とともに、家電量販店でパソコン・ノートパソコン、デジタルカメラなどを不正購入・転売していたとのことです。

空き家に人骨発見で死体遺棄が発覚

2015年12月、兵庫県神河町の空き家の庭から袋に入った人骨が発見されるという事件がありました。翌年2月、人骨の身元が判明。被害者は、13年前から行方不明になっていたとされる70歳の男性で、彼はこの空き家の所有者でした。

人骨が発見されたとき、空き家には男性の親族が清掃に訪れており、庭にあった2つの袋を発見したのだそうです。
この空き家は30年前まで被害男性を含む親族で住んでいたそうですが、以来ずっと空き家の状態だったそう。死体を遺棄された時期や、犯人についてはわかっていません。

犯罪都市デトロイトの恐ろしさ

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空き家の増加によって治安が悪化し犯罪都市と呼ばれるまでに至った街デトロイト
デトロイトが何故現在のように荒れ果てた状態になってしまったのか?
それでは、詳しく見ていきましょう。

デトロイトとは?

デトロイトとはアメリカのミシガン州にある都市で、現在『惨めな米都市番付』や『危険な米都市ランキング』でワースト1位、『治安の良い米都市ランキング』ではぶっちぎりの最下位にランクされているほど、治安が悪く犯罪の多いとされる地域です。

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1960〜70年代、デトロイトはアメリカの自動車製造の一大中心地でした。
モーターシティとも呼ばれ、全盛期の人口は180万にものぼり、その半数が自動車産業に関わっていました。

しかし1967年に起こったアフリカ系アメリカ人による大規模なデトロイト暴動を皮切りに、段々と街の治安は悪化。自動車工業の不振も加わり、人口は減少していきました。
すると街には空き家や廃墟が増え、今やデトロイト内にある空き家は6万〜7万棟。実に、市内の3割が空き家や廃工場の使用されていない朽ち果てた建物であるとのこと。

犯罪で溢れるデトロイト

現在、デトロイトで起きた殺人事件の70%は未解決
年間の犯罪件数を見ると、総犯罪件数はアメリカ全国平均の約2.5倍、殺人は9倍、強盗は約6倍、障害は5.5倍…。財政と治安の悪化により、ミシガン州の知事も「デトロイト市は崩壊していると言える」と認めてしまうほど。

現在増加した空き家や廃墟は、麻薬の売買を行う場として利用されたり、ドラッグパーティーの会場にされてしまっているそうです。更に、麻薬の取引が強盗や、暴行・殺人事件の引き金となり、さらなる凶悪犯罪につながってしまっています。

デトロイトの崩壊も、割れ窓理論によって始まった

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デトロイトがここまで崩壊してしまったのも、初めは小さな犯罪からでした。

67年に暴動が起こったとはいえその後も街に暮らす人はたくさんおり、経済状況が悪化するまでは、デトロイトもほかの米都市と変わりない街だったのです。
しかし、人口が減少し空き家が増えていくことにより、街にはだんだん軽犯罪が増えていきました。不法投棄や放火、スプレーでのらくがきや窓ガラスを割るなどのいたずら…。そうした小さな犯罪が街の秩序を少しずつ乱していき、発砲や麻薬売買、殺人などの凶悪犯罪を生むようになってしまったのです。

空き家での犯罪を防ぐには

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空き家の存在が犯罪を増やしてしまう。
では、どうすれば空き家による犯罪の誘発を止めることができるのでしょうか?

徹底した管理を行うことが必要

やむを得ず空き家をそのままにしておかなくてはならないとき。その空き家での犯罪を防ぐには、徹底的な管理を行うことが重要になってきます。

・換気や通気を行い、空き家の老朽化を防ぐ
空き家の老朽化は、空気の入れ替えがされないことにより進んでいきます。
通気がされていない家屋の中は湿度が高くなり、木材などが腐ってしまうためです。
老朽化が進んだ建物は景観を悪化させ、外観から「人が住んでいない家」ということが明らかになってしまいますし、何より倒壊や破損の可能性が高くなってしまうため、犯罪の誘発以外の危険性もあります。

・清掃を行い、カビや虫の発生を防ぐ
人が住んでいなくても、家の中は汚くなってしまいます。通水がされていない蛇口から下水がのぼってきたり、ほこりを餌とする虫が大量に発生したりして、衛生面がどんどん悪化してしまいます。
定期的に空き家を訪れて清掃を行うことで、空き家の清潔を守り、「管理されている」という印象をあたえることが出来ます。

・空き家の壊れている箇所を修理する
一部が割れている窓をそのままにしておいたり、壊れている門扉を直さずにいると、空き家への侵入が容易になってしまうために、不法侵入されるが増えてしまいます。
「これくらいのキズならほうっておいても大丈夫だろう」と思っていても、その傷を更に大きくしたら家屋内に入れてしまう、ということもありますし、先述のとおり、壊れているものをそのままにしておいては「この家は壊されても誰も気にしない家」という印象を与えてしまい、軽犯罪が増えていってしまいます。

少しの破損でも、いずれ大きなトラブルに繋がってしまいます。些細なことだと思わずに、その都度修復して、「人が住んでいる家と変わらない家」に保つことが大切です。

・郵便受けのチラシなどを定期的に処分する
不在のあいだ投函されたチラシなど、空き家のポストに入りきらないほど溢れかえってしまっていることはありませんか?ポストに溢れたチラシは、「この家に人が住んでいない」ということの象徴。かと言って、ポストにガムテープなどを貼ったりすることも、居住者がいないということを知らしめることになってしまいます。
ですから、不要な郵便物やチラシなどもそのまま放置せずに定期的に処分することが必要です。「人が住んでいない」とわかる空き家は犯罪の隠蔽に利用されやすいため、トラブルの引き金となり得てしまうのです。

空き家の管理サービスを利用しよう

かと言って、定期的に空き家を訪れる時間を作ることは難しい…。
そんな方は、空き家管理サービスを利用するのがおすすめです。

空き家管理サービスは月額数千円から依頼でき、定期的な空き家のメンテナンス・清掃等を行ってもらえます。「空き家管理サービス」で検索すれば、いくつかの業者のサイトが表示されますので、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。

空き家のままにせず活用する

空き家が犯罪者たちに狙われてしまう理由のひとつは「ひと目につかない」こと。
「この家は空き家だから、誰も住んでいないんだ」と思われてしまうことで、侵入されてしまたり、犯罪に利用されてしまうのです。

ですから、一番安心なのは空き家を活用すること
賃貸住宅として貸し出したり、売却したり、店舗として利用したり…。空き家だった建物を人が出入りする場所に変えることで、犯罪は格段に減ります。

空き家を貸し出したい、売却したいとお考えの方は、各地域の空き家バンクを利用することをおすすめします。
空き家バンクは、空き家となっている物件を利用したい方と、空き家を貸し出したい・売却したいという方を結び合わせるサービスで、ご自身で空き家を利用したい方を探すよりもずっと簡単に見付けることができます。

空き家を放置せずに解体する

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空き家自体を解体してなくしてしまえば、犯罪やその他の空き家のリスクがなくなることは明らかですね。

空き家を解体したあとは、住宅用地の特例が適用されなくなるために固定資産税額が高くなってしまいますが、もとより地域の自治体に特定空き家として認定されてしまえば空き家が建っている状態であっても固定資産税は高くなってしまいますし、解体したあとの活用法によってはそれほど高くならないということもあります。
更地のまま放置してしまえば土地の資産価値が上がるため固定資産税は高くなってしまいまsが、例えばその土地を農地に転用したり、駐車場として利用したり、新しく家屋を建てたりすることで、固定資産税の額は変化します。
空き家を解体する際は、次の活用法を考えたうえで行うのがよいかもしれません。

まとめ

今回は、空き家の増加と共に治安が悪化した都市デトロイトの歴史を参考に、空き家と犯罪の関係性についてご紹介致しました。

人がいない・何か起こっても発見されにくい・侵入が容易な家屋は、犯罪者たちのターゲットになりやすいため、空き家を所有している方は、「人が住んでいるかもしれない」と思われるような空き家の管理を目指すことが安心です。
もちろん、使用されていない空き家は犯罪のほかにも様々な問題を引き起こす可能性がありますから、そのまま放置しておくことはよくありません。
空き家をそのままにしている人は、空き家をそのままにしておくメリットとデメリットについて、もう一度深く考えてみると良いでしょう。

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